第28話 ファクマス星系の危機
それはファクマス星系でイシュメラーナ星系から建設作業機器を積んで来た
僕達は
ちなみに
ノーチェの入ったコクーンを乗せたまま、ファーミーティアに行っている。
≪アースライ、あれは何だ?≫
・・・メルクに質問されるのは初めてだった。
「あれ?」
見えるのは、大きな岩塊だ。何ヶ所も推進器が取り付けられて、
数機の小型宇宙船に囲まれて高速で移動しているようだ。
岩塊は小形宇宙船の大きさから比較すると
「どこかで見たな? なんだったっけ?」
「あれは、ガス採取業者ね」エレネシアさんが教えてくれた。
≪ガス採取業者?≫
「ああやって、適当な質量の岩塊を加速させて
惑星表層付近のガスを重力圏外まで弾き出すのよ」
「なるほど、そうやって、この星系の
≪アースライ、すぐにアレを追ってくれ≫
「あれって、岩塊?」
≪詳細までは判らなかったが、あの岩塊は遺跡文明品だ≫
「ぶっ」
≪しかも、かなり高いエネルギー値だ。
あんなモノを
「させたら?」
≪
「みんな、緊急事態だ。
ファクマス政府に通達、緊急事態につき機動衛星を使用する。
「エレネシア姉様、ガス採取業者に連絡して、岩塊のコースを変更出来ないの?」
「こちらで連絡を取ってみるけど、もう突入コースに乗ってるはずよ。
微調整以上の事は、おそらく無理」
「エルネシアさん、それでもお願いします」
≪とにかく追いついて偽装を解除しよう≫
「そうだね、メルク、場合によっては、連邦との約束を破ってでも
岩塊を機動衛星で攻撃しよう」
≪ダメだ、エネルギー値から推測される、どの遺跡文明品でも破壊された時点で
この星系の重力バランスが破壊されてしまう≫
【とあるガス採取業者】
『そこのガス採取業者聞こえるか?』
人が寝てる時に、うるさいな。また連邦安全協会の監視員か?
「うるせ~な 安全協会。ウチはちゃんと書類出してるぞ。
その辺の違法業者と一緒にするな」
『残念ながら、連邦安全協会の監視員じゃ無い。一つだけ聞かせろ、
今から
「寝ぼけてるのか? 星系外ならともかく、コースに乗った今、
あと20時間で突入だ、出来る訳ないだろ。」
『なら、その岩塊から即座に撤退しろ。できれば星系外に退避だ』
「うるせ~、なんの権限があって命令してやがる」
『ファクマス星系政府とは話はついている。
ところで、岩塊の推進器付近に人は居ないだろな?』
「居るわけね~だろ」
『メルク、岩塊の偽装解除』
≪わかった≫
「なんだ、ありゃ?」
岩塊の表面がポロポロおちて金属らしき光沢が現れる。
巨大な円盤状の物体、その中央に大きな透明の玉が埋まっていて
その玉を取り囲むように5つの比較的小さな玉が囲んでいる。
5つの玉、内3個は真っ黒だが、2つは赤く光っている。
「なんなんだ、ありゃ? おい、安全協会? なんだあれ?」
『だから、安全協会じゃない。はやく逃げろよ、オジサン』
【アースライ】
ダミ声のガス採取業者のオジサンとの通信を切る。
「それで、メルク。アレ・・・何?」
≪
「なんで、そんな危ないモノを作るかな?」
≪大戦中に使用された最前線でのエネルギー・チャージャーだ。
エネルギーが切れたからといって、悠長に使えそうな恒星を探してられないからね。
あの
前線でエネルギーを急速チャージしていたんだ。
君達の
「それで、アレを破壊すると恒星2個分のエネルギーが噴出するわけか?」
≪いや、破壊すると、あそこに恒星2個分の質量も実体化するから、
あの位置が公転軌道の中心になる≫
「第4惑星は気象異常どころの騒ぎじゃないな」
≪1週間以内に、まず第4惑星から大気の層が剝ぎ取られる。
後は大規模な地殻変動の連続だろうな≫
「巨大ガス惑星じゃ、攻撃しても意味が無いか?」
≪岩塊突入までに質量の何割かを消し飛ばせるが、それじゃあ意味が無い≫
「連結恒星炉の突入タイミングをずらす? いっそ押し込んで加速するか?」
≪可能だが、その場合、押し込む宇宙船も一緒に巨大ガス惑星の至近距離を
通過する事になる。シルキスタは残すにしても機動衛星が
巨大ガス惑星に引きずられて失われる可能性があるな≫
「そうだね、みんな、すまないけどシルキスタに移動してくれるかな?」
アリシアに腕を掴まれる
「ちょっと待って、アースライはどうするの?」
「メルクと一緒に行くよ、何か手があるかもしれないし」
今度は肩を掴まれた、ミーシアさんだ
「アースライさん、ファクマス星系の事ですから行くなら私でしょう?」
≪すまないが、連れて行くのはアースライ1人だ、
万が一巨大ガス惑星に落下してもアースライだけならコレで脱出させられるんだ≫
床から大きな黒いクリサリスの形をしたモノが現れる。
「【アウタセル】か? 修復が終わってたんだ」
≪ああ、解析もなんとか終わった≫
「コレ、開発が中止になったんだよね。ちゃんと使えるの?」
≪どうやら
転移回数は3回に減らして、その代わり乗員保護の強化と
通常空間での移動能力の強化を主体にして、内部に5個のコクーンを搭載している。
「わかった、ルジュ頼む」
ルジュが【
『同調開始しました。同調完了まで200分です』
また腕を掴まれる・・・シルキスタか
目に涙を溜めて、僕を見ている・・・
「ごめん、シルキスタ、みんなを頼むね」
「ルジェ【
加速Gに耐える為にルジュを
「さあ、
≪いつでも良いぞ≫
『マスター、どうぞ』
「それじゃあ、予定通り、タリスマンの突入方向の後ろから接近して
相対速度ほぼゼロで接触、その状態で
≪了解だ≫
僅かなショックを感じる
直系1kmの円盤を、直径10kmの球である
もっと早い段階で気が付けば、他に対処できたはずだったんだけど、
今は考えても仕方ない・・・・
≪無事、タリスマンに接触した≫
「よし、メルク、このまま突っ込む、全力で押してくれ」
≪最大加速を掛ける≫
ルジュに守られているが、それでも大きなGを体感する。
『ちょっと待て、安全協会。突っ込むってなんだ!!』
「・・・メルク、今の音声は?」
≪タリスマン表面に小型宇宙船らしき物体を確認した。
エネルギー値の低さと外装からデブリだと思っていたんだが?≫
「その声、ガス採取業者のオジサンだよな? 何でココにいるんだ?
政府からの退避勧告は?」
『実はもう
今回、岩塊が突入した後のガスの
ここには推進剤ギリギリ来てるんだ。
他の小型宇宙船は全部レンタルなんで返した』
「おい、おじさん」
『なんか、デカイのが近づいてくるから助けてもらおうと声を掛けたんだが。
この円盤はなんだ? なんで、一緒に
「オジサン、もちろんライフスーツは着てるよな?
今、助けに行くから、大人しくハッチを開けろ」
僕はルジュを纏ったまま、
タリスマンの黒い珠に付着するように黒と茶のマダラ模様の何かが見える
「オジサン、この黒と茶のマダラ模様か? ハッチを開けろ」
『これでもこの船がグーシー開発の唯一の財産なんだ。
あと、Gで指一本動かせない。そっちでハッチを開けて貰えるか?』
「ハッチ? マダラ模様のドコだよ。外装板剥がして引きずりだすぞ」
『黒い玉近くのクリーム色の所だ』
「指一本動かせない割りに、流暢に喋ってるな、オジサン」
ハッチを開けて中を見た。
「・・・・・こども?」
中には耐Gシートに子供サイズのライフスーツが横たわっていた。
横たわる子供を抱え上げて、小宇宙船らしきモノから脱出する。
「メルク、救出した。そっちで耐Gポッドを用意してくれ」
このまま、長時間の加速には耐えられないだろうと、
呼吸補助マスクを付けてジェルの中に横たわる、耐Gポッドを準備させる。
『耐Gポッドって・・・・安全協会の、ちょっと待ってくれ』
声はオジサンだな?
機動衛星の外部ハッチから中に入って格納庫に置かれた
耐Gポッドを開封する。
ライフスーツのヘルメットを外す、中から青みかかったグレーの髪が出てくる
褐色の肌の子供か?
Gのせいで呼吸も辛そうだ、耐Gポッドに入れる為に、ライフスーツを脱がせる。
子供が身をよじらせる・・・苦しいのかな? 急がないと。
「・・・なんで、中に服を着て無いんだ?」
未発達な褐色の肢体が現れる
そのまま抱き上げて、ポッドに寝かせてマスクをかぶせた
心なしか、子供が涙を浮かべている様に見える。
「メルク、耐Gポッドを閉めてくれ」
≪了解≫
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