第8話 大事な忘れ物 〜 恋と友情 〜

学校を休んで、3日。


お姉ちゃんや孝夜さんの協力のもと、悠志と顔を合わせずに過ごしていた。


そして、1週間後の休日、私は1人散歩に出た。


ほとんど閉じこもったままで、久しぶりの1人のちょっと遠目の外出で足元はフラついているような感覚だ。


それに、日差しも眩しい。


精神的には落ち着いてはいたんだけど……



私は海に足を運ぶ。


波の音だけが私の耳に聴こえ、潮の香りを感じる中、ぼんやりと海を眺める。


時間は刻一刻と過ぎていき既に夕方。



「海って…どうして時間が経つの気にしないのかな?ぼんやりするにはうってつけの場所だよね?」



空と海の間にはオレンジ色に染まった夕陽か綺麗に空を茜色に染めていた。


すると、海に人影。


サーフィンをしている姿。



「…いつからだろう…?」



私は歩み寄る。




ドキーーン



「…えっ…?…嘘……」



そこには見覚えある人物の姿があった。

砂浜にあがってくる人影。



「…悠…志…?」



私は自分に聞こえる位の声で言った。


すると、振り向く。




「…美津歩…?えっ!?なんでいるん?つーか何してんねん!学校サボって散歩ですか?」


「…いや…えっと…か、帰る!」



「………………」



くるりと背を向け帰ろうとするも、足が進もうとしない。




まさかの偶然の出来事に


このまま帰って良いものだろうか?


私は自問自答した。



「帰らへんの?」

「…か、帰るよ!か、帰るけど…」

「何やねん!」

「…ごめん…」

「…えっ?」


「帰りたいと思うけど、もう少しいる」

「そうか」

「悠志は、帰って良いよ」


「言われんでも帰るわ!あっ!春耶ちゃん心配しとったで」


「そうか…そうだよね…春耶は元気してる?」


「ああ」


「良かった…春耶の事…宜しくね」

「別れたで」


「えっ?…別れ…た…?嘘…!だって…すっごい嬉しそうに春耶…」


「せやけど向こうから別れようって言われてん」

「春耶…が?」

「せや」

「…どうして…だろう…?」

「色々とな」

「…そっか…」


「ほな、先に帰るで」

「うん…」



悠志は帰って行く。


しばらく背中を見つめるも、すぐに海を眺める。


私は、砂浜にしゃがみ込むと………




【…あなたが……好きです…】



砂浜に書いてみた。



「…なんて…言えたら良いのに…」




私は立ち上がり、砂浜を歩こうとした、その時―――





グイッと引き止められた。



《えっ?》




振り返った瞬間――――



私の唇が塞がれた。



「………!!!」



「大事な忘れ物してん…」

「えっ…?キスする事が…?」

「…お前が…好きや!」





ドキーーン



「えっ…?悠…志…」


「お前の気持ちは…知らへんけど満更じゃない気もするし、今迄の状況からいくと…そうなんかな…?って…」



「…そんなの…ち、違うよ!悠志の思い過ごしだよ!」


「そうなんや。じゃあ、そういう事にしといたるわ!帰ろう!」


「帰れ、帰れ!」



私は追い払うようにする中、悠志は帰って行き始める。



「渡世悠志っ!」

「何やねん!」


「私に意地悪な事言ったりして女として見てなかったじゃんかっ!それなのに告白するなんてありえないんだけど!」


「それは、お前かて同じやろ!?」


「…だけど…私は…あんたの事…好きだよ…」




「………………」




「私…悠志が…好き……だから…!ずっと!凄く辛かったよっ!!」




歩み寄ると私を抱きしめる悠志。




「…………………」



「…すぐに気付いてやれんくてごめんな…美津歩…」




私は首を左右に振った。




「俺達は近すぎて気付くの遅かったんや……」



抱きしめた体を離すと私達はもう一度キスをした。



そして私達は正式に付き合う事になったんだけど……







次の日――――





私は渋々、学校に悠志と登校する事にした。


春耶と合わせづらい顔と重い足取りで行く。


私は教室の前に来て私は足を止めた。



「おい、何してん……」と、悠志。



私は首を左右にふる。



「ずっとそこにおんのか?」

「…だって…」



すると、そこへ――――




「美津歩、何してんの?早く入りなよ」




ドキッ

背後からの声に胸が大きく跳ねる。




「…春…耶…」


「おはよう!もう1週間も恋に悩んで何ズル休みしてんの?」


「…私…」




下にうつ向く。



トン

両肩に触れ、すぐに離す。




「24時間、一緒にいたんじゃ気付かないのも当たり前でしょう?確かに最初は私も戸惑ったし今は複雑な心境だけど、美津歩の事、好きだし、ずっと友達でいたいから」




「………………」




「美津歩は、何も悪くない!それに、今は悠志君とは友達として仲良く出来てるから、それはそれで良いし。でも美津歩は、私にも、悠志君にも自分の気持ち言えないまま過ごしてて、もっと辛かっただろうな~って思うから」



「春耶…ごめんね…」


「やだ!謝るのは私だよ。気付いてやれなくてごめんね。自分ばっか幸せになって自慢話したみたいに見せ付けてたんだよ」




私は首を左右に振る中、涙がこぼれる。



「ちょ、ちょっと…美津歩?やだ泣かないの!私まで泣きたくなるじゃん!」




春耶は抱きしめながら、頭を撫でる。



「これからも宜しくね!美津歩。ずっと親友だからね」

「…う…ん…ありがとう…ごめんね…春耶…」

「良いんだよ」


「お前ら、そういう趣味やったんか?」


「…バカ…茶化さないでよ……」と、私。



悠志は私達2人を抱きしめるようにする。




「悪かったな。俺のせいで、こんなんなってもうて…」



「悠志ーー!何、女の子泣かせてんだよーー」



クラスの男子が茶化す。




「う、うるさいわ!し、仕方ないやろ!!」



「恋って難しいねーー。悠志くーーん」


「モテる男は辛いよなーー悠志ーー」



男女問わず仲良い悠志。


友達も多い悠志は、1日中、茶化された。






恋も友情も大切だけど


誰かが犠牲になるのは


人生にはつきものだね


親友や友達と同じ相手(ひと)


好きになる事


一歩引いて譲るか


闘ってみるか





好きって気持ちは


止められないから


時間しか解決出来ない


様々な人間模様



色々な人が


人生という運命を歩んでいるのだから


与えられた試練


そして……運命……


後悔しない人生を歩む事が


大切なような気がする








〜 THE END 〜

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同居、ふたりの恋心 ハル @haru4649

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