閑話 リリノ・グーシーの事情
【リリノ・グーシー】
あたしはリリノ・グーシー、このグーシー開発の4代目社長だ。
じいちゃんから、この会社を引き継いだが、
もう20歳なのに、グーシー家の女性特有の子供にしか見えない
この
ろくな仕事を廻して貰えない。
なので、今は顔は出さずに、声は通信機に
そのおかげで、今回はファクマス星系からの仕事を廻してもらえる事になった。
ファクマス星系といえば、あの『白銀の騎士』に救われた星系。
もう、そこには居ないだろうけど、あの星系に何か騎士様の関連グッズでも
売って無いだろうか?
いけない、この
シチュエーションを考えてるだけで数時間が過ぎていた。
まずい、仕事に集中しないと・・・・
何とか競争入札で勝ち取ったが、あいかわらず、予算はカツカツだ。
使い捨ての
こちらの手元にはほとんど残らない。
しかたない、多少の不純物が混ざるが巨大ガス惑星の飛沫を頂戴しよう。
それに、これで実績を上げれば、他の星系からの仕事が来るかもしれない。
そうして、今回、星系の外から、この
もう1ヶ月になる。
あ~保存食飽きた、シャワーが浴びたい、荷物も最低限にしたから着替えが無い。
しょうがないので、今は素肌にライフスーツだ。
ライフスーツは漂流なんかに対応する為に防臭処置がされている。
その防臭効果に期待しよう、なんせライフスーツは、あと2着あるから、
どうせ誰に見られる訳でも無い、最悪はライフスーツを着替えればいい。
やっと、ファクマス星系の中に入れた・・・・ちょっと寝よう・・・・・
『そこのガス採取業者、聞こえるか?』
人が寝てる時に、うるさいな。また連邦安全協会の監視員か?
「うるせ~な 安全協会。ウチはちゃんと書類出してるぞ。
その辺の違法業者と一緒にするな」
『残念ながら、連邦安全協会の監視員じゃ無い。一つだけ聞かせろ、
今からガスジャイアントへの突入は止められるか?』
「寝ぼけてるのか? 星系外ならともかく、コースに乗った今、
あと20時間で突入だ、出来る訳ないだろ。」
『なら、その岩塊から即座に撤退しろ。できれば星系外に退避だ』
「うるせ~、テメエ、なんの権限があって命令してやがる」
『ファクマス星系政府とは話はついている。
岩塊の推進器付近に人は居ないだろな?』
「居るわけね~だろ」
『メルク、岩塊の偽装解除』
≪わかった≫
「なんだ、ありゃ?」
岩塊の表面がポロポロおちて金属らしき光沢が現れる。
巨大な円盤状の物体、その中央に大きな透明の玉が埋まっていて
その玉を取り囲むように5つの比較的小さな玉が囲んでいる。
5つの玉、内3個は真っ黒だが、2つは赤く光っている。
「なんなんだ、ありゃ? おい、安全協会? なんだあれ?」
『だから、安全協会じゃない。はやく逃げろよ、オジサン』
「何がオジサンだ、うら若き乙女を捕まえて・・・・」
そうしている内に、今度はファクマス星系の宙域管理センターから連絡が入った。
『グーシー開発所属、マッド・グーシー。聞こえますか? こちらはファクマス星系
宙域管理センターです。緊急連絡、応答してください』
「こちら、マッド・グーシー。どうしました?」
『先ほど、機動衛星と直接話したそうですが。
正式に今回の依頼中止をお願いします』
「・・・そうなんですか? ウチに何か問題でも?」
『いえ、そちらが運んでいる岩塊に危険物が含まれているらしく。
機動衛星側で対処するので、マッド・グーシーはスグに
その場を退避してください』
「了解しました・・・直ちに退避します」
そう、答えたものの・・・どうしよう?
レンタルした小型宇宙船は無人仕様だから人が乗れる代物じゃない
なんとか、無事に返さないと壊したら弁償出来ない。
リモート操作で帰還モードに移行させる
問題は・・・・・
「ガスが無い・・・・」
きどうえいせい? さっきの安全協会のデカイ船か?
こっちに来るなら頼み込んでマッド・グーシーと一緒に何とか乗せて貰おう。
数時間後に、また、安全協会のデカイのがやってきた。
岩塊だったコイツに接触する。
『よし、メルク、このまま突っ込む、全力で押してくれ』
≪最大加速を掛ける≫
耐Gシートに身体が押さえつけられる、動けない、なんて加速だ・・・それより
「ちょっと待て、安全協会。突っ込むってなんだ!!」
『・・・メルク、今の音声は?』
≪タリスマン表面に小型宇宙船らしき物体を確認した。
エネルギー値の低さと外装からデブリだと思っていたんだが?≫
デブリじゃねえよ、汚い外装で悪かったな
『その声、ガス採取業者のオジサンだよな? 何でココにいるんだ?
政府からの退避勧告は?』
「今回、岩塊が突入した後のガスの
ここには推進剤ギリギリ来てるんだ。
他の小型宇宙船は全部レンタルなんで返した」
『おい、おじさん』
うるせい、テメエにオジサンなんて言われたくねえ、
テメエこそ、絶対にオジサンだろうが?
いや、今は、助けて貰わないと・・・
「なんか、デカイのが近づいてくるから助けてもらおうと声を掛けたんだが。
この円盤はなんだ? なんで、一緒に
『オジサン、もちろんライフスーツは着てるよな?
今、助けに行くから、大人しくハッチを開けろ』
おお、安全協会。即座に決断するとは、なかなかやるじゃないか?
『オジサン、この黒と茶のマダラ模様か? ハッチを開けろ』
「これでも
あと、Gで指一本動かせない。そっちでハッチを開けて貰えるか?」
『ハッチ? マダラ模様のドコだよ。外装板剥がして引きずりだすぞ』
悪かったな、それは亡くなったじいちゃんに言ってやってくれ。
「黒い玉近くのクリーム色の所だ」
『指一本動かせない割りに、流暢に喋ってるな、オジサン』
うるせえ、視線入力で音声ソフト動かしてるんだよ
『・・・・・こども?』
子供じゃねえ~・・・ああ、とうとうGで音声ソフトが壊れた。
やけにゴツイ、頭部に赤い玉のライフスーツで顔は見えない。
声は少し若く聞こえる。
パワーアシストか? このGの中、あたしをライフスーツごと抱き上げた。
『メルク、救出した。そっちで耐Gポッドを用意してくれ』
耐Gポッドがあるのか? 助かった・・・・
そこで、ライフスーツの下に何も着ていない事を思い出した・・・
しかも、約1ヶ月、シャワーも浴びてない・・・
『耐Gポッドって・・・・安全協会の、ちょっと待ってくれ』
音声ソフト、今だけでもいいから動いてお願い。
あたしの願いは虚しく、目の前に耐Gポッドが置いてある。
ポッドの透明な上部ハッチが開く。
安全協会が私のヘルメットを外す、ヤメロと言いたいが声が出ない。
ついにライフスーツが脱がされる
『・・・なんで、中に服を着て無いんだ?』
やめてお願い、近づかないで、1ヶ月シャワー浴びて無いの
そのまま抱き上げられて、ポッドに寝かされる。
色々なプライドがズタズタにされる。
顔にマスクを付けられて、そのままハッチが閉められる。
『メルク、耐Gポッドを閉めてくれ』
お願い、メルクさんとやら。せめて布1枚でいいから上に掛けて・・・
耐Gポッドのジェルって無色透明で、しかも身動き出来ないの
このままだと、ずっと汚れた身体って
安全協会、キサマだけは絶対に許さねえ、顔見せろ、絶対にぶん殴る。
怒りを募らせる、あたしだったが・・・・
この後10時間、あたしはこの格好のまま放置される事になった。
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