第39話 騎士の失態

惑星ネウ・ホパリア 軌道上 ブランシェ制御室内


「ブランシュ、これから一緒にアルファ1に行こうか?」


『マスター、アルファ1にですか?』


「君のコクーン内に保護しているノーチェを、向こうにあるクリサリスの

 メンテナンスエリアに連れて行きたいんだ」


《マスター、メルクから秘匿通信です。今夜は内密で依頼お願いがあるので、

 出発は明日にして欲しいそうです》

 ルジェからイメージが送られて来るのは久しぶりだな。


、出発してもだいじょうぶかな?」





そうして深夜、メルクからメッセージが来た。


≪アースライ、実は、皆に内緒でを取ってきて欲しんだ≫


「ん、メルク。いいけど、どこにいけば良いの?」


≪場所の情報はルジュに送ってある。それを見れば何故内緒なのかもわかるよ。

 すまないけど私の所に持って来てくるかな?≫


「よく解らないけど? 行って来るね」


≪ああ、頼む≫


「ブランシェ、メルクの指示でちょっと出るけど。みんなには内緒にしてね?」


『承知しました』






ルジェの指示通りに移動すると・・・


惑星ネウ・ホパリアの、まだ開発もしていない平原のど真ん中に着地した。


「ルジェ、見た所何も無いけど、本当にココでいいの?」


『はい、ここです。、マスターはちょっと待ってくださいね』


しばらくすると、地面から、30cm程の石が現れた、あるモノに良く似た形だ。




「・・・ルジェ、よくわかった。


出てきたモノを抱えて、真っ直ぐに機動衛星メルクの所に飛ぶ


「メルク、持ってきたよ」


≪ああ、ありがとう。助かったよ≫


を床に置くと、機動衛星の格納庫の床にめり込むように消えて行った。


「メルク、今の石って・・・・・・・だよね?」


≪ああ、この惑星ネウ・ホパリアのテラフォーミングが完了したとログが来たのでね。

 休眠状態のエッグを今のうちに回収して貰ったんだ≫


「エッグって、使い捨てじゃ無かったの?」


≪使い捨てでは無いんだが・・・・・再使用に数百年かかる≫


「メルク、って・・・どういう事?」


≪私がエネルギーチャージと修復を行えば、およそ1年で再使用が可能になる≫


「メルク~」


≪わかっていると思うが、騒がれたく無かったらコレを回収した事も内緒だからな≫


もちろん、奪い合いで戦争が起きるとか、さんざん言われたからね。


「こんな面倒なモノは、実際に必要になるまで忘れる事にするよ」


≪それは、賢明な判断だ≫






ブランシェとシルキスタの準備はよし。

僕と、ミーシアさんと、カレナさんも準備OK


「それじゃあ、これからアルファ1に向かいます」


「アースライ君、ちょっと良いかな?」


珍しいな、フードクリエイターに掛かりきりのカレナさんか?


「なんでしょう?」


「いや、私もアクールとブレーナムから持ってきた食材で色々試してたから

 すっかり忘れてたんだけど」


「はあ?」


「君、ガルチノアに婚約者アリシア置いて来てるけど・・・いいの?」


頭から血の気が引いて、全身から汗が噴き出す、目の前がチカチカしてきた。


忘れてた・・・いつからだ?


「アブリム星系に向かってから、もう2ヶ月くらい経っちゃってるけど?」


ルジェが【現】で現れた。


『マスター、強度の精神負荷がかかっています』


「ごめん、ブランシェ、シルキスタ、すまないけど

 至急急いでガルチノアに向かってくれるかな?」


「アースライ君?」


「なんでしょう、カレナさん」


「一緒に謝ってあげるわ」


晴れやかな笑顔で言い切られた・・・


アリシアをガルチノアに残したのですよね?


これは完全に逃げるつもりだな。


「ありがとうございます、です」


「それと、さすがにもう御座船でステラファスに帰ってると思うよ。

 これから向かうならステラファスじゃないかな?」


「冷静に考えるとそうですね。ブランシェ、シルキスタ、

 大至急なるべく急いでステラファスに向かおう」






【アースライ】


それは、、突然の出来事だった。


ブランシュに搭乗してシルキスタと共に連続転移で先を急ぐ

転移性能が劣るシルキスタに合わせる為、4光年の連続転移になる。


その何度目かの、転移直後・・・


突然、ブランシュの周囲が真っ白に染まり、ブランシュが


「ブランシュ、一体何が?・・・・・・・・・・」






【ガルチノア星系所属 大型戦闘艦 ガルチノアス 戦闘指揮指令室】


「やったぞ、儂はぞ」


老人の哄笑が戦闘指揮指令所に響く


「儂が仕掛けた罠にかかるとはマヌケな奴め」


『対艦攻撃衛星 アルタ 目標に直撃を確認』

『対艦攻撃衛星 ベンド 目標に直撃を確認』

『対艦攻撃衛星 セムナ 目標に直撃を確認』

『対艦攻撃衛星 ダジル 目標に直撃を確認』


「いや、儂の強運を誇るべきかな」


老人の耳障りな哄笑が、今一度響きわたる


「大型であろうと所詮は

 しかも転移直後ならば防御に廻すエネルギーもあるまい。

 そこに4基の対艦攻撃衛星の直撃だ

 これならば、あのであっても墜とせるはずだ」


「会長、そろそろ撤退準備を、他の2ヶ所の撤退作業もありますし

 この場を他の宇宙船に見つかるとマズイです」

側近が声を掛けるが・・・・


「バカモン、儂に逆らったヤツの欠片も残すな、破片にもう一度攻撃せよ」


「・・・承知しました、各、対艦攻撃衛星に再度攻撃を指示しろ」


『対艦攻撃衛星 アルタ 目標のを確認』

『対艦攻撃衛星 ベンド 目標のを確認』

『対艦攻撃衛星 セムナ 目標のを確認』

『対艦攻撃衛星 ダジル 目標のを確認』


「な、な、な、なんだと? そんなバカな・・・・」






【アースライ】


「ブランシュ、一体何が起きたの?」


『マスター、待ち伏せアンブッシュですね。

 天頂方向を含め4方向からの攻撃を受けました』


「シルキスタは? 被害は?」


『どちらも被害はありません、落ち着いて下さい。マスター』


「ごめん、びっくりした」


また、周囲が真っ白になって、揺れた。


『待ち伏せ用の固定砲台クレモアの様ですね。

 の攻撃では被害は受けませんが、

 のでシルキスタに反撃させてもよろしいですか?』


「最近の宇宙海賊船団バンディッツは物騒なモノを持ってるんだね。

 襲撃された事を連邦軍に説明しないといけないし、

 原型を留める位で攻撃出来るかな?」


『エリアガンの出力を30%程に絞れば大丈夫でしょう』


「じゃあ、エリアガン出力30%で反撃をお願い」


『シルキスタ、マスターからの指示よ。エリアガン出力30%

 目標、4つの固定砲台クレモアを含むエリア』


『マスター、気を付けてください。モニターは調整しますが、

 さっきよりまぶしいかもしれません』


 ブランシェの周囲がに覆われた。






【ガルチノア星系所属 大型戦闘艦 ガルチノアス 戦闘指揮指令室】


『対艦攻撃衛星 アルタ 目標に直撃を確認』

『対艦攻撃衛星 ベンド 目標に直撃を確認』

『対艦攻撃衛星 セムナ 目標に直撃を確認』

『対艦攻撃衛星 ダジル 目標に直撃を確認』


「撃て、砕けるまで、撃て」


「会長、対艦攻撃衛星は連続使用するようには出来ていません。

 3発も撃てば2時間はインターバルが必要です」


その時、モニターが真っ白に塗りつぶされた。


『対艦攻撃衛星 アルタ 沈黙』

『対艦攻撃衛星 ベンド 沈黙』

『対艦攻撃衛星 セムナ 沈黙』

『対艦攻撃衛星 ダジル 沈黙』


「何があった? 一体何が起きた? 攻撃衛星は? なぜ反応がない?」


「分析官、状況を報告」


「主任分析官です、目標を中心に直系約1000kmの範囲限定で

 高エネルギーにより空間ごと焼き尽くされたと思われます」






【アースライ】


『マスター、固定砲台クレモア沈黙しました』


「ありがとう、ブランシェ、シルキスタ。連邦軍に通報をお願い」


『了解しました。ところでマスター、近くに大型艦を発見しました』


宇宙海賊船団バンデッツかな?」


『いえ、ガルチノア星系所属 大型戦闘艦 ガルチノアスです』


「ああ、連邦代表会議で行った、あの惑星か。それなら挨拶をしておこう。

 ブランシェ、向こうと通信を繋いでくれる?」




【ガルチノア星系所属 大型戦闘艦 ガルチノアス 戦闘指揮指令室】


「会長、ステラファス所属ブランシェから通信が入っていますが?」


「・・・・・・・・」


「会長、繋ぎますよ」


『すみません、こちらはステラファス王家所属の医療拠点艦ブランシェ、

 責任者のアースライ・グランクラフトといいます。

 お騒がせして、申し訳ありません』


「ああ」


『どうやら、ここに固定砲台クレモアが仕掛けられていたみたいなので無力化しました。

 最近の宇宙海賊船団バンディッツはこんなモノを持っているんですね。

 今、連邦軍を呼んでいます。』


「ああ」


『そちらは、ガルチノアの宇宙船なんですね。

 そちらの惑星には何度かお邪魔したのですが、

 代表には一度も会えずじまいでして。

 一度ご挨拶に伺おうと思いますので、よろしくお伝えください』


「ああ、こちらからも伝えておくよ。

 では、急ぐので失礼する」





「総員撤退する、ステラファス王家には二度と関わらない」






固定砲台クレモア・・・こんな言葉はありません、完全な造語でっち上げです・

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