第7話 僕の持つ全てを使い、徹底的に抗う

古代ソルコアイト文明の 超弩級戦闘旗艦スーパーDクラス・バトル・フラグ・シップ クリムティア


この超弩級スーパーDクラスには2つの意味がある。


1つは船体の大きさである、全長5000mを意味するDDサイズ


大型1000m級(L) 超大型2000m級(LL) 

巨大型3000m級(D) そして最大規格の超巨大型5000m級(DD)

と分類されている。


もう1つは、主力兵装メイン・ウェポン

超弩級スーパーDクラスには、ソルコアイト文明としては固定兵装が存在する


一定の空間を焼き尽くすエリア・ガンの上位殲滅兵器ハイ・エンド


空間ごと破壊する次元破砕砲ディメンション・デストロイヤー、通称DD砲である。


もっとも、エリア・ガンを多用する彼らソルコアイトの戦術では

この防御不能で味方を巻き込みかねないDD砲を使う者はあまりおらず。


こんな代物を好んで使うのは、種族代表旗艦が敵中に突撃する


好戦的なレオガル種族くらいのものであった・・・






クリムティア格納庫 メルク設置作業中


【クリムティア】


『それで、メルク。このDD砲2門を交互に最大範囲直系2000km

 50時間発射し続けるわけか』


≪ああ、それも恒星と第4惑星の間の空間を正確にな、

 しかも、第4惑星の公転軌道に合わせて

 空間目標位置を変化させる必要がある≫


『DD砲は、そもそも連続発射なんて想定されてないのも分かってるよな?』


クリムティア自分船体ボディながら、1撃で戦況が変わる兵器を、わざわざ2基設置する

レオガル種族は少しおかしいと思う


≪その為に、メルククリムティアに乗り込むんだ、

 ここで故障部位の修復を行う≫


連続発射で壊れる前提で準備するのか・・・こっちも同類か?


『それでも、修復が間に合わない場合は?』


≪イシュメラーナの防御システムを熱線特化に限定して範囲拡大モードを設定した。

 恒星と第4惑星の間で一時的に盾にする≫


・・・・盾? ちょっとマテ


『いくら拡大固定しても第4惑星の大きさと比較したら、大した差はないだろう? 

 いったいイシュメラーナを、恒星に近づける気だ?』


≪クリムティアは第2惑星の軌道付近、イシュメラーナは第1惑星の軌道付近だな≫


『頻繁にフレアを起こしてる恒星の目の前にイシュメラーナを置くのか?』 


≪君もその分、照準の変更幅が小さくなるから目標位置の変更は楽になるぞ≫


『第4惑星は軌道に沿ってしか動かないよ。それよりその恒星フレア、

 こっちに飛んでこないだろうな?』


≪その辺は恒星に聞いてくれ≫





イシュメラーナ制御室


『マスター、クリムティアだ』

「何があったの?」


『恒星観測の最終結果だ、デイ・バーストの予測発生時間は50時間後だ』

「イシュメラーナ、マグカさんとギフカスさんに連絡して」

『承知』


「ブランシェのミーシアさん、シルキスタのアリシア、そっちは頼んだ」


二人には惑星アクールと惑星ブレーナムの気象状況の変化を

逐次モニターしてもらう


『ええ、アースライさんも気をつけて』

『アースライ、無茶したら、すぐにそっちに行くからね』


「じゃあ、メルク、クリムティア、イシュメラーナ、行こうか?」





惑星ブレーナム


『政府機関からのお知らせです。

 明後日、8日午前6時より、10日午後6時まで

 かねてお知らせしていました

 恒星フレアの多発活動が発生いたします。

 現在、アースライ・グランクラフト氏が

 恒星付近でフレア対策を行っています。

 住民の皆様は、たとえ僅かな時間でも

 電子機器の不調や健康被害の可能性がありますので

 必ず屋内に滞在し、外出はしないようお願いいたします』





アブリム星系 第1惑星軌道付近 機動衛星イシュメラーナ


「みんな、準備はいい?」


『機動衛星の防御システム展開完了、範囲拡大化準備完了しています』


≪こっちは配置について照準完了だ≫


『こちらクリムティア。マスター、恒星表面の電磁パルスを確認、来るぞ』


「クリムティア DD砲連続発射、タイミングは任せる」


『おお、右舷DD砲発射』


イシュメラーナの前の空間に巨大な歪んだ球形の鏡のようなモノが現れる。

表面はいびつにゆがみ、透けて向こう側のフレアが見えている。


『左舷DD砲発射、右舷DD砲急速チャージ』


球形の鏡の前に、もう一つの鏡の球が現れる


『右舷DD砲発射、左舷DD砲急速チャージ』


3個目の鏡が現れた時、1つ目に出てきた鏡の歪みが大きくなる。


『左舷DD砲発射、右舷DD砲急速チャージ』


4個目が出ると、ほぼ同時に1つ目の鏡が砕け散った。


『右舷DD砲発射、左舷DD砲急速チャージ』






最初に起きた、小さな攻撃の綻び・・・

それはクリムティアが攻撃を始めてから8時間が過ぎた頃だった


『メルク、右舷チャージャーが止まった、チャージ不能』


≪右舷待機中のメルク子機、チャージャーに集中修復≫


『左舷DD砲発射、次の発射迄30秒だイシュメラーナ頼む』


『了解、防御システム最大展開』


≪右舷チャージャーの修復完了≫


『右舷チャージ開始、イシュメラーナ防御解除』


『防御解除了解』


『右舷DD砲発射、左舷DD砲急速チャージ』






そして30時間が過ぎた頃には・・・・


『メルク、右砲身の変形を確認 発射不能』


≪全てのメルク子機は右舷に集中、発射時のエネルギーロスは気にするな

 発射可能な形を優先しろ≫


『イシュメラーナ、今度は長いぞ』


『了解、防御システム最大展開』





そして、50時間が過ぎた・・・・・


機動衛星イシュメラーナ防御システムに10%の欠落を確認

 表面装甲の融解による不具合と思われます』


『クリムティア、左舷DD砲に修復を集中しているが次の発射まで3分必要だ』


『3分か、承知した。欠落部分から第5惑星に短時間放射された分なら

 惑星側も許容範囲内だ』





しかし55時間後


『イシュメラーナ、聞こえるか?

 すぐに防御システムを集中使用に切り替えろ

 発生した恒星フレアが、その場所を直撃する』


・・・・・・絶望が訪れた。






惑星ブレーナム 中央情報集積センター


ここは、この惑星中の動植物の育成情報を集積する情報センター

しかし、今は恒星付近の映像に誰もが集中している。

その中でも・・・・・


【ギフカス・ハント】


「アースライさん、話がちがうぞ・・・・・

 なにが説明書チュートリアルにありましたから、たぶん大丈夫じゃないですか・・・だ

 あんた1人だけが命がけじゃないか」


『こちら、観測班。作戦開始後50時間経過

 赤い戦闘艦の発射頻度20%に低下、

 機動衛星の表面装甲はほとんど融解しています』


「もう50時間だぞ、まだ恒星の活動は終わらないのか?

 あんたが無事に帰らないと、俺はウチの嫁とこの惑星の独身野郎共に

 一生恨まれる事になるんですからね」






惑星アクール 第1海底都市マグール 中央管理センター  


【マグカ・ギョリョウ】


「アースライさん、話がちがうぞ・・・・・

 なにが惑星アクールには手を出せませんので・・・だ、

 無理しやがって・・・・

 こっちの惑星も時々防御範囲にねじ込んでるじゃねえか」


『こちら解析チーム、55時間経過するも恒星のフレアは止まりません』


「まだか? まだ、終わらねえのか」


『代表・・・た・・大変です、フレアが・・・機動衛星を直撃しました』


「な・・なんだと」





機動衛星イシュメラーナ


【アースライ】


「びっくりした・・・・イシュメラーナ、大丈夫?」


『現在、被害状況を確認中です』


「咄嗟にこっちに向かって来るフレアに

 地殻破砕砲プレート・ガンを撃ちこむ指示をしたけど大丈夫だった?」


『はい、メルクがプレート・ガンを巨大ガス惑星に撃ちこんだ時の

 情報を参考にしました。

 被害は出たようですがフレアの構成質量をかなり減らせましたね』


「なんとか生き残ったね」


『マスター、被害状況が確認できました。防御システムに60%の欠落を確認

 プレート・ガン使用不可能です』


「恒星の状況は?」


『フレア活動は継続発生中。マスター、直ちにアウタセルを装着して

 ここから脱出してください』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る