第22話 お願い

そうして空間転移ポートを通ったブランシェは。


その8時間後には、王宮に到着して王様に報告を行っていた。


「8万光年か、とりあえず発表は出来ないな」


「あと向こうでクリサリス2個と船のジェネレーター1基を見つけたので


メルクに持っていって修復する予定です」


「そうか」


「それと修復後のクリサリスですが、1つはセシリアさんに渡す予定なのですが、


もう1つが・・・」


「私が貰うの」とメイ王女


「メイ王女、私も宇宙に出るなら安全の為に持っていた方がいいと言いましたが、


国王陛下の許可が無いとお渡し出来ませんよ」


「お父様、ダメかな?」


「メイ、危ない事はしてはダメだよ」


「ありがとう、お父様。大好き」


「それでは僕はこれからブランシェでイシュメラーナ星系に向かいます。


そこでクリサリスとジェネレーターの修復を行いますが


クリサリスは兎も角ジェネレーターの修復にかかる時間が不明です、


おそらく1~2ヶ月は戻ってこれないと思います」


「アースライ、私はもちろんついていくけど。


シルキスタは連れていくとして、後のメンバーはどうするの?」


「殿下が行くなら当然ついていきます。


向こうでシルキスタの修復をしてもらえれば


殿下について行けるようになりますし」とセシィが手をあげた。


「それなら私も行きたい」とメル王女が手を上げる。


「お父様良いでしょう?」


「気をつけて行くんだよ」王様・・・・・末娘に甘すぎでは


「私は、ここで空間転移ポートの向こう側のデータを検証しているわ」

エルネシアさん


「私はこっちでフードクリエイターでやる事があるから」とカレナさん。


こうして、メンバーが決まった。


「それじゃあ、イシュメラーナに向けて出発しようか」




【イシュメラーナ星系主星衛星軌道】


「こちらブランシェだ。イシュメラーナ星系政府。 


 機動衛星は今どこに行っている?」


「こちらイシュメラーナ政府、現在、機動衛星はファクマス星系で荷卸し中です」 


「ありがとう、そっちに行ってみる」


僕達はファクマスに向かった。


・・・・その時、


『こちら、イシュメラーナ星系軌道警備船だ。


 先ほどの超大型艦が転移後、即座に再転移していったが


 何かの転移事故だろうか?』


『こちらイシュメラーナ星系政府だ。


 あの艦は、そもそも3000光年を1週間で移動出来る時点で


 我々の理解を越えている。どうせ無事だ忘れろ』


   ・・・・・と、こんな事もあった。




【ファクマス星系第4惑星軌道】


「メルク、今戻った。すまないが修復をお願いしたい」


≪おかえりマスター、何が見つかったのかな?≫


「クリサリスが2個とジェネレーターだ。クリサリスの修復から頼む」


≪了解だ。機動衛星は今動かせないので持って来てもらえるかな?≫


「ああ、そちらに持って行くよ。


 アリシア、クリサリスの方をお願い。


 僕はジェネレーターの方を持って行くよ」


「分かったわ」


僕とアリシアはクリサリスとジェネレーター恒星炉と共に機動衛星メルクに向かった。




【機動衛星格納庫】


「メルク、久しぶり。すまないがコレの修復を頼む」


≪マスター了解だ。直ちに修復を開始する。


 今子機と記録を同調した、シルキスタは大変だったようだな≫


「ああ、でも恒星炉が修復出来れば一緒に動けるから大丈夫だろう」


≪いや、それだと今度はブランシェに問題が出るのではないか?≫


「しかし、僕1人移動するのに中型艦と超大型艦の両方を動かすのは


 少し問題があると思うけど?」


≪今回修復するクリサリスを含めても感応核は6個だからな、


 安定したネットワークを作るのは無理だと思うぞ≫


「メルクもそう思う?」


≪当分はマスターが感応核のケアをしながらになるだろうな≫


「やっぱり、そうなるか」


≪マスター、クリサリスはそれぞれ1時間程で修復可能だ。


恒星炉の方は修復完了に150時間といったところだ≫


「ありがとうメルク。よろしく頼む。


 修復が完了した恒星炉は転移リングの向こうでチャージする予定だ」


≪記録によると、リング周辺を探査しただけなのだろう? 気をつけてな≫


「ああ、よさそうな文明品が見つかるように祈っていてくれ」


≪祈った事は無いがやってみよう。


 ところで機動衛星はあと約100時間で建設作業機器を降ろし終わって


 イシュメラーナ星系に転移する予定だから。


 修復した恒星炉はイシュメラーナ星系で渡す事になるな≫


「こちらもクリサリスの装着希望者も一緒に来てるんだ、


 だから適応まではここにいるよ」


そうしているうちに2つのクリサリスの修復が完了した。


「ありがとうメルク。さっそく持って行くよ」


≪ではな、マスター≫




【ブランシェ格納庫】


「修復したクリサリスを持ってきた。注意点はこれから20時間はクリサリスに覆われて飲食が出来なくなることかな?」


「後は自分と同じ形のクリサリスが定期的に裸でアースライとベタベタする事を説明する必要があるわよ」


「アリシア、もう少し婉曲的な表現をしてもらえると嬉しいな」


「自分と同じ形の女性が女官服で、かいがいしくアースライの世話をしている所を見ると複雑な心境になるわよ。特に婚約者の立場からするとね」


「ごめん、でも必要なことなんだ」


「それは理解しているし、やめさせようとしてくれた事も分かっているけどね。


 そういう訳で2人共、覚悟してね」


セシリアとメイ王女の前に、クリサリスを置く


「ルジェ、お願い」


クリサリスの表面に珠が浮き上がる。セシリアが灰色、メイ王女は黄色のようだ。


「この珠に触れると装着が始まります」


2人共、おそるおそる珠に触れると、クリサリスがそれぞれの身体を包み込んだ。


「全身のスキャンと適応を始めています。解除まで20時間の予定です」




【ブランシェ飲食エリア】


ここが、カレナさんの作った飲食エリアだ。


ここのフードクリエイターと前に見つけた物は記録された料理に


多くの違いがあったため、ここにカレナさんが居座ったのは懐かしい思い出だ。


そこで僕は最近お気に入りの黒を飲んでいた。


名前は【ボフサーノ】というらしいが、言いにくいので黒と呼んでいる。


「アースライさん、少しいいですか?」とミーシアさんに声をかけられた。


「何かな?」


「私に何か出来る事はありますか?」


「えらく抽象的な質問ですね?」


「いえ、イシュメラーナに対して出来る事がもう無くなった以上、


残りの人生をアースライさんに使って貰おうかと思いまして」


「僕は、他人の人生なんて重たい物を背負うつもりは無いですよ、


 重過ぎます、やめてください」


「じゃあ、アースライさんが今後旅をするのに必要な技能とか資格はありますか? 


複数の人間が持っていた方がいい資格もあると思いますし」


「それよりミーシアさんがやりたい事は無いんですか?」


「私がやりたい事ですか? 考えた事もありませんでした」


「そうですか、僕なんかイモ畑が嫌で何とかして宇宙に出たかったんですが」


「イモ畑ですか?」


「惑星の地表の殆どがイモ畑でね、日影を作ると怒られるんです。


 惑星に遮蔽シールドを掛けているイシュメラーナとは大違いでしょう?」


「そうですね、でもイシュメラーナの事よくご存じですね? 」


「ええ、知り合いがイシュメラーナ出身だったんです」


「え?」


「ミーシアさん、こんな時になんですが、してもいいですか?」


「はい」


僕はライフスーツのポケットから折りたたまれたを取り出した。


「イシュメラーナの混乱が収まってからで結構です、


 この方のご家族に会わなければいけないので探していただけますか?」


「中を見てもいいですか?」


「どうぞ、人の名前と住所だけです」


ミーシアさんが紙を開いて、中に書かれた文字を見詰めている。


「この方は?」


「僕が、どうしても会わなければいけない人ですね」


「わかりました、探します」


「いえ、この大混乱の中で探したらきっと政府に迷惑が掛かります。


 そんな事をすれば、僕はこの人に怒られますからね。


 今は避難を優先してください」




【ブランシェ格納庫】


装着開始から20時間が経過して、


2人のクリサリスが適応しているのをルジェに確認してもたってから


2人に注意事項を説明した。


「いいかな、2人とも。これからクリサリスを解除してもらいます。


 クリサリスの解除は2種類、1つは【かい】これが通常の解除になります、

 

 必ずこの方法で解除してください」


問題が起きないように、とことん念を押す。


「2種類のもう一つは使っちゃいけないの騎士様?」


「メイ王女、もう一つの【げん】はクリサリスが人間の形で現れるのですが


 最初は裸の状態なんです。しかもメイ王女と同じ姿でです。


ですから【げん】を使うのは自分のお部屋の中でお願いします、


その時はクリサリスに服を着るように指示して名前を付けてあげてくださいね。


わかりましたか?」


「わかったアースライ君、後でメイ王女と一緒に部屋で名前をつける事にするよ」


「セシリアさん、くれぐれもよろしくお願いします。


 では2人ともキーワードは【解】です」


「「【解】」」


よし、無事解除ができた。


勝利を確信して僕は思わずガッツポーズをしてしまった。


「無事解除できました。後は自室でお願いします」


「ああ、そうさせてもらう」


「ありがとう騎士様」


2人が部屋に戻る後ろ姿を見て、涙が出そうになった・・・・・・が


「「マスター」」


ああ、大小のやわらかい感触に、表情筋が溶けそうになる。


「ルジェ、お願い、2人に服を着せてくれないか? 」


結果は僕の完全敗北だった。


その後、黄色い髪のメイ王女はカナリー


灰色の髪のセシリアさんはアッシュと名付けられた。


この後、3日程、比較的安全なこのファクマス星系で


2人にクリサリスに慣れてもらった。


それが終わると、ブランシュで先に機動衛星と共に出発したメルクを追って


イシュメラーナ星系に転移した。


そして・・・・


≪マスター、恒星炉の修復が完了した≫


「ありがとうメルク、すぐに受け取りに行くよ」


機動衛星の格納庫に行くと、そこには直径5mの鋼色の球体が鎮座していた。


「ブランシェのとは少し色が違うな、でも形は同じか。あの脱出ポッドそっくりだ」


≪君には思い出深い形状のようだな≫


「ある意味、僕と生死を共にしたからね。


 その裂け目からメルクが見えた時は本当にうれしかったよ」


≪なるほど、私の先輩というわけか?≫


「僕は君の先輩を見捨てて、君に乗り換えた訳か、中々の悪人だね」


≪だが、この先輩でシルキスタが動かせる。


 シルキスタを泣かせないようにな悪人のマスター≫


「ああ、気をつけるよ。それでは、この恒星炉を持って行かせてもらうね」


≪マスター、本当に気をつけてくれ。


何日か前にイシュメラーナに来た時に連続転移を使っただろう、噂になっていたぞ≫


「そういえば人前で使っちゃだめだったんだ」


≪まあ、4ヶ月の距離を1週間で到着している騎士殿だから、


 今更感があって、誰も気にしていないようだがね≫


「それはそれで問題な気がするけど」


≪エネルギー充填の為に転移ポートの向こうに行くなら、


 私の子機を忘れないようにな≫


「ああ、お土産を愉しみにしててくれ。じゃあ」




超大型医療拠点艦ブランシュ


「メルクから修復したジェネレーターを受け取って来たよ。


 これからステラファス星系に帰還する。ブランシュ準備をお願い」


『マスター、出発の準備は出来ています』


「それじゃあ、ステラファス星系に向けて出発」


そうして、ステラファス星系に到着したのだが・・・・



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