第1部 最終話 イシュメラーナの終焉と誕生

【イシュメラーナ星系 機動衛星制御室】


ここは・・・惑星ホパリアから最後の輸送船が出て、


僕たち以外、誰も居なくなったイシュメラーナ星系。





機動衛星メルクの制御室には


僕とルジュ、アリシアとサイファ、そしてミーシアさんとチェリムだけだった。




モニターには老齢期に入って高熱を発するようになった恒星。


このまま数千年か数万年の高温期を経てから、この恒星は冷えて行くのだろう。




「ミーシアさん、今回のイシュメラーナからの移住・・・

 いいかな?」



もう、あの痩せこけていた時の面影は残っていない。


23歳、カッパーオレンジの艶やかな髪をした健康的な美女がそこにいた。



「こんな所に来たのは、それを話す為だったんですか?

 やっと言ってくださるのですね。

 さて、いったい何でしょうか? 何としても手に入れてみせますよ」


「大丈夫だよ、本当は誰の物でも無いけど、

 おそらくもうのはずだから」


「必要とされなくなった物ですか? なんでしょう? 言ってみてください」


「ミーシアさん。今回の報酬としてを貰うね」


「え?」


「僕は、今回の騒動の原因、イシュメラーナの恒星あの星をもらうよ」


「あの恒星ほしなんですか?」


「ミーシアさん。恒星あの星終焉終わりを見るつもりはあるかな?」


ミーシアさんは、少し考え込んでいたが・・・


「見ます。私くらいはイシュメラーナの最後を見ておかないといけないと思うから」


「そうか、じゃあ見ていてね。イシュメラーナの終焉終わりを」




「メルク、機動衛星の恒星炉は準備出来ているかな?」


≪ああ、既に取り外して格納庫に置いてある≫


「ルジュ【そう】」


『了解、マスター』


「ミーシアさん、アリシア、サイファ、チェリム。ちょっと行ってくるね」


「ええ、いってらっしゃい。アースライ」

『行ってらっしゃいませ。マスター』

「・・・・・・」


「ルジュ、恒星炉を牽引接続して」


『了解です』


「メルク、イシュメラーナの恒星への突入コースをルジュに送って」


≪もう送ってある≫


「ありがとう。ルジュ行くよ」


『はい、マスター。出発します』




恒星炉を牽引したままイシュメラーナの恒星に突入するコースに乗った。


十分に加速してから牽引を外した。


恒星炉は恒星表面に突入していった。


突入を確認して僕らは機動衛星へと帰還していった。




「おかえりさない、アースライ」


「【かい】ただいまアリシア。すまないけど少し休むよ」


「ええ、お休みアースライ」


「ああ、そうだミーシアさん」


「なにかな?」


まで100時間だ。今のうちに見ておくといい」


「・・・わかったわ」







目をさました僕が制御室に行くとミーシアさんが恒星をずっと見ていた。


徐々に恒星の縮小が始まっていく


「ねえ、アースライさん。変な事を聞きますけど、アースライさんって

 ・・・・恒星の活動を押さえられるの?」


「無理だね。おそらく消滅させるか破壊するかのどちらかになると思う」


「そうよね、昔の私なら、これを見て、あなたを責めてたかもしれないわ」


「これを実行すれば惑星が焼き尽くされる前の時間稼ぎくらいにはなるからね。

 その後、恒星を失った惑星が何処に行くのか? 地表や大気がどうなっているか?

 惑星を覆う遮蔽シールドがどう影響するのか? 想像もつかないけどね」


「惑星がそんな状態になっても助けようとしてくれてたんですね」


「実際に、その状況になってみないと、どういう行動をしたかなんて分からないよ」


イシュメラーナの恒星が暗く小さくなっていく


「ねえ、アースライさん。あの恒星炉って何なの?」


「今、機動衛星はメルクが動かしていてね、本来の能力は出せていないんだ。

 あの恒星炉が本来の動力炉なんだけど、燃料が空っぽで動かせなかった。

 その燃料として恒星1つ分が必要なんだ」


「あれで本来の性能が出て無いの? あの破壊された状態から復活するし、

 1000万人を乗せたり、大量の物資を乗せて、3年間転移を続けているのに

 推進剤の補給すらしないから【永久機関衛星】なんて呼ばれているわよ」


「そんな名前で呼ばれてるんだ。でも動力炉として繋いでいるメルクが無いと

 僕達が見つけた遺跡文明品の修復ができないんだ」


「それは・・・まずいわね」


「だから恒星が必要だった」


どんどん小さくなっていって、後には機動衛星の恒星炉だけが残った。


「ルジュ、恒星炉を回収に行くよ」

『了解』


恒星炉を回収してきた僕たちは機動衛星に帰還した。


「メルク、恒星炉の接続作業を進めてくれ」

≪了解だ≫





さて、機動衛星の制御室、床に浮かび上がった感応珠の鋼の様な輝きに

僕は、そっと手を触れた。


『個人名の登録を求める』


「アースライ・グランクラフトだ」


『登録した。この機動衛星の命名を希望する』



『名称イシュメラーナ、登録完了しました。これよりチュートリアルを開始します』






チュートリアルを終えて


『お疲れさまでした。マスター』


落ち着いた声の、鋼色の髪の乙女、


きっと戦乙女ワルキューレってこんな女性だったんだろうな


「やっと目が覚めたのか? 君がイシュメラーナだね」


『はい、マスター。今後ともよろしくお願いします』


「ああ、よろしく・・・・・すまないが服を着てもらえないだろうか?」


             第1部  完

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