第8話 最後の一手

『フレア活動は継続発生中。マスター、直ちにアウタセルを装着して

 機動衛星ここから脱出してください』


機動衛星イシュメラーナの脱出は可能なの?」


『可能ですが私では恒星の重力圏を脱出するのに時間がかかります。

 マスターは先に脱出してください』


だめだ、、打てる手段はもう残ってない・・・・


『ルジェ早く、アウタセルを装着して脱出、マスターをメルクの所に連れて行って』


『イシュメラーナ、了解した』


ルジェを纏った僕の身体が勝手に動き始める


「ちょっと待って・・・・」


何か無いか考えろ・・・・・


その時、この場所で聞くはずの無い声が、僕の耳に届いた。






『アースライ、ココは引き受けるから下がって』





「アリシア、シルキスタ・・・・なにをしてるの?」





そこには、惑星ブレーナム第5惑星の環境モニターをしているはずの

白銀の中型戦闘艦シルキスタの姿があった。





「アリシア、無茶だ!! すぐに帰って!!」


『アースライ、シルキスタのエリアガンでもの効果はあるんでしょ?』


「それは、そうだけど。ちゃんと言ったはずだよ、DD砲ほどの効果は無いし、

 なによりシルキスタを中心に展開するエリアガンだと、

 クリムティアより前に出ないといけない、危険すぎる」


『危険なのは今更でしょ、それに効果の薄い分はミーシアに

 カバーして貰ってるから大丈夫』


「ミーシア?」


『アースライさん、こちらブランシェ。

 先ほどネウ・ホパリアから届いた緊急展開用遮蔽シールドの

 設置が完了しました。

 これにエリアガンの展開に合わせれば、あと数時間は保つはずです。

 お願いですからクリムティアに移動してください』


 イシュメラーナ星系で使ってた遮蔽シールドか


「わかった・・・ルジェいくよ」


僕はアウタセルに入ってイシュメラーナを脱出した。






そして、デイ・バースト発生から60時間が経過した・・・・・


『シルキスタ、エリアガンの発射頻度が40%低下、

 装甲の融解が始まったようです』


≪クリムティア、DD砲完全停止、修復を右舷に集中しているが、 

 再発射に40分必要だ≫


『遮蔽シールドの崩壊が始まりました。

 崩壊を始めたシールドの重力圏外へのパージを開始します』


「アリシア、そこは危ない、もう下がって」


『もう少しだけ、まだ大丈夫だから・・・・』


『こちら、クリムティア。恒星表面の電磁パルスが異常発生しているのを確認した

 今までで一番でかいフレアがくるぞ、全員退避しろ』


「アリシア、そこから逃げて!!!」












〖メルクのマスター、待たせたな〗


が間に合った。


「みんな、全力でスライグレンダの影に入って。

 スラングレンダお願い」


〖おお、防御システムの拡大設置開始〗


フレアが防御システムを多層展開した中継ステーションスライグレンダに受け止められた。


「スライグレンダ、助かった。それと8万光年の旅お疲れ様」


〖恒星が暴れ終わった後の到着になるかとヒヤヒヤしたが

 どうやら間に合ったようだな〗


「もう少し遅かったら、アリシアと二人、消し炭になるところだった」


『アースライ、消し炭の話はやめて』


「ミーシアさん、ギフカスさんとマグカさんに通信をお願い。

 全員無事、もうちょっとだけ待って」







そして、デイ・バースト発生から70時間後


『恒星表面に電磁パルス確認出来ず、

 デイ・ブラストは収束したと思われる・・・か』


こうしてアブリム星系のデイバーストは、ひとまず終焉おわりをむかえた。






クリムティアとシルキスタは半壊といった状態でスライグレンダのドックに収容され

一緒に星系の第3惑星軌道付近まで移動してきた。


イシュメラーナも酷い状態だが先に同様に第3惑星軌道に移動している


今、僕とアリシアはスライグレンダの第1飲食フロアーに居る


クリムティア子機とシルキスタ子機も一緒だ


「それで、ギフカスさん、マグカさん、惑星そっちの状況はどうなの?」


モニターの向こうで、二人が苦笑いをしている。


『アクールの方は人的被害はもちろん無い、まだ調査中だが養殖系の施設も

ある程度までは温度変化に対応出来る様に設定してあったから大丈夫なはずだ』


『ブレーナムの方も人的被害は無い、こちらも大丈夫なはずだ。

まあ、自然界への影響がどの程度なのか調査の結果待ちだ・・・それから』


ギフカスさんが微妙な顔をしている


『アースライ・グランクラフト氏に対して連邦代表議会からのだ』


「・・・・・またですか?」


『アースライさん、出頭命令じゃなく出頭要請だ。連邦議会基本文書に無いから

 アースライさんの為に作ったんじゃないかな?』


「内容は?」


『想像通りだよ、赤い超巨大艦の説明と、

 あの大きすぎて説明の難しい物体の説明を求めるだってさ』


「はぁ~」


『ため息を付きたいのはこっちだよ、

 あの赤い巨大艦の事をいつ聞こうかと思ってたら。

 あの機動衛星よりデカイのが出てきたんだからな』


「ミーシアさん聞こえますか?」


『どうしました? アースライさん』


「連邦代表議会から呼び出しなんですが、今、動かせるのブランシェだけなんで

そっちに向かいますね」


『はい、お待ちしてます』


「マグカさん、ギフカスさん、すみませんが修復が済むまで、

 この機動衛星と中継ステーション、ここに置かせてもらいます」


『ああ、わかった』

『承知した』


「そういえば、今回の災害ですが、連邦での義援金募集はするんですか?」


『まあ、これから被害報告が上がってくるだろうから、まとめて出すつもりだよ』


「それなら、後で口座教えてください。僕からも入れておきますので」


『そうだな、名簿にアースライさんの名前があったら義援金が増えるかもしれない

 名前だけでも頼むか』


「いや、ちゃんとお金も入れますよ。じゃあ、これからブランシェに向かいます」


『ああ、改めて礼をするが本当にたすかった』

『ありがとう、アースライさん』






【マグカ・ギョリョウ】


『マグカ、起きろ・・・大変だ』


「うるさいギフカス、事後処理で寝て無いんだ。

 それに、なにがうれしくてお前の声で起きなきゃいけなんだ」


 実質3日間、経済活動が海底都市だけになったんだ、当然色々な問題は出る。

 損害の補償や追加経費、それに対して特別予算を組んで対応するのに

 どこから、その金を持って来るか?


『目を覚ませ、アースライさんが


一発で目が覚めた


「すまん、目が覚めた。で? 何を見つけた? 今度は何の種族だ? 衛星か?」


『すぐに義援金の口座を確認しろ。今回の災害救援義援金だ』


「ああ、そういえば・・・アースライさんの名前で入れてくれるって言ってたな」






アブリム星系 惑星アクール 災害救援義援金 入金者名簿


アースライ・グランクラフト  Dr 150,000,000ー






「なあ、寝ぼけてるのかな? アースライさんの名前で1億5000万ダルス

 入金されているみたいなんだが?」


『間違いじゃない、惑星ブレーナムの義援金にも、同額が入金されてた』


「いいのか? こんなに・・・あの人、騎士辞めて無職だろ?」


『そんな事より、まずいだろ。どう見ても政府が出す予算より多いぞ』


「まあ、確かにウチの特別予算より多いな」 


『前にも言っただろ、資本家があの人の行動を見てるって。

 この義援金の注目度が跳ね上がった』


「それは・・・良い事じゃねえの?」


『ウチは義援金を**入れたから

 ホテルの誘致を優先させろとか?』


「おい! まずいぞ」


『ウチの関連企業で義援金***入れたから、

 マーメイド観光に1枚噛ませろとか?』


「無茶苦茶、まずい・・・」


『そんな話になる前に、保証額をまとめて

 義援金募集を打ち切らないといけない』


「これから、ひと眠りしたら、この入金が無かった事にならないかな?」


『妙な現実逃避はやめろ、俺達にはこれから眠っている暇は無い』





※1億5000万ダラス 日本円換算で150億円ほどの設定

 中継器の収入の大体2ヶ月分で計算しています。

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