第32話 連邦代表議会 出頭命令

推進剤補給宙域ガス・エリアの整備がやっと終わった。


「ルジュ【かい】」


「それじゃあ、ルジュ、シルキスタ、おやすみ」

『おやすみなさいマスター』

『おやすみ、マスター』




右手に感じるやわらかい感触で、ふと意識が覚醒する。

いけない、最近はコレに違和感を感じなくなってきている。


『あっ』


右手を柔らかいモノから離そうとするが、

僕の右手は相手の両手で柔らかいモノに押し付けられているようだ。


それに、この大きさ・・・ルジェとシルキスタの中間くらいか?

おそるおそる瞼を開ける・・・


「ミーシアさん?」


いや、チェリムか? ミーシアさん、痩せてる印象がありましたが・・・

十分ですね。


「チェリム? その手、やめてもらっていいかな?」


僕の右手はチェリムの左胸に押し付けられている。

柔らかい感触に頬が緩むのを必死に抑える。


チェリムは何も言わずに、左胸に押し付けるのをやめて、

今度は右胸に押し付けた。


「いや、左をやめて右って意味じゃ無いから。手を放してくれる?

あと、服着て、お願い」


『マスターの体温が上昇しています。調整しますので横になってください』


「そんな事をしたら、もっと上がるからやめて」


『ご安心ください。その場合は、ルジェとシルキスタと私の合同で

 責任を持って調整添い寝します』




と朝から色々あったが・・・

遂に連邦代表会議への出頭命令が出た。


『ステラファス王家所属 アースライ・グランクラフト


 ファクマス星系第6惑星に付近における

 機動衛星の兵器使用について

 緊急連邦代表会議への出頭及び説明を求める

              


ガルチノス星系 主星 ガルチノア

  出頭日時 連邦歴 ** **月 **日      』




日付は3ヶ月後か?


≪アースライ、ガルチノス星系は3ヶ月後で良いのだろう?

 それならアルファ1に行かないか?≫


「メルク、もう移動出来るの?」


≪ああ、しかも専門家とやらが機動衛星の修復に数年などと答えてくれたおかげで

 少々、機動衛星が行方不明でも問題無さそうだ≫


「アルファ1の中継ステーションも放置したままだからね、行こうか?」




ブランシェ制御室


エレネシアさん、アリシア、セシリアさん、ミーシアさん


「そう言う訳で、まずはステラファスに戻ってから、

 王宮に今回の出頭命令の件を報告して、アルファ1星系に向かう予定です。

 あの中継ステーションの調査と、できれば近隣星系の調査を行うつもりです」


「ようやく行けるのね」エレネシアさんは嬉しそうだ。


「向こうで、カレナさんとメレ王女にも声を掛けるつもりですが、

3月後には連邦代表会議出席の為、ガルチノア星系に行かなければならないので

探索期間は自ずとその期間になります」


「それでも2ヶ月近く、あの中継ステーションを調べられるのよ」

「アースライ、もちろんついて行くからね」

「当然です」

「もちろんです」


「それでは、明日、ステラファスに出発しましょう」




【リリノ・グーシー】


第6惑星付近での推進剤補給宙域ガス・エリアの整備も終えて、

第4惑星の宙域外れで時間借りした整備ドックの中で

ネウ・マッド・グーシーの整備も完了した。


推進剤補給宙域ガス・エリアの整備費用も値切られる事無くキッチリ振り込まれている


しかも、何か理由をつけて騎士様に近づける立場にいる。


「なんせ、一緒に仕事をした同僚よ。いわば、姉弟。

 ああ、こんなに幸せで良いのかな?」





NNN ネウ・ホパリア・ネットワーク・ニュースです。


只今、速報が入りました。


先だっての第6惑星における機動衛星の兵器使用について、

連邦代表会議から騎士アースライに対して説明を求める出頭命令が出されました。


それを受け、騎士アースライは本日、所属国家のあるステラファス星系へと

帰還の途につきました。


騎士アースライから、局にメッセージが入っています。


『ネウ・ホパリアのみなさん、おさわがせして申し訳ありません。

人命に関わる事態に対処する為とはいえ、連邦代表会議での

約束を破って兵器を使ってしまったのも確かなので。

向こうで謝ってきます。

しばらく留守にしますが、心配しないでください』





「・・・騎士様?」




ステラファス星系


ステラファス王宮 いつもの会議室


「騎士アースライ、只今もどりました」


スタスタスタ・・・ポスッ 「騎士様」

メイ王女が抱き着いて来た。


「メイ、婚約者の前で・・・・」

「アースライ君、これは、どういう事かな?」

アリシアの言葉を王様が遮る・・・


「メイ王女、男性にいきなり抱き着いてはいけませんと説明しましたよね?」

「は~い」

良かった、離れてくれた。


「それに、メイ。アースライ君はアリシアの騎士で婚約者だよ」

「お父様が、もうステラファスの騎士でいいかって言ってたから。騎士様で大丈夫」

その言葉に王様がたじろぐ・・・


「・・・いや、でも、婚約者だよ」

「じゃあ、メイも婚約者にしてもらって、ベッドで可愛がってもらう」


「・・・・・皇太子エドワード、すぐにニードルと連絡を取れ」


「父上、そんな暗殺者組織1000年以上前に無くなってるから」


「い~や、まだあるはずだ。そして、今、必要になった」


「王様、僕にそんな事実は絶対にありませんから。物騒な事は言わないでください」


バンッ 


エルネシアさんがテーブルを強く叩く


「カレナ、メイ、あの転移ポートの向こうで見つけた中継ステーションを調査に行くけど、あなた達はどうする?」


「あの大きさ、フードクリエイターどころじゃ無さそうね。もちろん行くわよ」


「私も行きたい・・・良いでしょうお父様?」


話は簡単に決まった。


「ところでアースライ君、連邦代表会議だが、ガルチノアは、どうやらまた大型艦と対艦衛星の見本市をやるつもりのようだぞ」


皇太子エドワードさんが教えてくれた。

そういえば、名前を聞くのも初めてかもしれない・・・


「機動衛星は修復中ですし、シルキスタかブランシュの譲渡が目的でしょうか?」


「いや、おそらく賠償金だと思うよ」


「賠償金ですか? そんなに持ち合わせは無いですが?」


宇宙海賊船団バンデッツの報奨金と騎士の特別助成金だけだ。


「ああ、しかし、一部では君は、ファクマス星系政府から膨大な金銭と利権を手に入れたと思われているようだ」


「・・・受け取ってませんけど?」


「ステラファス王家も君に年額の特別助成金以外は支払って無かったから

 ファクマス星系政府からの問い合わせがあるまで失念してた」


「困りましたね、賠償金を請求されるんですか?」


あれっ、エルネシアさん? また、あきれた顔でどうしました?


「アースライ君、次の連邦代表会議の時なら機動衛星メルクの修復なんて

とうに終わってるわよ」


「・・・そうでした。すっかり忘れてました」


「ガルチノアは、また同じ事をやってしまうわけか・・・」

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