第7話 自分の気持ち、親友の恋

それから数ヶ月が過ぎ――――



「ねえ、美津歩。美津歩は、悠志君に特別な感情とかないわけ?」



春耶が、尋ねてきた。




「ない!」

「即答っ!?」 

「うん」

「…そう…」

「どうして?」


「いや…」


「何?もしかして春耶、気になるの?協力してあげようか?」


「えっ?あ、ううん。大丈夫」

「そう?」

「うん」



その後、春耶が悠志に告白した事が分かり、友達からゆっくりで良いならという返事をもらったみたいで…



そんな私の心に変化がおき始めた。


平気!


大丈夫!



そう思っていた私の心が


二人の姿を見ては


複雑な心境となっていく。




普通に過ごしていた毎日だけど


他人のものになった時


好きって気持ちに気付いた瞬間。



私は自分の気持ちを抑えながらも


過ごしていた





「美津歩、私、悠志君と正式に付き合う事になったよ」




ズキン…




「えっ?あ、そうなんだ!良かったね!春耶も春だね。いいな〜仲良くね」


「うんっ!ありがとう!」




《すごく嬉しそう…そうだよね?》

《好きな人と両思いになって付き合えるんだもん》

《嬉しいに決まってんじゃん…》





でも……



       私は……


 

  心から……


    

             喜べなかった………








ある日の夜の事だった。



「最近の美津歩ちゃん…どうかしたのかな?」



孝夜さんが、お姉ちゃんに心配するかのように私の事を尋ねた。




「そうね…何かあったのかもね…ちょっと聞いてみるわね」


「ああ」





数日後、学校から帰った時の事――――





「美津歩、おかえり。ねえ、美津歩」

「ん?何?」

「最近…どうかした?」

「えっ?」

「元気ないみたいだし…孝夜も心配してたから」


「…あー、そう見えた?大丈夫だよ!」

「そう?」

「うん。だから心配しないで」

「…そう…?」

「うん」




私は部屋に行く。




ドアに寄り掛かり、ゆっくりと体を崩していく。




「…全然…大丈夫じゃないくせに…何…意地張ってんだろう…」




私は立ち上がり制服のまま横になっていた。


そして、ゴロゴロしながら、いつの間にか眠りに入っていた。





その日の夜、ふと私は目を覚ます。





「…あ、…そうか…私…帰って…そのまま……」




時間は夜の12時を回っていた。



私は取り敢えずシャワーを浴びようと、お風呂場へ行く。



脱衣場で悠志と鉢合う。




ドキッ





「何や、お前。まだ、制服やったんか?」

「…うん…まあ…帰って、そのまま眠ってたから」

「まあ…夕飯呼びに来た時、返事なかったしな」

「…そうか…」

「ほな、おやすみ」

「…うん…おやすみ…」



悠志は出て行く。



「………………」




後を追えば


すぐに追い付くのに……



『あなたが…好き…』



あなたに


そう言えたらいいのに………





次の日の朝――――




「美津歩ーーー、早う起きな遅刻するでーー」




ドア越しから叫ぶ悠志。





「…ごめん…今日は…休む…体調悪い……」

「裸で寝てもうたか?」

「ち、違うし!」

「大丈夫か?」

「うん…大丈夫…行ってらっしゃい」

「おう!お大事にな」

「…うん…ありがとう…」





私は涙をこらえつつ、

悠志が、去って行った後、涙がこぼれ落ちる。




「………………」






どれだけ涙を流しても


何も変わらない


分かっていても


この想いは


止められない……


泣かずにいられない……



今は ただただ辛いだけ……


一層の事……


死んだ方が楽なのかもしれない……





数時間後――――





誰かが部屋のドアをノックする。




「美津歩…大丈夫?薬は?何か欲しい物はない?」



「………………」



ドアを開ける。



「あら、起きて大丈夫…」



私はお姉ちゃんに抱きついた。



「……美津歩…?」



私は涙がこぼれる。



「お姉ちゃん…私…悠志が…好き…なんだ…」


「うん…」


「…でも……悠志は…今…親友と付き合ってて…」


「うん…」


「…私…どうすれば良いか分かんないよ……今…凄く…辛いよ…」


「美津歩……そうか…様子がおかしかったのは、それが原因か……」



私はお姉ちゃんを部屋に入れ、話をした。


姉の協力を得て、学校をしばらく休む事にした。


向き合って頑張って行くべきなんだろうけど、現段階では私は耐えれないのが本音だ。


逃げている事になるかもしれない。


でも、無理したくはないから








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