閑話 ストレアの贈り物

※過去話 第2部 第2話の深淵の三角地帯ヴォイド・デルタが出来た時の話です。


【ストレア種族 エーディク】


アクリメラ種族の青い中型宇宙船、カナンテッダ


なんでも、このカナンテッダはアクリメラの知る最速の魚の名前らしい。


この船体ボディの色はカナンテッダ・ブルーなんだとアクリメラ達は騒いでいた。


そして私はエーディク ストレア種族だが、今はこの宇宙船ふね居候いそうろうだ。


他の4人のストレアと共に、この宇宙船ふねに居る。

マセーブク船長を含め50人のアクリメラと5人のストレア

このメンバーで戦乱から逃げて来た。


我らからメルクが失われて久しく、クリサリスも・・・もう無い。

異常重力分布帯を突っ切った時の無茶な連続転移が祟ったのか、

この宇宙船カナンテッダの転移装置も既に限界に来ている。




ようやくたどりついた、この星系には居住可能惑星がなんと2つもある。

しかも1つは、どうみても海洋惑星だ。


『マセーブク、あの惑星、きっと泳げるぞ。

 いつもさんざん自慢している君の泳ぎを見せてもらおうか?』

 と、あおってやったら


「ふざけるな、あんな塩辛い海、泳げるか」


知ってるよ、ワザとだ。


しかし、他の種族なら大喜びしそうな手付かずな惑星を見つけたのが、

高濃度酸素淡水水棲種族アクリメラ種族呼吸の必要無い種族ストレア種族だというのは、

なかなかに皮肉が効いている。


それでもマセーブクが、あの惑星に降りる事を決めたのは

アクリメラの海洋惑星に対する憧れからだろうな。


まあ、でも彼らの食料調達は可能だろう。


後で網を作ってやるから使えばいい。






カナンテッダを重力安定点ラグランジェ・ポイントに置いて

完全海洋型の第4惑星、そこの僅かに隆起した島に小型宇宙船で着陸した。


命の水アキュアムの簡易生成装置では数日しかもたない、

カナンテッダの生成装置も取り外してこないといけないな。


しかし、ストレアの種族特性のせいか、

あの忌々しいが気になってしょうがない。


妙だな、なんであんなに恒星のフレアが頻発しているんだ?


気になって、この島の地層を調査してみた。

案の定、地層に幾度かの焼き尽くされた層を見つける。

調査結果は最悪に近かった。


数千年か、数万年に一度の・・・恒星爆発か?






で話し合う

調査した海底マップを見ながら最善策を検討する。


1人は分子フィルターの発生装置か?

1人は海洋水の排出装置か?

1人は防衛装置か?

1人は命の水アキュアムの生成装置か?


そして私はカナンテッダから恒星炉を取り外して、

全ての動力源として海の底に設置するのか?


ああ、わかっているカナンテッダからは

命の水アキュアムの生成装置も外してこないとな


全ての設置を終えた私は・・・

この島に僅かに植生する樹木を使って樹の箱を作る。


箱のフタには文字を刻む。


その箱を抱えて、久しぶりにマセーブクの所に行った


島にプールを作ったか、頑張ってるじゃないか

カナンテッダから取り外した命の水アキュアムの生成装置は

まだ、かろうじて作動しているようだ。


作った網も、ちゃんと使ってくれているみたいだな。


『やあ、マセーブク、みんなを連れて、ちょっと来てくれるかな?』


小型宇宙船で、私達が作った三角の海に連れて行く。


「エーディク、ここは?」


『私達が作った命の水アキュアムの三角の海だ』


マセーブクを容赦なく突き落とす。


「何をしやがる、エーディク」


『うん、命の水アキュアムの成分は問題無いようだな。

 他のヤツも連れてくるとしよう』


そういえば、マセーブクには命の水アキュアムのプールに落とされた事はあっても

落とした事はなかったな。


なかなかいい気分だ。


小型宇宙船で3往復、やっと全てのアクリメラを落とせた。


「ちょっと待て、エーディク。おまえ・・・他のヤツらはどうした?」


水面に顔を出して叫ぶマセーブクに樹箱きばこを渡す


箱を渡され、怪訝な顔をするマセーブク


「なんだよコレ?」


だ、海の底に連れて行ってやってくれ』


おい、マセーブク・・・そんな泣きそうな顔をするなよ


「・・・・どうしてだよ?」


『アーバスは分子フィルター発生装置に

 ブレンドは海洋水の排出装置に

 チーナは防衛装置に

 ダンガは命の水アキュアムの生成装置になった』


私達の偽体からだを材料にして作ったからな、

コストはともかく性能と耐久性だけは折り紙付きだ。


「おまえらが、そこまでする事じゃないだろうが」


『マセーブク、2日後、ここの恒星が暴れる』


「何をいきなり・・・」


『恒星が暴れるのは、おそらく数日だろう。

 ここの深海に逃げれば生き残れる』


「だったらお前たちだって」


ストレア私達は、どのみちでは生きられないんだ』


「・・・なんだって?」


『ここの恒星には、ストレアがエネルギーに出来る波長の光が含まれていない。

 どうせ、生きられないならが生き残る方法を選ぶ、

 実に鉱石系種族ストレアらしい、頭の固い結論だろう』


「この、大馬鹿野郎が・・・」


『それでは、これから最後の仕事だ。

 ちょっとカナンテッダに行って警報機をセットしてくる』


「警報機?」


『ああ、何千年後か何万年後かに、恒星が暴れるなら

 また海の底お前たちに教えてやらないといけないからな』


「いくらなんでも何万年も経ったら、宇宙に出てるだろ」


『いや、あんがい、まだモリで魚を取ってるんじゃないか』


「うるせ~ それまでにフードクリエイター作って、

 今度は、お前にうまい光をたらふく喰わせてやるよ」


『それは、楽しみだ。じゃあなマセーブク』


「おうよ、エーディク・・・・またな」

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