第6話 滅びの兆しは駆け足で
【メルク】
アブリム星系 第7惑星衛星軌道付近
あの青い宇宙船から取り外した恒星監視システムを
電源代わりの簡易ジェネレーターに繋ぎ
宇宙船があった辺りに設置した。
≪ブランシェ、イシュメラーナ、クリムティア、
監視システムの再設置は完了した。
恒星の方はどうかな?≫
『こちらクリムティア。メルク、悪い方に当たったようだ。
ストレアの残したフレア発生のパターンと酷似している。
これは近々あるぞ、デイ・バースト』
【中型戦闘艦シルキスタ 飲食コーナー】
【アースライ】
「アースライさん、マグカ、なんなんだ一体、急に呼び出して。
マーメイドの事を黙ってたのは、もういいぞ。
マグカは顔色が悪いが、飲み過ぎか?」
僕は惑星ブレーナムからギフカス代表を何も言わずに連れて来た。
ギフカス代表は僕たちの顔を見て何かを感じたみたいだ・・・
「冗談を言っている場合じゃ無さそうだな、何があったんだ?」
「ギフカスさん、近いうちにアブリム星系の恒星で大規模なフレア活動が発生する。
もしそれが起きれば第4惑星も第5惑星も、おそらく数日の間、
全てを焼き尽くす熱に晒される」
ギフカスさんの顔色が目に見えて悪くなる。
右手を口に当てて、視点が定まらない。
「ちょっと待ってくれ、近いうちにって?」
「調査はまだだけど、過去の記録から数か月以内に起きる可能性が高い」
「各惑星について、ある程度、先に集められる情報は集めた。
惑星アクールが人口18億 惑星ブレーナムが人口12億か
マグカさん、現在ある海底都市の収容人口は限界でどのくらいなんだ?」
「全ての海底都市を合わせれば、設計人口なら30億入れるんだ。
だが、今回は外気流入を止めてしまわなきゃならない。
おそらく24億が限界だな」
「あと、6億人か。今回は、その2~3日さえ惑星上に人がいなければいい。
メルク、前回の被害も第5惑星は地上の6割が残ったんだろ?」
≪どうやら、前回は第4惑星の影に入って助かったようだ。
今回もそうとは限らない安易に楽観視はできないぞ≫
「このことは絶対に市民には説明が出来ない、情報が漏れればパニックだ」
『マスター、クリムティアだ』
「どうした?」
『恒星の観測結果だ、デイ・バースト発生まで、あと 95日±5日』
ギフカスさんが膝から崩れ落ちた。
「3ヶ月、早すぎる。これではアクールへの避難さえ間に合わない」
完璧に空調管理されたシルキスタの中なのに
僕も身体の震えが止まらない・・・それでも
「メルク、いいかな?」
≪使えるモノを全て使ったとしても、かなり
「シルキスタ」
『はい』
「君は、この
積んであるステラ・システム・
ステラファス王家に渡してきてほしいんだ」
『承知しました』
「ブランシェ」
『はい』
「君のコクーンを使えば、大勢の病傷人を運べる。
ギフカスさんの指示で、なるべく大勢の人をアクールに運んで」
『承知しました』
「イシュメラーナ」
『はい』
「打ち合わせ通り、メルクと一緒にエネルギー防御システムの改造をお願い」
『承知』
「クリムティア」
『ああ』
「ごめん、今回は一番無理をさせる事になる」
『まったくだ、こんな無茶はさすがにやった事が無いよ』
「ほんとうに、ごめんね」
「マグカさん」
「なんだ?」
「すみませんが、惑星ブレーナムの人的被害を最小限にするために
僕はブレーナムに掛かりきりになります。
惑星アクールには手を出せませんので、なんとか生き残ってください」
「おお、こればっかりはしょうがないな。
しかし、本当にできるのか?
2日間、恒星の光を削り続けるなんてことが」
「
「アースライさん!!」
ミーシアさんの声に背筋が伸びる。
「はい!」
「私は離れるつもりはありませんからね、覚悟してくださいね」
「ミーシアさん、シルキスタと一緒にステラファスに行って頂くわけには・・・・」
「絶対に離れませんよ」
実にいい笑顔で、拒否されてしまった。
僕はメルクに頼まれて、
「メルカドさん、いるかな?」
『王よ、どうされましたか?』
「実は、あと90日ほどで、奥の警報が鳴るはずなんだ」
『王よ、その事をご存じなのですか?』
「陸の上で調べた、ところで、樹の箱って伝えられてないかな?
フタに文字が刻んであるはずなんだけど」
『確かにあります。少々お待ちください』
持ってきた、朽ちた樹の箱のフタには確かに文字が刻まれていた。
几帳面な4つと、ゆがんだ1つ
《アーバス ブレンド チーナ ダンガ それにエーディクですね》
「確かにコレだ、この箱・・・預かっていいかな?」
『どうぞ、この箱を求める者がいたら、渡すように言い伝えられています』
「メルカドさん、警報が出たら、おそらく地上は焼き尽くされる。
マセーナルにも絶対に出ない様に頼むね」
『はい、しっかり縛り付けておきます』
クリムティア 格納庫
「メルク、メルカドさんから箱を預かって来たよ」
≪ああ、ありがとう。中に4つ石が入っているはずだから、この石も
一緒に箱の中に入れておいてくれるかな≫
床から拳大の透き通った緑色の石が出てくる。
樹のフタを開けると・・・
「メルク、箱の中に石以外に貝殻が入ってるけど?」
≪貝殻?≫
「何か書いてある、ルジェ、わかる?」
『箱を開けた誰か、すまないがコイツらに うまい光を喰わせてやってくれ。
マセーブク・・・ですね』
≪クリムティア子機、すまないが、この箱を君のフードクリエイターの所に
持っていってくれないか?≫
『この石は?』
≪ストレア種族のコアだ、
フードクリエイターはコアに反応して動くはずだ。
彼らに”うまい光を喰わせてやってくれ”≫
バッシ――――――――ン
僕は左の頬に衝撃を受けて、そのまま倒れた。
前にリリノさんに殴られた時よりも確実に痛い、
殴った相手に抗議しようとして、目の前にいるのが・・・・
目に涙を溜めたアリシアだと気が付いた。
えっと、アリシア・・・なんで
倒れた僕に馬乗りになったアリシア・・・・
2撃目を予測して、思わず目をつぶると・・・唇に柔らかい感触が
あれっ?・・・・・どうして、僕はアリシアにキスされてるの?
あまりに予想外の事に、まったく動けない
そのまま、アリシアは僕の胸に縋りついて叫んだ
「死ぬなんて許さないから!!」
《マスター、大変です》
ルジェ、この状況は?
《シルキスタと一緒にステラファスから来たそうですが、
ステラ・システム・
マスターが死を覚悟してアブリム星系に残ったと勘違いされたようです》
どうしよう・・・・単に、アレを壊すとマズいから
ステラファス王家に持って行ってもらっただけなんだけど・・・
「チェリム【装】」
ミーシアさんが、クリサリスを纏って、無理やりアリシアを引きはがした。
「えっ えっ ミーシアさん?」
「アリシアさん、ちょっと話があります」
「どうして?」
「まず、私が一緒に居るのに。
どうしてアースライさんに死を覚悟するような選択をしたと
勘違いしたのか、説明してもらえますか?」
「勘違いって・・・何?」
「ちょっと、向こうでお話ししましょう」
アリシアはミーシアさんに向こうに連れて行かれた。
しばらくして、ミーシアさんが戻ってくる。
「アリシアは?」
「勘違いに気が付いて、今、ベッドで恥ずかしさに転げ回っていますわ」
「それは、なんと言っていいか・・・・」
ミーシアさんも、何か吹っ切れたようすだ
「まあ、いいですわ。何しろ・・・・」
「何しろ?」
・・・・唇に、柔らかい感触、それに良い匂いがする。
「元婚約者がOKでしたら、私も大丈夫ですよね」
あまりの事に動けないでいる。
「せっかく買ったスイムウェアもまだ着て無いんですよ。
アースライさんと一緒に行きましょうね、ルジェ」
『はい、ミーシアさん』
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