第10話 ノーチェの目覚め
〖ノーチェが目を覚ました〗
その知らせを聞いた僕は、
スライグレンダの案内でノーチェのいる
クリサリスのメンテナンスエリアに向かう。
ここには初めて入ったけど、固定タイプの医療ポッドのようなカプセルが
30程並んだ部屋だった。
一番手前のポッドだけ、中に居るノーチェが白い光に照らされている。
僕の目の前で、ポッドのシールドが開いた
黒い髪の少女、頭の上の黒くて長い耳が生え、
肘から先と膝から下に黒い体毛に覆われている。
リンカーで見たままの黒い兎を模したような少女、ノーチェの姿があった。
ノーチェが目を覚ます・・・青いきれいな瞳でこちらを見ている。
「おはよう、ノーチェ やっと会えたね」
顔以外をあまり見ない様に意識して、やさしく声をかける
「・・・・・・パパ」
「はい?」
ノーチェが僕に飛びついてきた。
僕の頭を掻き抱くようにノーチェが胸を僕の顔に押し付け、
両足が僕の胴体を締め付ける。
色んな柔らかい所が僕に当たって、甘い匂いに包まれ
僕の精神状態が非常に危険な方向に向かいそうになる。
こういう時には・・・・
ルジェ、ノーチェに服を着せたいんだけど、何か方法は無いかな?
《お任せください》
僕に抱き着いていたノーチェの服が女官服に変わった。
《ノーチェはクリサリスが融合していますので、マスターの指示であれば
他のクリサリスの様に着せたり、脱がせたり出来ます》
「ルジェ、僕が脱がせる事は絶対に無いから。着せる時はお願いするよ」
女官姿のノーチェを後ろから抱き着かせたまま、みんなの所に戻る。
何か諦めた様な顔のアリシアとミーシアさんの表情がとても印象的だった。
「えっと、ノーチェが目を覚ました」
ノーチェを紹介するが・・・・・
「パパ・・・・」
僕の背中に顔を伏せてしまい、僕の頭の横に黒い耳だけが飛び出している。
〖まだ、自分の名前とアースライがマスターである事以外は
認識出来ていないと思う。
このノーチェという名前もライビ族の少女の名前なのか
それともクリサリスの名前なのか?
まあ、気長に相手をしてやることだな〗
「わかった、やってみるよ」
惑星アクール 第1海底都市マグール 中央管理センター
観光クルーザー1号機が無事アクールに到着した。
マグカ・ギョリョウ代表と来月到着予定の花嫁ツアーに合わせての、
マーメイドツアーの打ち合わせをしている。
実は、あのデイ・バースト騒ぎの時には、
花嫁ツアー自体を中止せざるを得なかったため、
マグカさんも特に力が入っている。
惑星アクール往復が終われば、次は惑星ブレーナムだ、
当然の様にブレーナムのギフカス・ハント代表も席に付いていた。
「クルーザーの乗客定員は100名、つまり男性50人と女性50人だ、
今回、女性1000人に参加してもらうとすると、
単純に20回のツアー開催が必要になる」
「わかりました、ただ、このイベントは花嫁が来てすぐでは意味が無いです。
少し時間をかけて2人の気持ちが盛り上がったタイミングで、
最後の一手としてのマーメイドツアーに持ってくようにしたいですね」
「なるほど、ただ、開催するなら出来れば快晴の夜、
そして惑星光に照らされてのシチュエーションは外せない」
「そうなると、同じ日に複数回の開催が必要になりますね・・・
クルーザーは1隻です。
1日に何回出せますか?」
「あまり深夜にはしたくない、1日3回が限度かな?」
「
「それよりアクリメラさん達の歌の時間は大丈夫か?
1日3ステージだろ?」
「問題ありません、向こうも乗り気です。
歌唱希望者が殺到していますから・・・
オーディションも開催しましたが、3ステージなら
1ステージごとに別のグループでも歌わせる事ができます」
現在ツアーの打ち合わせをしている。
それまで、何故か黙って話を聞いていたギフカス・ハント代表が手を上げた。
「どうした? ギフカス。手なんざ上げなくても勝手に話しゃいいだろ?」
「いや、マグカ。おまえがアースライさんの背中にしがみついている
黒い兎の女の子について、何も言わないのでな。
もしかして俺の見てる幻覚じゃ無いかと思ってな」
お~い、ギフカスさ~ん。
そう、僕はノーチェを背中に乗せたまま打ち合わせをしているのだが・・・
「何を言ってやがる。そんなの、このアースライさんを相手にしてたら
良くある事じゃねえか。
この間だって、災害救援義援金にトンデモナイ金額が振り込まれたり・・・
幻覚だよ幻覚、イチイチ気にしてどうする、ギフカスは意外と神経質だな」
乾いた笑い声を挙げるマグカさん、
気を遣って話題に上げない様にしてくれてたんじゃ無かったんだ。
「え~っと、この
ライビ族という種族の生き残りになります」
2人共、目を見開いてこっちを凝視している・・・・
「いや、2人共、このあいだの臨時代表会議で説明しましたよね?
僕が1人保護しているって」
2人共、意外そうな顔で・・・
「いや、それは聞いてたましたけど、普通はどこか安全な所に隠すでしょ?
まさか連れて歩くとは・・・」
「それに、まだ意識が戻って無いって言ってたじゃねえか?」
「目は覚ましたけど、自我というか、色々安定してなくて。
それが落ち着くまで僕から離さない方が良いらしいんです」
「・・・よく、わからないんだが?」
「大丈夫です、僕もよく理解できてませんから。落ち着くまで離れない方が良いと
理解できていれば十分です。さあ、打ち合わせを進めましょう」
ギフカスさんが、右手で目を覆っている
「わかった、それなら俺も開き直って提案させてもらう。
アースライさん、日程は限られるが、このツアー、
昼の特別ステージを組まないか?」
「ギフカス、さすがに何を突拍子も無い事を言い出すんだ?
昼に、こんなツアーやってもロマンの欠片もないだろうが?」
すまないが、これはマグカさんに同感だ、どうしたんだろう?
「普通の昼じゃない、恒星光を惑星ブレーナムが遮る
イベントをするんだ」
「
「ギフカスさん、
「え?」
「ほら・・マグカ、
ウチの様な2連星でもなければ頻繁には起きない」
「そうなのか?」
「アースライさん、
一直線に並んだ時に起きる
「天文現象ですか?」
「ああ、ブレーナムが恒星の光を遮って、その時間だけアクールは闇に包まれる」
「そんな事が日常で起きるんですか?」
ウチの故郷で、そんな事になったら老人達はショックで倒れるぞ。
「おそらく、過去のデイ・バーストはアクールの
当時のブレーナムの生物は生き残ったんだと思う。
そういう意味では命を繋いでくれた現象なんだ」
「そう言われると、有難みもありますね」
過去のデイ・バーストでブレーナムの陸地被害が4割で済んだのは
「そのせいか、この惑星では空に見える惑星を女神に見立てて
短時間、闇に包まれる
「女神のひと時の祝福」
「どうだろう、青い海の上で起きる、女神のひと時の祝福
その祝福の中で、マーメイド達の祝福の歌に包まれ
二つの祝福に包まれながら愛を誓う・・・・」
「ギフカスさん」
「ギフカス」
「本当はブレーナムの時にやりたかったが。デイ・バーストの時から
この
こうして、スペシャル・イベントのマーメイド
「まあ、ブレーナムもアクールも、互いの惑星を女神に例えているという
恥ずかしい事実には、どちらも口にしないという不文律があるんだけどな」
「マグカ、それ絶対ヨソで言うなよ。花嫁が来なくなるぞ」
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