第36話 連邦代表会議 再び
『GNNガルチノア・ネットワーク・ニュースです。
今回、緊急開催される連邦代表会議に先立ち
会議の開催地である主星ガルチノアに
警備として急遽集められ配置された艦船に関してですが、
惑星警備に不向きな超大型艦が多数参加している事に対して、
またもや疑問の声が上がっています。
現時点で配置された超大型艦は10隻、警備計画では最終的に13隻の超大型艦が
1つの惑星の衛星軌道に並ぶ事になります。
警備計画では別に22基の対艦衛星設置が記載されており、
主星ガルチノアは連邦代表会議では無く軍事企業各社の展示即売会では無いかとの
声があがっています。
連邦広報部からは前回と同様、通常の警備計画案であり、
会議に参加する各国代表の重要性を考えれば
現在までの警備計画の甘さを問題にするべきであり、
これがスタンダードだと
連邦代表を含めたメンバーからの共同声明の発表がありました。
一部の関係者からは、
『まさか、前回の会議同様に、この後会議直前になって警備の艦船が
星系から消えるまでがスタンダードか?』
と揶揄されています』
『GNNガルチノア・ネットワーク・ニュースです。只今速報が入りました。
今回開催される連邦代表会議に召喚されたステラファス王朝と、
出頭命令が出た騎士アースライですが
当初は王家の御座船と所属の騎士が持つ白銀の中型戦闘艦がガルチノス星系に入ると
予想されていました。
機動衛星はファクマス星系におけるアクシデントで再起不能と噂されており、
超巨大医療艦は現在
『純白のブライダル・シップ』として
現在のファクマス星系・ファンダン星系の定期航路以外の多くの星系からも
強い
その予想をくつがえし、只今入った情報によりますと
騎士アースライが白銀の中型艦と再起不能と噂された機動衛星と共に
ガルチノス星系に到着しました。
ガルチノア政府はこの予想外の事態に混乱しており情報収集をすすめています』
『GNNガルチノア・ネットワーク・ニュースです。
只今、ステラファス王朝から緊急表明がありました。
内容は次の通りです』
『やあ、連邦所属国家の諸君。
私はステラファス王朝の国王をやっているダラテス・ステラファスだ。
どうもウチの機動衛星が再起不能という噂が広まっているようなので
無事修復が終わった事をお見せしに来た。
それと、前回予告した、我が騎士の次の発見だが
今度は恒星系間を繋ぐ古代文明の通信システムを見つけてきたんだ
さすがに実物は見せられないので、連邦代表会議で実演したいと思っている。
通信システムの設営や使い方についても連邦代表会議で相談したいと考えている。
では、我が騎士の次の発見を楽しみに期待してくれたまえ』
【ガルチノス星系 主星 ガルチノア】
ギダノ重工 会長室
「だれだ、再起不能なんて言ったのは・・・」
『外観を見る限りは無傷だな』
『そんな事より、あの通信システムだ』
『そうだな、あれが事実ならば、連邦中の情報が瞬時に手元に届く』
『設営と言っていたな、つまり星系ごとに設営が必要だという事か?』
『連邦中の全ての星系がステラファスにすり寄るだろうな』
『ああ、これは乗り遅れる訳にはいかないな』
「おい、ガルチノア周辺に配備された大型艦が少なくなってないか?」
『当然だろう? 逆にそれ以外に選択肢があるのかね?』
『悪く思わないでくれ、ステラファスに敵対行動は絶対に無い』
『あんな相手に賠償請求なんて、正気か? 無謀だろう』
『無事な会議の終了を祈っているよ』
『ああ、くれぐれも我々の名は出さないように頼むぞ』
「ガルチノスを見捨てるのか?」
『人聞きの悪い事は言わないでくれ。
君も連邦代表としての職務を全うしてくれたまえ』
『そうだ、君もガルチノアから放逐されたく無ければ無駄な事は辞めたまえ』
「ここまで準備をして利益分配まで決めていたんだぞ。
その為の先行投資も既に始まっているんだ」
『その程度の利益が何になる?
君もファクマスでの儲けの方が遙かに大きいのは判っているだろう?
通信システムに至っては、儲けの想像すらできないぞ。
もし進めるなら、我々は迷わず連邦代表の解任と
ガルチノアへの制裁決議が決定する』
「そこまでするのか?」
『当然だ圧倒的な力に対して力で対抗するなどバカのする事だ。
バカでは投資家も社員もついては来ないのだよ』
『しかも、ファクマスの件では、こちらに大きな利益さえ持ちかけてきた。
得意先は大事にするものだよ』
『今後、予想される莫大な利益を考えると、
あの騎士を絡め手で籠絡する事が最重要項目だな』
『我々は回収不可能どころかかなりの利益を受けている。
これからも利益を約束してくれる相手なら、
なんとか身内に引き入れたいものだ』
「ギダノ重工の大型艦も直ちに撤退させろ」
『理解してくれて何よりだよ連邦代表』
ガルチノス星系に到着した当初の情報では・・・
主星ガルチノア付近は大型戦闘艦のバーゲンセールでも開くのか
といった状態だったのが、
またもやガルチノアに近づいた時点で監視衛星1つ残っていない状態になっていた。
シルキスタをガルチノアの軌道ステーションに停泊させて、
ステラファスの御座船から小型宇宙船を出してもらった。
会議会場に行くのは国王陛下とカレナさん、僕とアリシアの4人だ。
小形宇宙船から降りる時に、思わずレッドカーペットを凝視して
誰かいないか確認してしまったのはミーシアさんにだけは内緒にして欲しい。
さて、今回も会場で指定された自分の席に座って待っているのだが、
またもや会議の開始時間になっても一向に始まる気配が無い。
他国の代表も来ている場で説明も無いとなると、
周囲からは抗議の声が上がってきた。
そもそも代表議長の席に誰も来ていないのはどういう事だろうか?
2回とも、僕は議長に出頭命令を出された気がするんだが?
やむなく、議長席の隣に座っている白髪のおじいさんが話し始めた。
「すまないが静粛にしてくれ。
どうやら代表議長を務めるはずのチルキダ・ギダノ氏が
ほんとうに急病で出てこれないようだ。
開会の挨拶も出来ない状況らしい。
残念だが、これ以上各国の代表を待たせるわけにもいかないので、
また私が議長代行として会議の開催を宣言する」
今回は、いきなり、ステラファスの話だ。
「今回は、ステラファスの騎士殿が有人惑星を救う為に
機動衛星の兵器をやむなく使用した件の説明を聞くという名目だったが?
騎士殿、その話を消し飛ばしてしまうようなモノを持ってきたね?」
「すみません、大騒ぎになるので内緒にしようとしたんですが。ステラファスの第1王女に『連邦の為にも絶対に発表しなければダメだ』と説得されまして」
「そうか、連邦各国はエレネシア王女に感謝しなければいけないな。ところで今日はエレネシア王女は一緒では無いのかね?」
「一緒では無いのですが、説明はすべてエレネシア王女にしてもらいます。
壇上にある、発言者を拡大表示させる大きなモニターにエレネシアさんが映る
『こんなところから失礼します。ステラファス王家第1王女エレネシアです』
「ああ、エレネシア王女、久しぶりだね。そして、よく騎士殿を説得してくれた。連邦を代表して感謝させてもらうよ」
『マクギニア副議長こそ、お久しぶりです。さすがにこれだけ便利なモノは広めて大勢の人が使うべきだと思いますわ』
「しかし、何故、モニター越しなのかな?
なぜだろう非常に悪い予感がするのだが?」
『さすがですわね、マクギニア副議長。私は現在ステラファスにおりますの』
会場全体に悲鳴とも怒声とも取れない妙な声が、あちこちで漏れる
「こことステラファスはどれ位の距離だったかな?」
『おおよそ300光年くらいですわね』
会場のあちこちで『ウソだ』『なんの詐欺だ』と声が聞こえる。
「ところで王女、今、ステラファスのドコにいるのかな?」
『私ですか? 私は今、ステラファス議会に来ておりますの』
「ステラファス議会?」
カメラが移動して、議員が集まっている議会の会場が映しだされる。
映像は、その中に居る一人の男性を映し出す。
40代だろうか? 灰色の髪をした
『連邦代表会議に出席されている皆さま、初めまして。私はステラファス議会の議長を務めております、モイス・ミールと申します。現在定例議会で丁度2つめの議案が採決されたところです』
「モイス議長、私はこの会議の議長代理をしている、マクギニア副議長だ。
こちらは肝心の議長が、そちらの国の騎士殿を呼び出しておいて病欠なのだよ」
『それはそれは、きっと何か心労がたたったのでしょうな』
「ところでモイス議長からみて、騎士アースライはどんな印象かね?」
『ステラファス王国の歴史上、最も素晴らしい騎士ですな』
「ほう、どんなところがかね?」
『何より金を使いません。
全ての騎士に支払われている特別助成金の年額2万ダルス以外は
一切請求が無いんですから』
「なんと、そんな事を言ったら、よその星系から高額報酬で
引き抜かれるのでは無いかな?」
『そのあたりは、婚約者のアリシア王女に頑張って頂きましょう』
『モイス議長、アリシアに怒られるから、その辺にしてくれる』
『それはマズイですな、では、マクギニア副議長失礼します』
「ああ、素晴らしい情報をありがとう。モイス議長」
『長々と失礼しました。今回、ステラファスの議会を見て頂きましたのは、
ステラファス王国を絶対君主制だと勘違いされている方がいるらしく、
王家が星系間通信の情報を独占する等というデマを払拭させて頂く為もあります。
それでは、星系間通信について説明しますわね・・・・』
※ステラファス王家 騎士の特別助成金年額2万ダルスは
日本円で200万円程をイメージしています。
この金額は日本の人間国宝の方への特別助成金である
年額200万円を参考とさせて頂きました。
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