第23話 大きな発見

【ステラファス王宮】


「この後、メルクが修復したジェネレターにエネルギーを充填する為に

 転移ポートの向こう側に行くわけなんですが。

 すみませんが機密事項が多いので、今回は僕とアリシアだけで行きたいんです」


「できれば殿下についていきたいのですが? 

 機密保持を約束しても同行は無理なのでしょうか?」


「私としても興味があるので一緒に行きたいんだけど、

 機密保持ってアリシアには約束してもらったんでしょ?」


セシリアさんとエルネシアさんには納得してもらえなかった。


「すみませんが、アリシアと出会った時はアリシアが王家の人間だとは

 知りませんでした。

 それで、最初にクリサリスを適応させる時に、

 この件について口外出来ないように契約してもらいました。

 今では国の代表となる可能性のある方が、

 こんな契約をするべきでは無かったと考えています」


「エルネシア姉さま、私は契約で、この事は口に出来ないけど。

 やめておいた方がいいわ。

 絶対に知った事を後悔するから」


「ごめんね、アリシア。

 知らずに色々考えるより、私は知って後悔する事を選ぶわ」


「すみません、殿下。私もそちらを選びます」


こうしてエルネシアさんとセシリアさんが同行する事になったが・・・


「あの~、私はどうすれば良いでしょうか?」


とミーシアさんが手をあげた。


そういえば彼女はステラファスに居てもする事が無いな。

どこにいてもらおうか? と考えているとカレナ王女が声を掛けてくれた。


「それなら、私がシルキスタ(船)のフードクリエイターを使っている時の

 助手をやってもらいましょうか?」


「はい、よろしくお願いします」


よし、これなら安心かな・・・




ブランシェを発進させる。


僕とアリシア、エルネシアさんとセシリアさん。


シルキスタ(子機)とメルク(子機)が同行することになったが・・・・・


『マスター、密航者を発見しました』


いや、みんなクリサリスを使って搭乗したよね? 

密航って、どうやって? 荷物の搬入に紛れ込んだの?


「騎士様、来ちゃった」


メル王女・・・・


「メル王女、ダメです。今回は帰ってください」


「秘密は守るからお願い」


「エルネシアさんとセシリアさんには秘密を守ってもらうのではなく、

 口に出来なくなってもらいます。

 あなたのこれからの一生で口に出来なくなる言葉が出来てしまうんですよ?

 それに、私自身が転移ポートの向こうで起こる情景を

 あなたに見せるべきでは無いと考えています」


「いや、この船から降りない」


「その場合は、残念ですが船室に閉じ込める事になりますね。

 大丈夫ですクリサリスを装着していれば1年くらいは

 水も空気も食料も無しで生きていけますから」


「騎士様、怒ってる?」


「今回の事に関しては怒っていますよ。

 正直、王家なんて責任を負った方が背負うべき制約では無いですからね、

 国民に対しても無責任に感じました。

 もしこの契約で国民が不利益を被った場合はどうなんでしょうね?」


エルネシアさんがため息をつきながら


「多分そうなんでしょうけど、アースライ君、

 君は今まで1つの星系を救って連邦を一時的に好景気にしてしまったのよ。

 おそらく今ではウチの王家よりも君の発言の方が重く取られるでしょうね。

 リングの向こうで、これから起こる事は。

 おそらくそれを加速こそすれ連邦に与える影響は小さく成ることはないでしょう。

 それを知らない所で起こされるのと、目の前で起こされるのでは

 出来る対処に差が出来るのよ。

 幸い王家には2人の王子がいるから、

 私はどんな制約をうけてもアースライ君の方に関わるわよ」


「メル、騎士様と一緒に居たいの」


 泣かれると決意が・・・でも、あれは子供に見せてもいい光景だとは思えない。


「メイ王女、僕には君が見てもいい光景だとはどうしても思えない。

 今回はすまないが100時間だけ船室に居てくれないだろうか? 

 今回、エルネシアさんとセシリアさんが見て大丈夫だと判断したら、

 次の機会があれば見て貰うよ」


「わかりました、騎士様。約束します」


「ありがとう。メイ王女」


「メイと呼んでください。騎士様」


「いい雰囲気の所悪いんだけど、メイ、

 アースライは私の騎士で婚約者なんだけど分かってるよね?」


「騎士様はステラファスの騎士様だもん」


「メイ、あなたも自分の騎士を任命しなさいよ」


「じゃあ、騎士様を任命する」


「出来ないわよ」


こうして出発メンバーにメイ王女が加わった。




とりあえずパラキス星系 第2惑星付近に転移して転移ポートの傍に移動する。


「ブランシェ、転移準備をお願い」


『了解しました。転移装置と同調、転移コアへのエネルギーチャージを開始します。

チャージ完了は3時間後を予定しています』


転移ポートに設置された5個の転移コアが赤い光を放ちはじめる。


「よし、それじゃあ転移ポートが準備できるまで皆、休憩しててね」




時間の経過と共に今度はコアの色が赤から緑に変わった。


『転移コアのエネルギーチャージが完了しました。』


ブランシェはゆっくりと転移リングへと進んで行く。


リングの中央の空間に虹色の歪みがみえる。


艦首部分がリング中央にくると艦全体を細かい振動が襲った。


『転移ユニットに接触、これより転移を行います』


振動はどんどん細かくなってきて振動音が高くなってきた。


ある程度高くなったところで、いきなりその音が消えた。


『転移完了しました』




「転移ポートの向こう、8万光年離れた別の過状腕に到着しました。

ブランシェ、周囲を警戒しつつ近隣の恒星系を探査しようと思うがどうしようか?」


『今回のジェネレーターへのエネルギー充填には矮星が適当だと思われます。

光学探査した所、この転移ポートから20光年以内に

50個の恒星が確認できました。内40個でエネルギー充填が可能と推定されます』


「エネルギー充填が可能で惑星に原生生命が居ない所を選出出来るかな?」


『ほとんどの恒星系で原生生物の発見は不可能と思われます。

ただコロニーを作って生活する知的生命体がいる可能性も否定できませんので。

エネルギーチャージは現地の恒星系で生命の有無を確認する必要があります』


「そうか、どこから探そうか?」


『転移ポートに一番近い3光年の位置にある恒星でしょうか? 

ただこの位置に転移ポートが存在する以上、

あの場所に文明品が残されている可能性もかなり高くなります』


「わかった、まずは一番近くの恒星系を探索しよう。ブランシェ、転移お願い」




【転移ポートに1番近い恒星系、便宜上アルファ1】


「残されている可能性が高いって・・・・・・ あきれるくらい大きいのが

 偽装すらされずに、にあるんだけど? メルク子機、これ何?」


≪ソルコアイト文明の中継ステーションです≫


「機動衛星より間違いなく大きいよね、軌道ステーションみたいな物かな?」


≪そうです、直径は50kmあります。艦船の物資補給やクリサリスのメンテナンス

 各種族の居住惑星と同じ状態にした空間を作って休息させる為の物でした≫


「さすがに・・・これは動かせないね」


≪マスター、ジェネレーターは生きているようですがロックされていて


こちらの信号を受付けません。


私(メルク)の本体を持ってこないと解除は無理ですね≫


「ジェネレーターはまだ生きているんだ」


≪そのようです。ここの恒星は使えませんね≫


「そうだね、あんなのがどこかに飛んで行ったら危ないよね」


≪あと3ヶ所反応があります≫


「ブランシェ、近くの反応から向かってくれ」


「クリサリスだな」


目の前に、まごう事無いモノが浮いている。


≪ええ、回収をお願いします。次の位置を送ります≫


「わかった、そちらに向かう」


あれ? なんだコレ?


「これもクリサリスかな? ずいぶん大きいし珠もついている」


1mほどの大きさのクリサリスで黒い珠が既に表面に浮き上がっている。


≪マスター、それはクリサリスの乗員保護モードです≫


「え? 乗員が中にいるの?」


≪どうやら生命維持限界を超えて体組織の維持は既に放棄されているようです。


 中枢神経が、まだかろうじて維持されている可能性がありますね≫


「メルク子機、助けるには、どうしたらいい?」


『現状では、ブランシェの【コクーン】に入れて経過を見るしかありません』


「じゃあ、そうしてくれ。ブランシェ頼む」


『了解しました、【コクーン】射出します』


「ああ、【コクーン】中に入れるから、すぐに回収してくれ」


送られてきた【コクーン】のシールドを開けて中に黒い珠のクリサリスを入れる。


シールドを閉めて


「ブランシェ、【コクーン】に収容した回収してくれ」


『マスター、了解しました』


しかし、おどろいた。いったいいつの時代からの漂流者なんだ?


「メルク子機、次の位置を送ってくれ」


≪了解、ルジェに送る≫




「これも何か分からないな」


てのひらから少しはみ出す程度のオレンジ色の小さな円盤、


何かの記録媒体だろうか?


「メルク子機、これ何? 」


≪クリサリス用の【リンカー】です≫


「【リンカー】って何かな?」


≪クリサリス同士のプライベートチャンネルを作る為のものです≫


「プライベートチャンネルって?」


≪特定の仲間とプライベートで連絡を取り合うために作られた物で

仮想空間の共有が可能になります。

仮想会議室などとして使われていたはずですが・・・

マスター、コレ使えるかもしれません≫


「何に使えるの?」


≪コレに少し手を加えれば、クリサリス同士をプライベートチャンネルでリンクして

感応核同士のネットワークを肩代わりさせられるのではないかと≫


「えっと、それはつまり?」


≪毎朝、裸のクリサリスに抱き着かれたまま起きる必要が無くなるかもしれません≫


どうしてだろう、掌に乗るくらい小さなこの【リンカー】が、

今回の旅の一番大きな発見に思える。


「メルク子機、最優先で修復しても良いかな?」


≪マスター、ルジェ以外のクリサリスの前では絶対に言わないでくださいね。

 機嫌が悪くなって、ベッドに来る頻度が増えるかもしれません≫


「メルク子機、ルジェ、これは内密で頼む」


≪もちろんです≫『了解です』


≪しかし、マスター。このリンカーを使用するのに2つだけ問題があります≫


「なんだろう、大抵の事はクリアするぞ」


≪私の本体を持ってこれない以上、リンカーの修復はもちろん設定や加工と調整は

本体に接続した状態でないと不可能です。

つまりクリサリスの装着者を全てイシュメラーナ星系に連れて行く必要があります≫


「なるほど、理由を説明して連れて行く必要があるな」


≪あと、当然ながら今回設定していない新規のクリサリスが追加される度に

 全員を集めて設定する必要があります≫


「まあ、当然だな。しかし、クリサリスが増える事もないだろう?」


≪先ほど、1個入手した所だという事を忘れていませんか? マスター≫


「とりあえず、ステラファスに戻ったら皆に説明してイシュメラーナ星系に行こう」


ブランシェの中に戻ってすぐにエルネシアさんに捕まった


「クリサリスの中に乗員がいたの?」


「そのようです。ただ生命維持の限界は過ぎていますので

 助かるかどうかはわかりません」


「歴史の証人になるかもしれないわね」


さすがに、ここで乗員が【星喰い】可能性があるとは言いにくいな。


「そうですね、でも助かるかわかりませんし、記憶も残っているか不明ですよ」


「そうね、まずはそこよね」


「ブランシェ、それでは次の恒星系に向かってくれ」


『了解』

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