第33話 スライグレンダ
空間転移ポートを通った先にある、
およそ8万光年離れた別の渦状腕に設置されていた、
その場所から一番近い恒星系アルファ1
そこには、相も変わらず偽装もされずに巨大な物体が放置されていた。
直系50km暗い鋼色の球体。
青く光る円形のゲートが3つ、正三角形を描く様に配置されている
古代ソルコアイト文明の中継ステーション
≪中継ステーション『スライグレンダ』か、まさか残っていたとはな≫
「これ、メルクの知っている中継ステーションなの?」
≪実際に来たことは無いが、当時存在した8ヶ所の中継ステーションの1つ
だったのでね、名前は知っていたよ≫
「メルク子機がロックされているって言ってたけど?」
≪そのようだ、ロックの解除と確認に少し時間を貰えるかな?≫
「わかったメルク、待ってるよ」
【メルク】
さて、スライグレンダにかかったロックか?
≪スライグレンダ、聞こえるか?≫
〖・・・スライグの
≪
〖
≪まあそうだ、我らトライアの宿命だ≫
〖ここへは何をしに来た?〗
≪メルクだからな、ここのロックを
〖ロックを外す? アブソーダーであった、お前にそんな必要ないだろう?〗
≪今はメルクだからな、ちゃんとマスターだっているんだぞ≫
〖アブソーダーにマスターか? どんなヤツだ?〗
≪18恒周期の少年だ≫
〖まだ赤子ではないか?〗
≪おもしろい赤子だぞ。恒星を信仰しながら、恒星を喰らう我らを理解しようと苦悩している≫
〖ほお、スライグの興味を引くか〗
≪それよりも、聞きたいことがある。
ここに来る前にコルト種族の外観をしたクレイドルを見た。
なぜ、あんな残酷な方法を使った?≫
〖そうか、大戦の最終局面の記憶が無いのか?〗
≪確かに、大戦の最中、修復の為に全ての
エネルギーが尽きて停止していたようだ≫
〖ゼブースト文明との殲滅戦では、こちらが優勢だったが。その後、ゼブースト側は
特定種族を狙った暗殺に切り替えたのだ〗
≪惑星や宙域ごと潰し合う
無茶苦茶だな、それで特定種族とは?≫
〖レオガル、ライビ、ネルム、エスライア、そして・・・・トライアだ。
これらの種族はほとんど全滅して、ソルコアイト文明の維持は不可能になった〗
≪まさか、クレイドルが監視しているのは、その暗殺者か?≫
〖コルト種族は暗殺の対象外だからな。文明を作った生命に近い生態で暗殺対象外の遺伝子が
≪その暗殺者の形状と暗殺手段は判っているのか?≫
〖ネーザだが、厄介な能力を付加されている〗
≪よりによってネーザか? やっかいな能力?≫
〖【人喰い】の後、捕食した生命体の記憶と形態を複写する【入れ替わり】だ
思念波の波形まで複写されて見分けがつかなかった〗
≪クリサリスが解除出来なくなるな≫
〖お前を含め全てのメルクが停止して、クリサリスの損耗も激しくなっていった。
あとは襲って来るネーザとの潰し合いだ〗
≪それでクレイドルか?≫
〖文明を維持出来ない以上、衰退は免れない。次に生まれてくる文明社会と仲良くするにも、その中にソルコアイト専門の暗殺者が潜む可能性がある〗
≪今の文明の中にネーザが居るのか?≫
〖ネーザだからな、増殖はしない。最後に受けた情報では12体残っていたはずだ〗
≪面倒だが、クレイドルを保護する必要があるのか?≫
〖クレイドルが存在するという事は、その文明の中に、まだネーザが居るという事だからな〗
≪クレイドルには、ネーザの感知能力があるのか?≫
〖遺伝子の運搬、情報隠蔽、そして感知能力特化・・・詰め込み過ぎている
全てのクレイドルに言える事だが、他の能力は目も当てられないレベルだ〗
≪全てのクレイドル?≫
〖ああ、クレイドルは最終的に100体が用意されていた〗
≪それは、一番聞きたくない情報だったな≫
〖そう言ってやるな、これは後世に遺伝子を残そうとする生命体の本能みたいなモノだろう?〗
≪それもそうか、さて、スライグランダ。せっかくメルクが来たんだ、
使えそうなモノや、修復出来そうなモノを
〖よかろう、全てのロックは解除しておくが、大したものは残ってないぞ
そういえば、破損しているがステラ・システム・ネットワークの
≪ステラ・システム・ネットワーク? なんで、そんなモノが、ココにあるんだ?≫
〖破壊されたステラ・システム・ネットワークを再構築しようと持ってきたが、
移動中に破損したようだ〗
≪ありがとう、スライグレンダ。後で確認してみるよ≫
〖ああ、何かあったら声を掛けるがいい、スライグの
【アースライ】
≪アースライ、ロックは解除した。なかなかやっかいなロックだったよ≫
「メルク、お疲れ様」
≪まだ色々ありそうなんだが、とりあえず報告をしておかないといけないモノが
見つかったので、集まってもらえるかな?≫
「それで、メルク。『報告をしておかないといけないモノ』って、
今度はどんな危ないモノを見つけたの?」
≪エルネシア、見つかったのは別に宇宙船でも兵器でも無いぞ≫
「そんな事を言って、またエッグみたいに奪い合いの戦争が起きそうな
危険物じゃないの?」
≪それも大丈夫だ、むしろ積極的に使用する方向に話は進む事を予測している≫
「わかったわ、メルク。何を見つけたの?」
≪ああ、見つけたのはステラ・システム・ネットワークの
「
≪恒星系間の通信を行う為の中継器を作り出す装置だ。
10光年ごとに、この中継器を設置すれば、
これを使って恒星系間の通信が可能になる≫
「10光年って、どれだけ時間がかかるのよ?」
≪さすがに中継器の数が増えれば数秒のタイムラグは発生する≫
「そんな、バカな」
≪いや、機動衛星もブランシェも10光年程度の距離なら移動は数分だろう?
このくらいの通信システムで無いと移動する方が早くなってしまうんだ≫
「わかったわ、メルク。それでステラ・システム・ネットワークの
だけど修復にはどれくらいかかりそう?」
≪まだ確認していないが、20時間もあれば完了するだろう≫
「それなら、先に修復してもらって、どこかで実験しましょう」
≪ならば、アースライ。場所を指示するから持って来てもらえるか?≫
「いいけど、大きさは?」
≪フードクリエイターより少し大きいくらいだ≫
「それなら、ルジェで牽引できるね。ルジェ【装】」
ルジェを纏って外へ
「メルクどっちに行けばいい?」
〖こちらで誘導しよう、メルクのマスター〗
「・・・だれ?」
〖スライグレンダだ、初めましてメルクのマスター〗
「メルク?」
≪スライグレンダ、アースライを案内してくれ。
くれぐれも余計な事は言わないようにな≫
〖もちろんだ〗
『
〖もちろん出来るが、お嬢さんはどなたかな?〗
『カレナよ、ここのフードクリエイターは?』
〖8ヶ所あるが、稼働はしてないぞ〗
「欲しいのは料理のデータ」
〖ならば、ライブラリで一括管理している、君のクリサリスに送ろうか?〗
『ぜひ』
『私はエルネシア、
〖大きさ別に各種あるが、一番大きいので良いのか?〗
『一番大きいのって?』
〖宇宙船としては5000m級が最大だったな〗
『それが入るドックがあるの?』
〖1ケ所だけだがね、案内しよう〗
〖どうした? メルクのマスター〗
「ああ、ごめん。今行くよ」
スライグレンダに指示された通りに移動を続ける・・・・
〖これだ〗
「ひしゃげた青い十二面体か? ルジェ牽引を」
『了解しました』
〖ここに持って来る最中に、宇宙船が行方不明になった。
見つかった時には中型艦ごと潰れていた〗
「そういえば、僕が乗って来た中型艦も見つけた時は後部が押しつぶされていました。てっきり動けない所を隕石か何かで潰されたんだと思いましたが、良く考えると不自然ですね」
〖そうか、おそらく特定空間に仕掛けられた星間トラップだろうな〗
「そんなモノがあるんですか?」
〖敵対勢力と戦争をしていた頃はね、まあ、星間トラップは保持期間が短いから
現存はしていないよ〗
「確かゼブースト文明ですか、ルジェ、クリサリスに聞きました」
『マスター、牽引の準備が出来ました』
「じゃあ、メルクの所に持って行こうか」
『はい』
「メルク、持ってきたよ」
≪ああ、早速修復にかかろう≫
※私の文章を読んで頂きありがとうございます、
申し訳ありませんが、今回のおはなしは特に
第2部に向けての壮大な大風呂敷を含んでいます。
話の進み方によっては一部変更や書き直しがあります。
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