第1話 クリムティア誕生

アルファ1星系 中継ステーション スライグレンダ


機動衛星イシュメラーナ習熟れんしゅうを兼ねて中型戦闘艦シルキスタと共にココにやってきた。


晴れて、機動衛星の恒星炉から解放された古代文明限定万能修復装置メルク

ココに連れてくるためでもある。


ちなみに医療拠点艦ブランシェは、いま星間お見合いツアー船ブライダル・シップとして活動中だ。


彼女ブランシェは、ココで作っている新たなブライダル・シップの完成を心待ちにしている。


人間は今回、僕とアリシア、セシリア、ミーシアの4人


〖メルクのマスター、例の1000人乗りの宇宙船、船体ボディは大体出来てるぞ〗


「スライグレンダ、もう出来たの。どんなの? 見せて」


タグチームの1隻が船体ボディを引っ張ってくる。


金属の地肌が見えた1000m級の大型艦だが、

胴体下部に大きな円盤状のモノが張り付いている。


「あの胴体の下に付いてるのは?」


〖ああ、送迎宇宙船ランチだよ、全方位景観観察パノラマ・ビュー対応で一応100人乗りを想定している〗


「すごい、ほとんど完成してる」


〖後は、メルクに恒星炉を修復してもらう。それからチャージだな〗


「メルク、恒星炉の修復をお願い」


≪ああ、さっそく取り掛かろう≫


〖それと、メルクのマスター〗


「なにかな、スライグレンダ?」


〖あの、赤い超大型宇宙船も恒星炉が停止している。すまないが、メルクが修復する分も含めて2基の恒星炉をチャージしてもらいたい〗


「ああ、わかった。それならから、メルクの修復が終わり次第

 チャージに行くよ」


≪アースライ、今、恒星炉をチェックしたが修復に必要な時間は150時間だな≫


「じゃあ、それまで色々と見せてもらうよ」





機動衛星イシュメラーナアースライ私室


僕は柔らかモノに包まれた感触で目が覚めた、頬に柔らかいモノが当たっている。

なんだろう? 反射的に顔を擦り付けた。


『あっ、あっ、あっ・・』


僕は裸のイシュメラーナに抱きしめられていた・・・動けない。


「イシュメラーナ、起きてくれるかな?」


イシュメラーナは目を開けて・・・また閉じた。


ちょ、ちょっと待って・・・・

「イシュメラーナ、起きて」


目を閉じたままで


『マスター、私には睡眠時間がもう30分必要です』






何とかベッドから抜け出す事に成功した。


アルファ3星系


赤と青、2つの恒星が見える。


目視では解らないが、互いに引き合いながら公転しているはずだ。


≪なるほど、2連星を同時に恒星炉に吸収させるのか?≫


「ここは片方だけという訳にはいかないからね」


片方の恒星だけを吸収すると、もう片方がどこに飛んでいくか・・・

ヘタをすれば大惨事になる。


赤い超巨大戦闘艦の恒星炉を赤い恒星に、ブライダル宇宙船に使う予定の恒星炉は

青い恒星にそれぞれ突入させる。


「ねえ、メルク、あの赤い戦闘艦は名前はあったの?」


深紅の雫クリムティアだな≫


「・・・ずいぶん大きな雫だね。でもいい名前だ」


≪そういわれると、意味が説明しずらくなったな≫


そういえば、あの船【星喰い】のモデル好戦的ケンカっ早いなレオガル種族の旗艦だったっけ。


「その説明で、大体わかった・・・説明はいいや」


≪ところで、クリムティアに恒星炉を取り付けてから

 試運転はどこに行く?≫


「実は、メルク子機と遺跡文明品を1つ見つけてあるんだ。

 メルク、一緒に見に行こうか?」





スライグレンダの所に戻って、チャージ済みの恒星炉を渡す。


接続作業を終え、僕は超弩級戦闘旗艦クリムティアの制御室にいた。


制御室の床に深紅の感応珠が浮かび上がってきたので、そっと手で触れる


『個人名の登録を求める』


「アースライ・グランクラフト」


『登録した。この超弩級戦闘旗艦ディメンジョン・デストロイヤー・クラスの命名を希望する』



『名称クリムティア、登録完了しました。これよりチュートリアルを開始します』





チュートリアルを終えて、


『お疲れさま。マスター』


力強い声の、深紅の髪の乙女、


なんだろう、何もかもがすべて大きい


「クリムティアだね? 今後共よろしく」


『マスター。こちらこそ今後ともよろしくな』


「ああ・・・・・ごめん、抱き着くのは後にして。

 お願いだから服を着てもらっていいかな?」





ちなみに、新しいブライダル・シップは『ウェディカ』と名付けられた。





僕はウェディカに搭乗して、ステラファスに向かう。


疑似人格を持つ他の宇宙船と違い、AIのこのウェディカを

無人で動かすのは流石にちょっと気が引けたからだ。


『マスター、まもなくステラファス星系に到着します』


「ああ、ありがとう。ウェディカ」


スライグレンダ・・・これのどこが簡易AIだ?

これ間違いなく、僕が初めて乗ったモーリタニアより高性能のAIだぞ・・・





ステラファス星系ステーション


ウェディカの受け渡しの為にエレネシアさんが来てくれていた。


「エレネシアさん、新ブライダル・シップ『ウェディカ』持って来ました」


「ご苦労様、それじゃあ打ち合わせ通り内部の工事はこっちで引き受けるね」


「はい、よろしくお願いします。ところで、この宇宙船を任せるは大丈夫ですか?」


あっ、エレネシアさんのコメカミが引きつった。


「もしかして、リリノさんですか?」


「そうなのよ。また落ちたわ、資格試験」


「【第3種大型航宙船舶操作】の方は大丈夫だったんですが、あきらめます?」


「そうね、もう一人がも1発合格だっただけに。

 あまり待たせたく無いわね。

 リリノさんにはやっぱり操縦士専任でいてもらいましょうか」


「ウェディカは簡易AIと聞いて心配したんですが。

 その辺のAIよりも高性能でした。まったく心配ありません」


「まあ、だからね。まあ、それにがいれば大丈夫よ」


前回、リリノさんに遭遇した時、僕はそこで、得難い人を見つけた。

すぐさまに出向きヘッドハンティングを行った。


 サーシャ・スターク25歳


いい加減なリリノさんへの誠実な対応を見て

リリノさんの上司はこの人しかいないと確信した。


「サーシャさんは、どちらの資格も1発合格でしたね」


「ええ、アースライ君。本当に良い人を見つけてくれたわ」





≪それで、アースライ。見つけたという遺跡文明品は、どこの星系だったんだ?≫


「アブリム星系だよ、1000人の花嫁候補を送る時に偶然ね」






そうしてやって来たアブリム星系、

豊かな海産資源を持つ第4惑星と牧畜に特化した第5惑星という

特異な2連星を持つ、この星系。


第7惑星の公転軌道付近にある小惑星アステロイドの一つが


この目の前に浮かぶ岩塊に偽装された古代文明の遺産・・・・・


≪アースライ、後でちょっと確認するが、気になる事がある。

 まあ、この偽装を先に解除するか・・・≫


偽装を解かれた岩塊が、その中身を表す・・・輝く様なあおい船体の

中型艦が現れた。


見た所、損傷等は無いように見える・・・なのに、どうしてここに

置いていかれたんだ?


≪やはりか・・・アースライ、どうする?≫


「なにを・・・かな?」


≪この中型艦、アクリメラ種族・・・つまり水棲種族の宇宙船だ、

 君達が乗り組むつもりなら、かなりの改造を加えなければならないぞ≫


「改造?」


≪確か、空気の代わりに高濃度酸素を含んだ液体を艦内に充填してたはずだ。

 まずは、その循環システムと開口ハッチの分子フィルターだな

 艦内の備品は全て防水になっているが、一番の問題はトイレかな?≫


「どうなってるの?」


≪実は私も彼らのトイレを見た事が無い、情報も無いな。

 これから初めて見る事になる≫


水棲人が水中で使用するトイレ? どういう構造なんだ?


「想像もつかないな」


≪それと、もう一つ≫


「何かな、メルク?」


≪第4惑星アクールの海中で稼働中の恒星炉らしき反応を見つけた。

 アクリメラ種族、あそこに居るんじゃないか?≫


「いや、あそこはマグカさん達の居住住んでる惑星でしょ、さすがにそれは無いはず・・・」





「すみません、マグカさん。お仕事中に」


『いや、アースライさんの頼みを聞かないでいたら、

 私は嫁に口を効いて貰えなくなるよ』


「仲が良さそうで安心しました。ところでマグカさん、惑星アクールの海底に

 妙な反応を見つけたんですが、そちらで心当たりはないですか?」


『反応ですか? どの辺りですか?』


「いま、位置情報を送ります」


その情報を見たマグカさんが顔色を変えた。


『すみません、ここは別名深淵の三角地帯ヴォイド・デルタ

 事故が多発するので政府から開発禁止されている区域になります』


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