第31話 償い

ファクマス星系 第6惑星ガスジャイアント付近


「シルキスタ、ポイント00291-33454-00551

ガス溜りを見つけた。こっちにガス収集ポッド2機廻して」


現在、僕は労働にいそしんでいる


『マスター了解です、しばらく、その場で待機してください』

「了解」


機動衛星メルクが、盛大にバラ撒いた惑星表層ガスを搔き集めて


推進剤補給宙域ガス・エリアを作っている。


『ブランシュ、ポイント10439ー77952-11315

大きいのがある、ポッド4つ廻して』


婚約者殿アリシアにも手伝って貰っている。


『こちら、ネウ・マッド・グーシーだ、ブランシュ、ポイント20029ー33080-66929、ガス溜りだ。ポッド3個でギリいける』


ガス採取業者リリノさんにも手伝って貰っている。


なぜ、こうなったかと言うと・・・説明は簡単だ


機動衛星メルクの構造体の大半が吹き飛んだと同時に・・・・・・・


イシュメラーナから積んで来たも消し飛んでしまったからだ。


建設作業機器の損害を計算したら、小型宇宙船マッド・グーシーが誤差に感じるくらいの金額だった。


ところが、ファクマス星系政府がコレを支払うと言い出した。


当然、断ったが向こうも引かず、たどり着いた着地点がこれだった。


機動衛星を吹き飛ばした時に、あのガスの奔流は粗方消し飛んだはずだけど。

メルクの計算では、それでも集めれば規定サイズの推進剤補給宙域ガス・エリア

5か所分くらいは出来るそうだ。


なので宇宙海賊船団バンディッツの懸賞金から小型宇宙船の費用を出して

宇宙船を失ったガス採取業者リリノさんにも手伝って貰う事にした。


男の子と間違えた事は、で許してもらおう。


収集ポッドが2台到着、目の前でガスを集めている。


「シルキスタ、収集ポッドがガス収集を開始した。次のポイントに移動する」


『了解しました。マスター、お気を付けて』




【リリノ・グーシー】


どうしよう、騎士様に宇宙船を買って貰っちゃった。


これってどういう意味? 


この宇宙船で俺についてこい・・・かな?


※注:小型宇宙船に転移装置はありません、それとアースライの一人称は僕です。


ごめんね、おじいちゃん。


せっかく継いだグーシー開発だけど、会社は近いうちに畳む事になりそう。


あたし、幸せになるから向こう側で応援してね・・・おっと


『こちら、ネウ・マッド・グーシー。ブランシュ、ポイント20035ー331080-60318、ガス溜りだ。ポッド2個送って』


『こちらブランシュ。ポッド2機送りました。到着までそこで待機してください』


『了解』




【アースライ】


突然、メルクから連絡があった。


≪アースライ、ちょっと気になるモノを見つけた。相談したいので、エレネシアと一緒に機動衛星まで来てもらえるかな?≫


どうしたんだろう? ブランシェに居るエルネシアさんに連絡を取る


「エルネシアさん?」

『私の方にもメルクから連絡があったは、気になるわね行ってみましょう』






機動衛星(修復中)


≪二人とも、呼び出してすまない≫

「いや、でもエルネシアさんにも声を掛けたなら遺跡文明関連の話かな?」

「そうなの、メルク?」


≪そうなるな、実は遺伝情報を見つけたんだ。ソルコアイト文明につらなる種族のね≫

「・・・遺伝情報って、いったい何処でなの?」

連結太陽炉タリスマン以外、何か見つけたっけ?」


≪見つけたのは、アウタセルの中にあったコクーンの内側だ≫


「あれ・・・リリノさん以外使ってないよ」


≪彼女は、ソルコアイト文明に連なる種族、コルト種族の子孫のようだ≫


「どんな種族だったの?」


≪褐色の肌が特徴の小人種と言われる種族だな≫


「メルク、ちょっと待って? 小人種が特徴じゃ無くて、褐色の肌が特徴なの?」


≪ソルコアイト文明圏には小人種だけで9種類が所属してたからな≫


頭の中で、赤い凶暴な星喰いと黒兎の女の子ノーチェ、それにポージングを決める兄貴ネーデレス

9人のリリノさんが浮かぶ。


「ソルコアイト文明圏って・・それで・・・どうしたの?」


≪いや、小人種の個体は惑星上での生活には支障がないんだが、

宇宙生活での生活に重大な問題が発生する場合が多かったのだ、

念の為ブランシェで検査をした方がいいぞ≫


「・・・どんな、問題かな?」


≪元々、ただでさえ骨格への負担が小さい種族が、

宇宙空間で、さらに負担を減らす事になる。

この種族が長期間、高いGにさらされると、突然、意識を失うんだ≫


「一人で、宇宙に出ているリリノさんには最悪の事態だな」


≪初期症状としては、急激な筋力の低下が起きていた≫


「今回、そのまま当てはまる気がするんだけど?」


「まずいわよ、アースライ君、リリノさんは、あの岩塊と一緒に星系外から1ヶ月以上高いGに晒されてきてるはずよ」


「ルジュ、ブランシュに連絡して。リリノさんをコクーンに入れて検査するように」

『了解しました』


「じゃあ、メルク、ちょっとブランシェに行って来る」





ブランシュ


「ブランシュ、リリノさんは?」

『マスター。リリノさんんは、コクーン内で検査中です。

 情報の解析に、おそらく20時間程度はかかると思われます』


あれっ? セシリアさん、どうしてそんな疲れた顔をしてるの?


「リリノさんが、コクーンに入るのを嫌がって大変だったの」


「嫌がったんだ?」


『マスターに裸でコクーンに入れられたのがトラウマになっているみたいですね』


「まさかの、ぼくのせい?」


『大丈夫です、マスター。コクーンに入るのを嫌がる患者には慣れてますから』


「ブランシュ、頼もしいね。よろしく頼むよ」


『おまかせください』




そして、翌日


ブランシュの制御室には僕とエルネシアさんが呼び出された。


「どうしたの、ブランシュ?」


『メルクの指示です。リリノさんはコクーンの中で眠っています』


≪すまないが、そう指示した。リリノ本人にも教えるのを躊躇ためらうような想定外の検査結果が出てしまった≫


「コルト種族の末裔とかじゃなくてって事?」


≪アースライ、エルネシア、これはかなり危険な内容になるが大丈夫か?≫


「メルクが危険というからには、連邦の常識としては外れているという事かな?」


≪正直にいうと、私には、当時のソルコアイト文明人が何を考えて、この手法を取ったのか理解が出来ていない≫


「メルクがそこまで言うのか?」


≪私自身が君達の常識に引っ張られている可能性もあるがね≫


「わかった、覚悟をするよ。エルネシアさんも良いですか?」


「わかったわ」


≪まず、リリノの持つコルト種族の遺伝情報は外観形状を形成する為のサンプルだった≫


「サンプル?」


≪ああ、このサンプルを元に外観エクステリアを創り出すように設定されている≫


「設定? まるで人間じゃないみたいな・・・」


≪ソルコアイト文明人が、ある目的の為に創り出した人工生命体、それが彼女だ≫


「ある目的って?」


≪後に産まれる生物と文明に潜入監視して、体内に封印された遺伝情報の生命体を

復活させるタイミングを計ることだ≫


「封印された遺伝情報の生命体?」


≪レオガル種族、君達が星喰いと呼ぶ赤い皮膚の種族をはじめとする多くの種族だな≫


「あの種族を復活させるの?」


≪およそ、数百種の遺伝情報がリリノの中に封印されている≫


「リリノ自身は知らないんだよね?」


≪もちろんだ、そしてリリノの子供には、かならず女性が1人含まれていて

その子供に、外観と封印が引き継がれる≫


「なぜ、そんな事を?」


≪それについても同感だ、こんな危険で不確実な方法を使わなくても。

 遺跡品の中に、いくつか遺伝情報を封印しておくなり、もっと簡単な方法で後世に種族を残せたはずだ≫


「それじゃあ、リリノの身体は、問題無いの?」


≪コルト種族なのはだ、骨強度は標準以上にある。

 かなり筋力は不足していたが、これは単なる運動不足だった≫


「リリノ~」


≪この結果をリリノ本人に伝える必要も無いと思うが、どうだろうか?≫


「まあ本人も、いきなり君は人工生命体ですっ言われても困るよね」


「彼女が中に封印している遺伝情報に興味はあるけど、取り出せないの?」


≪ああ、あきれる位の厳重な封印が施されている。単なる外科措置位では

 存在すら確認出来ないだろう≫


「彼女に言う必要は無いでしょう。彼女も仕事を続けるだろうし

 それにガス採取業者の仕事、僕達のせいで、

 この星系ではあと100年は必要無いらしいよ」


≪彼女の体内の遺伝子の封印以外に非常に面倒な問題が発覚したんだが、

 アースライがリリノを連れて行かないなら問題無いな≫


「面倒な問題? メルクが、そんなに嫌がるなんて珍しいね」


≪リリノの外観設定等、人工生命体の基本的な技術はクリサリスの応用だった≫


「同じ技術体系ってことか?」


≪つまり、リリノにクリサリスは装着出来ない≫


本人の安全確保が出来ない上に、説明も出来ない・・・


「・・・面倒だね。何があっても絶対に連れて行くのはやめよう」





【ガルチノス星系 主星 ガルチノア】


ギダノ重工 会長室


「ファクマス星系の話は聞いたな?」


『ああ、連邦代表会議で出した、あの宣言を破ったそうだな』


『しかも、機動衛星は再起不能らしい』


『ステラファスを叩くには絶好の材料だな』


『しかし、今はファクマスに資本を集中させている最中だぞ』


『叩くのはステラファスだけだ』


『調子に乗った王国なんて物に、これ以上影響力を持たれても困るな』


『騎士はどうする?』


『責任は全部、あの騎士に負わせればいい、騎士の負債は王家の負債になる』


「もう一度、連邦代表会議の緊急開催だ。


表向きはファクマス星系での機動衛星兵器の使用


前回の連邦代表会議で有人星系での不使用宣言をしたにもかかわらず


無断で使用した、この行為について


弁明の機会を与えるからという理由で出頭させる。


このガルチノアに戦力を集中させて、約束を破った賠償をしなければ


敵とみなすと脅しをかける」


『えらく直接的な方法だが、大丈夫か?』


『向こうには機動衛星は、もう無い。心配あるまい』


『賠償とはいくら搾り取るつもりだ。これだけ儲けさせてもらった相手に可哀そうではないかね?』


『いや、他国に見せつける目的もある。今回こそ、ステラファスには見世物になってもらおう』


『また各企業大型艦の見本市だなこれは』


『こんどこそ大型艦だけでなく対艦衛星を並べても良いんじゃないか?』


「君らはガルチノアをまたハリネズミにするつもりかね?」


『連邦軍の主力艦隊でも逃げ出すのでは無いかな?』


『ますますステラファスが可哀そうになってきたよ。


 君達、さんざんむしり取った後は優しくしてあげなくてはいけないよ』


『もちろん優しくするさ、これだけ連邦の発展に貢献してくれるのだからね』


『何を言っているんだ。我々の企業に貢献してくれるの間違いだろう』


『結果は同じなのだから良いじゃないか


『確かにそうだが、あまりにもあからさまなのは困るよ、


マスコミがうるさいからね』


「何を言う、あれだけ恥をかかされたんだ。そのはキッチリ取り立てるぞ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る