閑話 石の記憶

【エーディク】


コアに情報の入力を確認、周囲の環境情報入力を確認、音響情報の入力を確認


もしかして、偽体に接続されているのか?


マブタを開けてみる。


〖無事、偽体に接続出来たようだな、ストレア〗


この偽体にアクセスして情報を確認した、汎用だが完璧な偽体だ。


視覚情報を確認、周囲に居るのは艦船の子機か?


発声器官に接続・・・

『ここは、どこだ? 私一人なのか?』


〖ここは中継ステーション スライグレンダ、つまり私の中だ。

 ここにあった偽体が1体だけだったのでね、君に使用した。

 他の偽体が見つからないので、他のストレアの復活はまだ先だな〗


『こんな、状態の良い偽体が、まだ残っている事自体が驚きだ』


〖なにか勘違いしている様だが、ここには今、がいるぞ〗


≪呼んだか、スライグレンダ?≫


〖ほら来た〗






スライグレンダとメルクから情報を受け取る。


しかし、ここは第7中継ステーションか


あのアブソーダーの名を冠するスライグレンダとメルク・・・ 


まるで、あの頃のようだな。





≪それで今、私はスライグレンダの工房を修復しているんだ。

 それが使えるようになったら、他の4人の偽体を作ればいい

 その後にでも、カナンテッダの命の水アキュアムの生成装置の

 製作を頼みたい≫


『カナンテッダか、そうか私はカナンテッダに居たんだったな。

 ・・・アクリメラ種族はどうしている?』


≪先日、また恒星のデイ・バーストがあったが無事だ。あの箱を預かって来た≫


『そうか、機会が有ればアクリメラを見たいものだ』


≪すまないが、それは少し待ってもらう事になる。

 何しろここには、動かせる宇宙船が1機も無い≫


『1機も無いのか?』


≪唯一動かせる1機はマスターを乗せて、今の文明圏の代表の所に出頭中だ。

 他の宇宙船はデイバーストの影響で全て修復中なんだ≫


『それは、不便だな』


≪汎用の恒星炉1基の修復も完了している。そのチャージが完了すれば

 転移装置の修復も終わっているので、君がカナンテッダを使えばいい。

 あの宇宙船も君達ストレアなら問題なく使えるだろう≫


『私が・・・カナンテッダをか?』


マセーブクやアクリメラ達と一緒に騒いだ、あの記憶を思い出した。


≪ああ、カナンテッダに乗れるのはストレアかアクリメラくらいだからな。

 なんなら、あの三角の海に居る300人のアクリメラから連れて行ってもいい≫


『アクリメラが・・・・300人もいるのか?』


〖そういえば、メルクのマスターが、あそこのアクリメラ達と観光イベントを

 企画しておったから、アクリメラを根こそぎ連れて行くのはやめてやれよ〗


 アクリメラ達と観光イベントとは、あの騒がしいアクリメラ達にはピッタリだ

 平和な時代なのだろうな・・・


『わかった。それに私1人でアクリメラ達に会ったら、他の4人に恨まれそうだ。

 工房の修復が終わったら教えてくれ、すぐに偽体の作成に入る』







メルクが工房を修復してから、およそ1ヶ月、エーディクは、

たまにフードクリエイターに出てくる以外は、ずっと工房に籠っていた。


そして・・・・・






〖なあ、エーディク。

 確かに急いだのかもしれないが、

 お前の創った、その偽体ぎたい

 いくらなんでもざつな作りじゃ無いか?〗


4体の偽体が【工房】に並ぶ・・・・・


その姿は骨格フレームとコアが剥き出しの頭部ユニットに

の視覚センサーと発声ユニットが取り付けられている。

2本の腕だけは指先まで非常に凝った構造になっているが、

足に至っては、樹脂製のキャタピラが付いている。


『スライグレンダ、誤解だ、別に雑に造った訳ではない。

 こいつらみんな、自分の形状は自分で造らないと気が済まないんだ。

 私が手を加えたらねて、口も聞いてくれなくなる』


〖なるほど、それで腕だけが精巧に出来ているのか?〗


『ああ、これでも後で自分好みにカスタムするのだろうがね。

 アーバス ブレンド チーナ ダンガ そろそろ起きろ。

 が使えるぞ』


『『『『エーディク、工房はどこ』だ!!』』』


子供サイズの金属骨格4体が足元の樹脂キャタピラを回転させながら

さながらゾンビのように動き出した。



『スゲー、夢にまで見た工房だ~』

『エーディク、加工機器のリストはどこだ?』

『それよりも原材料リストよ、エーディク最優先で、こっちに送って』

『それよりもライブラリだ、新しい技術資料は無いのか?』





〖エーディク・・・あいつら大丈夫か?〗


『どりあえず、自分の身体が仕上がる頃には落ち着くだろう。

 それまでは、ずっとあの調子だと思うぞ』


〖そういえば、エーディク。ストレアの偽体、

 以前は成人人型タイプだった記憶があるんだが

 いつからか、全て小人型に変わったよな。

 いきなりみんな子供になって驚いたんだが

 どうして、あんな事になったんだ?〗


『・・・いや、単に技術的に行く所まで行ったので

 偽体が軽量小型に移行しただけだが?』


〖それが、理由なのか?〗


『他に理由は無いぞ』


〖・・・そうなのか? それで、彼らの身体が仕上がるまで、

 どれくらいかかりそうだ?〗


『さあ・・・前は2000時間くらいだったかな?』




どうやら、偽体の方は完成したようだ。


私、エーディクは緑の髪の少年の姿


アーバスは赤い髪を逆立てている

こいつは、スライグレンダのドックにいるのが、

あのクリムティアだと知ってから様子がオカシイ


ブレンドは濃い茶色の長い髪を後ろで束ねている

こいつはスライグレンダとメルクから、現在位置情報を確認して

何か探している様だ。


チーナは黄色い長い髪をツインテールにしている

原材料の採取を行う為に採取ユニットの設計に移ったようだ。


ダンガは黒い髪を超古代文明種族の髪型であるリーゼントにしている。

今もライブラリにアクセスして新しい技術情報収集に余念が無い。


『4人共、自分の偽体は完成したようだな。

 私もその間に命の水アキュアムの生成装置作成と

 カナンテッダへの取付を完了させている。

 それでは、みんなで、あのアクリメラ達を見に行こうか』


『『『『エーディク、それを先に言えよ!!』』』』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る