第21話 未知の彼方

パラキス星系 第2惑星付近


あの赤色巨星の恒星系に来ている。


『転移コアのエネルギーチャージが完了しました。


 これより起動式の展開を行います』




ブランシュの艦首方向に設置された5個の転移コアが青白い光を放つ。


それぞれのコアから枝のように鈍色にびいろをした金属のワイヤーが生えてきて


それぞれを繋いで1つの大きな輪を形成する。


コアの色が青から赤に変化した。


ワイヤーがどんどん増えて太いフレームに変化していく。


そうして空間に直径500m程の巨大なリングが形成され、


今度はコアの色が赤から緑に変わった。




『空間転移ポート起動完了しました。


どうやらついとなる転移ポートも稼働しているようです』


艦内にワッと歓声が起きた。


『マスター、現在、ブランシュの転移装置と同調しておりますので、


このまま転移可能ですが、いかがされますか?』


「せっかくここまで来たんだ。行こう、ブランシェ。


 警戒しながら転移を行ってくれ」


『了解しました』


ブランシェはゆっくりと空間転移ポートへと進んで行く。


リングの中央の空間に虹色の歪みがみえる。


艦首部分がリング中央にくると艦全体を細かい振動が襲った。


『転移ポートに接触、これより転移を行います』


振動はどんどん細かくなってきて振動音が高くなってきた。


ある程度高くなったところで、いきなりその音が消えた。





『転移完了しました』


「無事転移したようだな」


「現在位置の確認は可能なの?」とエルネシアさんが尋ねるが


『周辺の星を検索しましたが私の記録に無い地域のようです、


 確認作業を継続します』


「お願い」


その時、メルク子機が反応した。


≪ソルコアイト文明品の反応をみつけた。転移ポート周辺に3ヶ所反応がある≫


「アースライ君、アリシア、この辺りは未知の場所だから


 念のため3人で行きましょう」


エルネシアさんの意見に賛成して3人共クリサリスをまとう。


「ルジェ【そう】」「サイファ【そう】」「エメリア【そう】」


メルク子機と一緒に船外にでた。


「メルク、方向を指示して」


≪こっちだ≫




「前方に浮いているのはクリサリスだな?」


「とにかく、回収しよう」


「そうね」


「メルク、次を頼む」


≪了解、次は、こっちだ≫




「どうやら、これもクリサリスみたいだな」


「そのようです」


「メルク、次で最後だね」


≪今までより、少し大きな反応だな≫


「アースライ、あれってもしかして?」


「何? 2人共知っている物?」


「多分、船のジェネレーターだと思います」




そこに浮いていたのは、破損しているがおそらく恒星炉だと思う


「ルジェ、牽引接続してくれ」


『了解』


「さあ、ブランシェに帰りますか」





ブランシュに帰還した僕達だったが、僕は帰ってきてすぐに


シルキスタに抱きつかれた。


「シルキスタ、ただいま」


「・・・・・・・・・・」


「シルキスタ、さっきジェネレーターを見つけたんだけど、


これメルクで修復したら君に使えるのかな?」


シルキスタはジェネレーターの方を見ると、


僕の方を見て大きくコクンとうなずいた。


「じゃあ、もって帰ってメルクに修復してもらおうね」


シルキスタがニコニコ笑っている・・・手は放してくれなさそうだが。


「あとは破損したクリサリスが2個だった、


ブランシュ、現在位置の特定は出来そうかな?」


『どうやら同じ島宇宙の別の渦状腕に来ているようです。


距離にすると大体8万光年といったところでしょうか?』


「なんだろう、実感が湧かないな」


『万が一この空間転移ポートが破損しても、ブランシェ《私》の転移装置でしたら


約4ヶ月で帰還できます』


「3千光年の移動を1週間で済ませる、この艦で4ヶ月か凄まじいな。


さて転移ポートは使用可能で、今回、いくつか文明品を入手出来た。


どうします? 近辺の恒星系を見てみますか?」


「一度報告に帰った方がいいと思うけど、アースライはどう思う?」


「はい、帰ってジェネレーターを修復したいですね。


ジェネレーターのエネルギー充填は機密事項が多いので人数を減らして


転移ポートのこちら側でやりたいです」


「そうなの? なら1度戻りましょうか」


何故かメル王女がエルネシアさんの腕を掴んでいる。


「どうしたの? メル」


「姉さま、私もクリサリス欲しい」


「次にクリサリスを見つけたら修復して、セシィちゃんに渡す約束だけど」


「私も欲しいの」


「アースライ君? 」


「国王陛下の了解は必要ですが、


クリサリスには強力な生命維持機能がありますから。


宇宙に出るのなら、安全を考えてクリサリスをつけて置いた方がいいと思います」


「ありがとう、騎士様」


メイ王女が僕の右腕に抱き着いた。


そうだよね今、左腕はシルキスタが独占してるからね。


「では、一度帰還します。ブランシェ転移ポートの作動準備をおねがい」


『了解です。マスター』




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