第20話 大失敗

【ステラファス星系】


王宮内の会議室、僕は報告の為、


王族の方々と話し合いをする為に、わざわざ集まってもらった。


王族の方々以外には僕とミーシアさん、ルジェとシルキスタ、


ブランシェとサイファが来ている。


「やあ、騎士。そろそろ息子と呼んでもいいという事かな?」


「姉さま、結婚式の発表ですか?」


「婚約発表してから1年だからな、そろそろか」


「お父様、メイ、お兄様、勝手に話を作らないでください」




仕方ない、こっちで話を進めよう。


「お集まりいただき申し訳ありません。


実は、空間転移ポート修復が完了しましたので、


転移実験をどこで行うか相談にまいりました。


対になるポートが破壊されていれば反応しませんが、


もし無事な場合は、そこから未知の存在が入ってくる可能性もありますので


設置場所を検討したいのですがよろしいでしょうか?」


「我が騎士、空間転移ポートの修復が出来たのか?」


「お父様、アースライは騎士で婚約者なんですが? 


まあ、とりあえず修復が完了しました」


「あのファクマス星系でのテラフォーミングの情報で


白銀の騎士アースライだけでなく、ステラファス星系と王室の人気が


すごい事になってるんだ。


もう、ステラファスの騎士でいいじゃないか」


「お父様には、あのという立派な文学評論家の騎士がいるではないですか?」


「騎士になった途端に政界に出て、女性スキャンダルで失敗したあの人か? 


 もう半世紀くらい会ってないよ」


「ステラファス王家の人は1人だけ、騎士を任命できるんですよね?」


「そうだよね、でもアースライ君が活躍してくれたおかげで


 議会からの騎士の推薦押し付けが無くなったのは助かったよ」


「どうして、無くなるんですか? よくわかりませんが」


「いや、騎士に任命されたら、ステラファス星系だけでなく


 連邦中から君と同等の活躍を期待されるんだよ、


 しかも、あれだけの功績と比較される・・・・みんな断るよ」


「話が進まないから、私が進めましょうか? お父様? アリシア?」


「エルネシア姉さま、ごめんなさい」


「正直、空間転移ポート使えるか分かりませんし、あまり遠いと不便なので


機動衛星を修復していた、あの赤色巨星付近で良いんじゃないかと思って、


相談に来ました」


「確かに、あそこなら人もいないし、実験するには良いかもしれないわね」


「そうだな、あまり遠くても問題だからな」


「それで、転移ポートの実験にはブランシェを使おうと思っていますが、


 どなたか同行されますか?」


「私は行くわよ」とアリシアが手を上げた。


「アリシア様についていきます」とセシリア


「私も同行させてください」とミーシャさん


「未知の宇宙よ、私は行くわ」エルネシアさん


まあ、このメンバーだよなと思っていると


「あの、私もついていっていいでしょうか?」


と控えめな小さな声が聞こえた。


「メイ、あなた宇宙とか嫌じゃなかった?」とアリシアが不思議そうな顔で聞く


「正直怖い、でもずっと興味は持っていた」


「メイ王女、冒険になるかもしれないけど、


 空間転移ポートが動かずに、何も出来ず、


そのまま帰ってくる可能性もあるんですが?」


「それでも行きたいです」


「すみません、メイ王女は未成年ですし、まずは王様の許可をもらってください」


「私なら空間転移ポートなんて危ない実験に、メイの参加は止めてもらうわよ。


未知の危険に全くの素人を連れて行くのは怖いから」


「エルネシア姉さま」


「万が一転移ポートが故障したら10万光年向こうに取り残されて


 帰ってこれなくなるのよ」


「メイはどうしたいのかな?」


「お父様、私、行ってみたい」


「気をつけて行っておいで」


こうして、空間転移ポート実験のメンバーが決まった。




【王宮内客室】


豪華な食事を終えて、自分に指示された客室に向かう。


ドアを開けると

「お疲れさまでした。マスター」


シルキスタが中で待っていた。


「どうしたのシルキスタ?」


次の瞬間、僕はシルキスタに抱きしめられていた。


僕は何があったのか理解が出来ずに混乱している。


「シルキスタ? なにかあったのかな?」


シルキスタは抱き着いたまま動かない。


仕方ないか。


「ルジュ【現】」


ルジュを表に出して


「ルジュ、すまないがシルキスタに何があったか聞いてもらえないかな?」


「マスター・・・本気で言ってますか?」


ルジュの顔が見た事が無いくらいになっている。


「ごめん、ルジュ・・・僕、何をやったの?」


「マスターはシルキスタを置いたままでした。


今日会うのは1年ぶりですよ、それを一言も口を聞いてあげないなんて」


「1年? そんなに経ってる?」


「連邦代表会議に出発する時からですから、それ以上ですね。


一度、帰ってこられましたが。


機動衛星から人を降ろしたらすぐに行ってしまいましたし、


その間、シルキスタは動けませんでした」


「1年も、待っててくれたんだ」


「シルキスタのメンタル負荷が危険域に入ってますので、


 当分の間マスターの世話はシルキスタに任せます、


 ブランシェにも乗せて行きますので、そのつもりでお願いします」


 といって、自分で【解】に移行した。


 ずっと抱き着いたままのシルキスタに声をかける


「ごめんね、シルキスタ。今夜はずっと一緒に居ようね」




翌日、王宮から小型宇宙船で軌道上のブランシェに移動するが・・・・


シルキスタは僕の腕を放そうとしなかった。


婚約者アリシア第1王女エレネシアさん第4王女メイ王女と乗員が僕の事を微妙な目で見ている。


「それじゃあ、出発するわね」第1王女エレネシアさんの操縦で僕らはブランシェに向かった。


ブランシェに到着して


「それじゃあ、ブランシェ。あの赤色巨星のある恒星系に転移をお願いね」


『マスター、了解です』


ほどなく、赤色巨星に到着した。


「ブランシェ、これからどうすればいい? メルクの指示はどうなってるの?」


『転移コアはこちらで操作できます。


コアを放出して空間位置を固定してから転移装置と同調させて


それからエネルギーを送りますので3時間程かかると思われます』


「そうか、みんな聞いた通りです、それまで休憩していてください」


アリシアがこっちを恐い目で見ている。


「アースライ、ちょっといい?」


「アリシア、どうしたの?」


「婚約者として、その件を聞いておこうと思って。


 シルキスタは私にとっても命の恩人なんだけど、あなたいったい何をしたの?」


「何をしたというか、何もせずに放っておいてしまったというか・・・」


「ちゃんと説明できる事なんでしょうね?」




「ねえ、アリシア。ステラファス星系で


 2人でブランシェとエッグを見つけたよね?」


「ええ、そうね」


「その後は別の恒星系で機動衛星を見つけたね?」


「そうだったわね」


「それから、この赤色巨星に機動衛星の修復に来て」


「・・・そうね」


「それから連邦代表会議に呼び出されて、そのままイシュメラーナだね?」


「色々あったわね」


「それから、人を運んだよね?」


「たくさん運んだね」


「並行してエッグの修復と起動もやったよね?」


「いろいろやったわね」


「そのあいだ・・・・シルキスタはどうしてたと思う?」


「え?」


アリシアの表情が固まった。


「メルクを持って行かれて動けないシルキスタはどうしてたと思う?」


「・・・・・まさか?」


アリシアの顔色がどんどん悪くなっていく。


「この、どうしてたと思う?」


「1年も経ってたの」


「僕は昨夜、ずっとシルキスタに謝ってたんだ」


「シルキスタ、本当にごめんなさい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る