─邂逅─


 不思議と疑いはなかった。



 こうげいだ。



 そうだ。〝虹蜺〟というのが、完全な存在を指すのなら、だ。



 御伽噺に出てくるような、伝え聞くような、姿形はしていない。

 翼は生えていないし、尻尾も無い。鱗が全身を覆っていたりもしない。


 星彩をたたえた闇色の髪に、つきしろはだ、こちらを見る二つのまなこゆうくれないに縁取られた、宵闇のあおいろ。


 しわの一つも無いつるりとした口唇が開かれる。

 ───死を確信したのは、こうくうの中にほのおが踊るのを見たから。




こうを見ているのか」しかし、唇は言葉を紡いだ。






「そこの。公を見ているか」






 再びの問い。死の代わりに来たのは肩透かしのような安堵で、その問い掛けに応えるまで、少しばかり時間が要った。



「こ───こう……げい───?」



「なんだ? それは公の事か?」



 舌足らずな問い掛けに返ってきたのは、答えではなくかよった問いだった。



「公の事が知りたくば見出すのだ」


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釼下に息吹く 南 ヱ斗 @silver-lining

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