第26話 再会とファーミーティアの福音

【イシュメラーナ星系】


そうしてイシュメラーナ星系に到着した僕達


「メルク、すまないこれの修復を頼む」


≪リンカーとクリサリスが2個だな、情報は子機と共有している≫


「アウタセルも置いていくが、くれぐれもリンカーとクリサリスの

 修復を優先で頼む」


≪わかってるが、リンカー修復後にリンカー内に残った情報を確認してから

調整を行うから少し時間が必要だな≫


「ああ、こちらも1人、クリサリスの装着と適応が終わらないと

 リンカーの調整は出来ないからね、

 クリサリスの修復が終わったら教えてくれないか?」


≪わかった≫


 さて、すこし時間が出来たな、これからどうするか。


「あの、アースライさん、少し私につきあってもらえますか?」


「ミーシアさん。どうしたの?」


「ぜひ、来ていただきたい所があるんです」




【ファクマス星系第4惑星】


僕は、シルキスタでファクマス星系にやってきた。


そこで迎えの小型宇宙船に乗って第4惑星の地表に降り立った。


ここに降りるのはエッグを設置しに来て以来だな。


そこは地表に仮設のユニットハウスが立ち並ぶ一角だった。



「どうぞ、アースライさん。ここですよ」


ミーシアさんに、手を引かれて僕は惑星の土を踏んだ。




「よー、アースライ。無事で何よりだ」


ミーシアさん、探さないでって言ったよね。

・・・・・・・・・ダメだ、涙で見えない。


。ご無事でなによりです。

 すみません、僕はまだ金持ちでも無いですし、土産も忘れてきました」


ダーナンさんは足で地面を踏み鳴らしながら。


「バカ野郎、なに、泣いてやがる。

 こんなを貰って、

 これ以上貰えるもんか」


「ダーナンさんだって、その声泣いてるでしょう。

 今度は惑星一面のイモ畑を見せますから来てくださいね」


「おおよ、絶対に行くからな。まあ立ち話もなんだウチに入ってくれ」


「はい、おじゃまします」


僕はミーシアとダーナンさんのお宅にお邪魔する事になった。


中には30歳くらいだろうか? 勝気そうな女性が・・・え? お腹が大きい?


「こんにちは、騎士様、ミーシャ様。ダーナンの妻のキリエスです」


「ダーナンさん、結婚されたんですか?」


「ああ、こっちに帰ってきてすぐにな」


「おめでとうございます。今、本気で手ぶらなのを後悔してます」


「お前だって婚約したんだろう。婚約おめでとうじゃないか」


「そういえば、そうでした。しかしダーナンさん、

 よくあの状況で無事に生き残れましたね」


「ああ 酷ぇ目にあったよ。

 ポッドが運悪く破壊された小型艦にめり込んじまってな。

 小型艦ごと攻撃されてたんだが、

 小型艦の推進器がまだ生きてたみたいで誤作動して暴走を始めたんだ」


「暴走ですか?」


「ああ、それであさっての方向に飛ばされてな、

 緊急信号の発信機は生きてたから小型艦の物資を漁って、

 なんとか1ヶ月生き延びた」


「さすがですね」


「アースライの方はどうだった?」


「僕の方はポッドとライフスーツは穴だらけで右足を灰にされましたが、

 ダーナンさんに持たせてもらった補修材メルトのお陰でなんとか生き残りました。その時、偶然拾ったのが遺跡文明のライフスーツだったので、

 それを装着してなんとか生き残りました」


「お互い、運がよかったな」


「まったくです」


「すみません、アースライさん。

 今は住民の避難を優先させてダーナンさんを探すのは、

 その後と言ってましたが、

 あなたの辛そうな顔を見て我慢できずにイシュメラーナ政府に

 捜索を依頼しました」


「いや、自分でも探すつもりだったからね、ありがとう」


「俺も驚いたよ、政府から名指しで探されたんだからな」


「お騒がせして申し訳ありませんでした」


そうして4人で談笑していたんだけど、少し気になって・・・


「ところで、ダーナンさん。この第4惑星の気候は落ち着いてきたと思いますが、

 遺跡文明のテラフォーミングなので前例はありません。

 何か問題は起きてませんか?」


「いや、驚くぐらい問題が無い。

 今、この惑星で問題があるとすりゃ人口比くらいだろ」


「人口比ですか?」


「おお、おそらく恒星が高温期に入ったせいらしいんだが、

 ここ数十年の男女比が女性が生まれる数が多くなってな、

 だいぶまずい状況らしい」


「うちの故郷からすれば、うらやましいですね。

 うちは男が数万人は余ってますから」


「ちょっと待ってください。アースライさんの故郷って?」


どうしたのミーシアさん?


「惑星ファーミーティアって所だけど?」


「男性が多いのですか?」


「それもあるかもしれないけど、

 兄貴が言うには農業惑星ってキツイイメージがあるから

 若い女性が近くに来てくれないらしいよ。

 実際、今時の農業は人工知能制御で人間がするのは組合との折衝や

 イベントの企画ぐらいなんだけどね」


「独身男性が1万人ですか?」


「長男だけでね、実際には数万人規模だと思う」


「アースライさん、星系間のお見合い企画やりましょう。

 ブランシェなら1000人の花嫁候補を連れて行けます」


「そんなことをしてもいいの? 多分、ウチの兄貴なんか涙流して喜ぶけど」


「アースライさんのお兄さんですか?」


「宇宙に出る時にこんな物まで渡されたんだよ」


と兄貴のホロカードを取り出した。


筋肉質の兄貴の映像が浮かび上がる。


『始めまして。俺はファンダン星系内、

農業惑星ファーミーティア住む農業従事者でプラグレイ・グランクラフトです。

俺と共に人生を歩いてもらえる方を探しています。

ぜひ俺が生まれ育ったこの大地を見に来ては貰えないでしょうか?

貴女の事は俺が命がけで守ります。』


「兄貴に、こんな物まで渡されたんですよ」


「アースライさん、コレ貸してください」


「コレをですか? いいですけど」


「イシュメラーナ側としても放っておけない状況なんです。

 かならず纏めますから少しだけ時間をください」


兄貴は喜ぶだろうけど、とんでもない事になったな。



「では、ダーナンさん。次は出産祝いを持ってきます」


「おうよ、また必ず来いよ」


「はい、なんだか兄貴の嫁探しに貢献できそうな話も出てきたので、

 こちらに来る機会も増えそうです」


「めでたい事が多いといいな」


「まったくです、じゃあ」





【農業惑星ファーミーティア】


この日、惑星ファーミーティアには福音が訪れた。


「兄貴、花嫁候補を1000人連れてきたぞ」


「でかした、弟よ。対価はなんだ? 何が欲しい? 土地の権利か? 

 花嫁1000人が対価なら俺は組合相手でもケンカするぞ」


「兄貴、惑星開拓に参加出来る次男坊・三男坊を1000人

 向こうに連れて行きたい。 向こうでも大勢、花嫁候補が待っているんだ」


「そんなもの、頼まれなくてもやってやる。だが1000人か? 暴動が起きるぞ」


「何を言っている兄貴、こんなの第1弾に決まっているだろう。

 もめている暇があったら、さっさと送って、次の花嫁候補を連れてくるぞ。

 第2弾、第3弾もだ。花嫁を待たせるわけにはいかないだろう」


「当然だ、花嫁と畑は待たせないのがファーミーティアの流儀だ」


「それでこそ兄貴だ。その調子で第1回のお見合いパーティーも頼んだぞ」


「・・・待て、俺もお見合いをするのか?」


「俺が主催するんだぞ、兄貴が出てくれないでどうするんだ。

 大丈夫だ、兄貴のホロカードは向こうで10万人以上の女性が見ているぞ」


「10万人だと・・・・・・どっちだ?」


「ん、兄貴。顔色が悪いぞ」


「弟よ、どっちのホロカードを見せたんだ? 」


義姉あねになるかもしれない人に自慢の兄貴を見せるんだ。

 当然リアルな兄貴のホロカードだろ」


「弟よ~~~~~~~ありがとう、本当にありがとう」



「アースライさん、兄弟の話で盛り上がっている所すみません。

 ファーミーティア政府との話を進めてもいいですか?」


「ああ、ミーシアさん。すみませんが、よろしくお願いします」


「弟よ、そちらの女性は?」


「向こうの、ファクマス星系の代表で来てくれたミーシアさんだよ」


「はじめまして、お義兄さん。ミーシア・サンサードと申します。

 アースライさんに星系ごと救われて、

 残りの人生をアースライさんの為に使うと決めた女です」


「はじめまして、プラグレイ・グランクラフトです。弟の恋人の方かな? 」


「いえ、アースライさんには婚約者がいらっしゃいますから。

 私は、その方の許可を頂いて傍に居させて頂いているだけですわ」




その場の雰囲気が凍り付いた・・・兄貴、どこに連絡してるの?


「弟よ、今、連絡した・・・緊急家族会議が必要なようだな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る