第5話 想定外の事態

惑星ガルチノア ギダノ重工 本社



現在の僕は想定外の事態に追い詰められていた。


目の前のテーブルの上に積まれているのは・・・






「カイネン会長・・・・なんですか? この大量のホロカードは?」


「君宛ての、だよ。あの婚約破棄騒ぎの影響だね。

 今届いている近隣星系の分だけで会議室が1つ埋まりそうだ」


「断る訳には?」


「断るも何も、向こうから勝手にに送って来るんだ。

 たぶん、アクール政府宛てにも送られてるんじゃないかな?

 しかし、ギダノ重工ウチもクルーザーの完成まで、あと1ヶ月はかかるけど

 どうするかね? さっさとパートナーを決めて婚約か結婚を発表するか、

 それとも居場所をくらますか・・・・」


どこに逃げようか考えていると、ミーシアさんが1番上の1枚を手に取って・・・


     ベキョ


ためらいも無くへし折った・・・・


「カイネン会長、お手数ですがのホロカードの処分をお願いします。

 アースライさん。私とデートしましょうか?」


「ミーシアさん?」

「せっかくですから、2人でガルチノアの観光スポットを回りましょう。

 こんなモノが来ないように見せつけてあげましょう」


「ミーシアさん、別に見せつけなくても・・・・」

「おそらく、今、止めておかないと次は

 団体で既成事実を作りに来ますよ」

「ミーシアさん・・・よろしくお願いします」




一通りガルチノアの観光スポットを回った後、

次はショッピングだ・・・


故郷では見た事の無いほど巨大なショッピングモールに移動してきたけど

観光スポットからずっと右腕にミーシアさんが摑まっている


「ミーシアさん、すみません・・・腕が・・・・」

「大丈夫ですよ、意識してから」


「服を見に来たのですよね?」

「せっかくなのでランジェリーとスイムウェアも見ましょうか」


「それは、ちょっと」

「あら、もう(チェリムのは)ぜんぶ見てるんだし、良いじゃないですか」


「それは別でしょう」

「アースライさん・・・・見た事は否定しないんですね?」


し、しまった・・・・


「惑星アクールのマーメイドツアーに、このスイムウェアなんかどうでしょうか?」


水着姿のミーシアさん・・・

とっさに目を逸らす


「すみません、露出部分が多すぎます」


露出が多い・・・というか、ほとんど隠してない上に、

スイムウェアの輪郭を誤魔化すムダに高度な技術が使われている?

これは、どこに視線を持って行ったらセーフなんだ?


「2人きりの場所でしか着ないから大丈夫ですよ・・・でも、そうね?」

「どうかしましたか?」


ミーシアさんがニッコリ笑って・・・・

もスイムウェア選ぶ?」


『良いのですか?』

ルジェが【現】で現れた。


「ええ、ルジェのスイムウェアも選びましょう。

 普通のと、ちょっと冒険したのを選びましょうか

 ルジェ、アースライさんの左腕はお願いね」


『承知しました、意識して





アルファ1星系 中継ステーション スライグレンダ


【メルク】


アブリム星系で見つけた青い宇宙船をメルク子機を使って調べる。


特殊連装型6号転移装置か、無理な連続転移をしたせいか壊れてるな。


あれ? おかしいぞ? 恒星炉が取り外されてる。


まさか、コレを取り外して、わざわざ深海に設置したのか?


アクリメラが? ・・・・絶対に無いな。


これは宇宙船のログか? それともメッセージか?


中の情報を読み出す・・・・・・




≪なんてことだ。アクリメラは惑星アクールに降りたんじゃない

 深淵の三角地帯ヴォイド・デルタに避難したんだ≫


深淵の三角地帯ヴォイド・デルタを作ったのは君達か?

 もしかして君達も生き残っているのか? 


メルク子機が船内から透き通った緑色の石を回収してきた。


≪ストレア・・・この宇宙船、なら船体に書いておいてよ。

 やってしまったな。この宇宙船は放置されたんじゃなかった

 恒星の異常感知の為に、あの宙域に設置されてたんだ≫



まあ・・・そうそう恒星の異常なんて起きないだろうが

知ってしまった以上は、なるべく早くアースライに連絡を取りたいな。

アースライは、いまガルチノアか・・・


空間転移ポートの向こうになるから中継器を使った連絡はとれない

今、ポートの向こうに行けるのは・・・・・


超大型医療拠点艦ブランシェ機動衛星イシュメラーナ

それに超弩級戦闘旗艦クリムティア


非効率的で非論理的だが、こちらにはマスターアースライが居る。

連結恒星炉タリスマン巨大ガス惑星ガスジャイアントに突入させるタイミングに、

なぜか出くわす彼をみていると、あの恒星でも、何か起きている気がしてきた。




≪ブランシェ、イシュメラーナ、クリムティア、来てくれ。

 空間転移ポートの向こう側に行く

 おそらくアブリム星系に行く事になると思う。

 ブランシェは青い宇宙船から取り外した恒星監視センサーを積んでくれ≫




【アブリム星系 深淵の三角地帯ヴォイド・デルタ最深部】 



《恒星監視システムの、アクリメラに警告

 出来得る限り最深部に集まり衝撃にそなえよ。

 の可能性あり》






【惑星ガルチノア】


 それは、2人のスイムウェアを選び終わった直後だった。


『マスター、メルクからシルキスタに連絡です。

 あの青い宇宙船は恒星の異常を観測する為に設置されていたモノ。

 取り外した恒星監視センサーを持ってアブリム星系に再設置に向かう、

 念のためブランシェ、イシュメラーナ、クリムティアで移動中

 アースライはどうする? だそうです』


「念の為にって、3機を全部連れて行くって?

 相当危険な事が起きる可能性があるのか? 

 マグカさんに声をかけて、すぐにアブリム星系に向かおう」






マグカさんもクルーザーの受け取りは後回しにして、

一緒にアブリム星系に向かう事になった。


ガルチノアからアブリム星系まで700光年、約2日


『マスター、メルクから通信が入りました』


≪アースライ、すまない。手に入れた情報が情報だけに放置は出来なくてな≫


「ああ、メルクが3機とも連れて行ったと聞いて、最悪の事態を考えて

片方の惑星の代表を連れて来た」


≪それはすまなかったな。まあ、現時点ではっきりしているのは、

 過去にあの星系で大規模災害が起きていて

 その災害を監視する為に設置されていたセンサーを

 こちらが間違えて引き上げてしまっただけなんだ≫


「メルクさんと言ったな、私は惑星アクール代表のマグカ・ギョリョウです。

 一体、過去に何があったのか教えてもらってもいいですか?」


≪あくまで過去に起こったことだが、アブリム星系の恒星は短期連続爆発

 いわゆるデイ・バーストを引き起こした事がある≫


「デイ・バーストですか?」


≪恒星が2~3日間、表層で大規模な連続爆発を起こす現象だ。

 当時、第4惑星の僅かな大陸は焼き尽くされて、海面は煮え立ち。

 第5惑星の4割が焼き尽くされた≫


「そんな事が・・・・」


≪当時、宇宙船の故障で、あの星系から移動出来なくなった彼らは

 近々起きるデイ・バーストを予測して、海底に宇宙船のエネルギー炉を移設

 彼らが呼吸出来る命の水アキュアムの発生装置と巨大な3枚の分子フィルターを設置

 彼らが生き残る為のシェルターを作りあげたんだ≫


「そうやって生き残ったんですね」


≪そして、再びデイ・バーストが来る可能性を考えて、動かない宇宙船に恒星を監視して、万が一の時は海底のエネルギー炉に通報するシステムを作っていたのだが

それを、修理の為に持って帰ってしまったわけだ≫


「やっちゃいましたね」


≪ああ、一言宇宙船の外に『恒星監視中 動かすな』と書いてくれてたら

 こちらも気をつけたというのに、まったくというのは

 種族だ≫


「ちょ、ちょっと待ってメルク。ストレアって何? 

 今までの話、水棲種族アクリメラの事じゃなかったの?」


≪あの、アクリメラの宇宙船にはストレアという種族が乗せてもらっていたようだ≫


「アクリメラの宇宙船って、空気の代わりに水が詰まってるんだよね? 

 どうやって?」


≪ストレアは鉱物系の種族で複合金属の偽体で行動してたから、呼吸の必要が無かったんだ。アクリメラと違って繊細で器用な種族だったからね、恒星炉の移設や

命の水アキュアムの発生装置、分子フィルター、恒星の監視装置、

やったとしたら、全部ストレアだね≫


「アクリメラと違ってって? アクリメラは、どんな種族だったの?」


≪食べる事と、泳ぐスピードにしか興味がない種族かな?≫


もしかして文明が維持出来なかったんじゃなくて、そういう種族なの?






※FELT高光度の短期変光現象、恒星が2日くらい爆発的に明るくなる現象も

あるそうですが、これは超新星になりそうな大きな恒星の話ですね。

デイ・バーストの設定は全くの創作物になります。

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