第38話 海産の惑星と牧畜の惑星

アブリム星系 


第4惑星惑星アクールと第5惑星ブレーナム


その2連星の中間地点にある安定点ラグランジュ・ポイント

シルキスタは、そこにある星系ポートに到着した。


第4惑星は陸地が1割ほどの海洋型惑星。


第5惑星は陸地が4割の分類としては、こちらも海洋型惑星か?


「まずは、第4惑星ですね マグカさん、よろしくお願いします」





惑星アクール


居住区の殆どは海中都市だ。


海上都市は、太陽光を遮って植物プランクトンの活動を妨げるので作られていないらしい、その辺はファーミーティアと似ている。


マグカさんが説明してくれる

「この惑星の基幹産業は基本的に魚介類などの天然食材資源の採取と養殖が殆どだ、

一部に真珠やサンゴなどの天然宝飾品も産出される」


「なるほど」


「また、9割が海洋の為、年間を通してほとんど気温の差が無い、

惑星の経度で大体の気温が決まるから、

自分に合った気温帯で見合いをしてもらえば良い」


「そう来たか」


「それに、マリンレジャーに関しては、ありとあらゆる準備をしてある。

よほどマニアックなレジャーでも対応しよう」


「ミーシアさん、さっきから一緒に降りたはずのカレナさんを見ないんだけど?」

「カレナさんなら、さっき魚介類の買い付けに行きましたよ」




次は第5惑星か


第5惑星は陸地が4割の分類としては海洋惑星なんだが・・・

ギフカスさんが説明を始める、なぜか白衣姿だ


「ブレーナムは牧畜と畜産の惑星、しかも標高差が大きいから。

ありとあらゆる産業動物が飼育可能なんです」


「ありとあらゆるですか?」


「はい、しかも中央の研究機関で飼育環境や情報を集約していますので、

産業動物以外の新しい動物の飼育に挑戦する事も可能です」


「アニマルセラピーや、今では希少になった乗用動物体験、それに標高差を生かした

山岳部レジャーやウインタースポーツはいつでも可能です」


何故だろうか、どちらの惑星もで言えば高級リゾートホテルが誘致出来そうなんですが?


「ミーシアさん・・・・」

「カレナさんなら、チーズと食用タンパクの買い付けに小型宇宙船を借りてきて

どこかに行きましたよ」






ファクマス星系 第4惑星 ネウ・ホパリア


マグカさんとギフカスさんに

ミーシアさんが説明してくれる。


「この惑星には、現在約40億の人間が住んでいますが。

入植がはじまってやっと1年、住居や最低限のライフラインの

整備が終わったところです。

開拓を開始しましたが、ほとんど手つかずなのが現状です」


「そして、この惑星の一番大きな問題は男女比です。

以前住んでいた惑星の高温化が原因と言われていますが。

現時点での人口比は1対3、男性1人に対して女性が3人

大げさに言うと男性10億人と女性30億人の惑星です。」


「実際には、40億人分の人と物資を動かす為に連邦中の資本が

ここに投入されていますので、

数億の男性の流入と女性の流出が、すでに起きています。

まあ、それでも1対2.5といったところですが」


「この惑星の海の生態系も山野生態系も、

 まだ生まれたばかりで調査が必要です。

 大事に活用していかなければいけません

 せっかくのアースライさんからのプレゼントなんですから」


そうして、ブランシェは


ネウ・ホパリア⇔ファーミーティア以外に


ネウ・ホパリア⇔アクールとネウ・ホパリア⇔ブレーナムの定期航路が誕生した。


しかし、さすがのブランシェでも、この3往復の移動だけで6週間を要するため


2ヶ月に一度の往復となったのは言うまでもない。


そして・・・・






シルキスタ内 アースライ私室


両手が何かを掴んでいる感触がして、意識が覚醒する。

なんだろう、しあわせな気分だ。


『んっ』


この大きさ・・・大きい、この大きさはヴィオラだと思うが、何か違う気がする。


瞼を開けると・・・白い髪?


「ブランシェ? なんで(ここに)居るの?」


あっ? ブランシェが目に涙を溜めている


「いや、ごめん、違うから、ここにいて良いから。お願いだから泣かないで」


必死になって、ブランシェをなだめました。


「ルジュ、もしかして、またやっちゃった?」


『ブランシェから状況は少し聞いています。全てがマスター責任では無いですが、

 半分位はそうですね』


「気になるんだけど、後の半分って何かな?」


『ブランシェの精神安定上、ブランシェはマスターとしばらくの間、同行するのが望ましいのですが?』


「そうだね、一緒に行こう」


『それでしたら、後の半分もと思いますよ』


「そうなんだ、よく解らないけど、一緒に行くよ」


そうして、僕はブランシェと一緒に動く事になったのだが・・・




ミーシアさんが何か信じられないモノを見る眼でこっちを見ている。


「アースライさん、本当にんですか?」


「そのつもりだけど、ミーシアさん・・・どうかした?」


「ごめんなさい、私はシルキスタにいますから」


   ・・・・どうしたんだろう?






ネウ・ホパリアを出発する


花嫁候補1000人を連れて、みんなに見送られて・・・


・・・・ブランシェ、ごめん。僕が悪かった船を降りてもいいかな?




そっと、ドアのすき間から歓談用のラウンジルームの中を覗いた事を後悔した。


なんだ、あの張り詰めた空気は? 殺気の籠った眼差しは? 


そして、時折り聞こえるは?


こんなのが、一週間も続くのか?


僕は部屋に閉じこもって、ひたすら【第2種中型航宙船舶責任者】に取り組んだ


「ブランシェ、ごめん、つらかったね」


「マスター、女性の方が理性的ですよ」






1週間後、花嫁候補達を乗せたブランシェはファーミーティアに到着した。


まるで嘘のように表情で船を降りる女性達。


そして、入れ替わりにがやってきた。


身体から陽炎が立ち上っている。目は血走っていて、髪が逆立っている。


なんだ、あの生き物は? 皮膚を赤く塗って角を付けたら『星喰い』が完成するぞ。


花婿候補1000人との一週間はまさに地獄だった。


僕は、部屋に閉じこもって、


ひたすら【第2種中型航宙船舶操作】に逃げた。


確かに女性の方が理性的だった。





6週間後、アクール往復とブレーナム往復を終えた


僕は無事【第2種航宙船舶責任者】と【第2種航宙船舶操作】を


修了していた。






「ミーシアさん、最初にブランシェでファーミーティアに行った時は、

 あんな殺気立った雰囲気じゃ無かった気がするんだけど?」


「こちらも最初の1000人は厳選しましたから。プラグレイさんも最初の1000人を選ぶのにかなり苦労されてましたよ」


「兄貴がですか?」


「ええ、弟の顔を潰す訳にはいかないって、必死になって頑張ってました」


「兄貴、そうやって気を廻すところ相変わらずだな」


「その辺は兄弟そっくりですね」





「ところで、ミーシアさん。このままだとブランシュの心理的負担が大きいんですが

 何か対策はありませんか?」


「そうですね? 男女関係なくコクーンで運べば大人しくなりますが?」


いけない、1000人がコクーンに入れられてクルクル回る映像が頭に浮かぶ。


「もうすこし穏便な方法で、せめて男性だけでも大人しく出来ればいいんですが?」


「それでしたら、心理的に大人しくして頂きましょうか?」


「心理的にですか?」


ミーシアさんがニッコリ笑って。


「ファーミーティア、アクール、ブレーナム、それぞれの船内での映像を

別の相手ライバルに見せるんです。

相手への対抗心で、それぞれが大人しくなると思いますよ」


他所の惑星に負けたく無いから、大人しくするしか無いのか。


「いいですね、次からはソレで行きましょう」


これで、安心してブランシュを連れて行ける。





「ブランシュ、これから一緒にアルファ1に行こうか?」




※厳密に言うと第5惑星ブレーナムは牧畜と畜産の惑星になるのですが

語呂が悪いので牧畜と記載させて頂きます。

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