第16話 連邦代表会議

『GNNガルチノア・ネットワーク・ニュースです。


今回開催される連邦代表会議に先立って会議の開催地である主星ガルチノアに


警備として配置された艦船に関してですが、


惑星警備に不向きな超大型艦が多数参加した事に対する疑問の声が上がっています。


現時点で配置された超大型艦は8隻、警備計画では最終的に12隻の超大型艦が


1つの惑星の衛星軌道に並ぶ事になります。


警備計画では別に20基の対艦衛星設置が記載されており、


主星ガルチノアは連邦代表会議では無く軍事企業各社の展示会では無いかとの


声があがっています。


連邦広報部からは通常の警備計画案であり、


会議に参加する各国代表の重要性を考えれば


現在までの警備計画の甘さを問題にするべきであり、


今後の会議ではこれがスタンダードになるだろうとの


連邦代表からの共同声明の発表がありました』




『GNNガルチノア・ネットワーク・ニュースです。只今速報が入りました。


今回開催される連邦代表会議に召喚されたステラファス王朝ですが、


当初は王家の御座船と所属の騎士が持つ白銀の中型戦闘艦がガルチノス星系に入ると


予想されていました。


只今入った情報によりますと騎士アースライが先ごろ入手したと発表があった


超巨大医療艦と共に10kmクラスの宇宙要塞がガルチノス星系に到着しました。


おそらく白銀の騎士が見つけた新発見の遺跡文明品と思われます。


ガルチノア政府はこの予想外の事態に混乱しており情報収集をすすめています』




『GNNガルチノア・ネットワーク・ニュースです。


 只今、ステラファス王朝から緊急表明がありました。


 内容は次の通りです』


『やあ、連邦所属国家の諸君。


 私はステラファス王朝の国王をやっているダラテス・ステラファスだ。


 どうも昨今、我が騎士の発見した物が世間を騒がせているようなので、


 今回は、開き直って見せびらかしに来た。


 今度見つけたのは全長10kmの機動衛星と言うらしい。


 居住惑星等の拠点防御が目的で作られた物のようだ。


 存分に見て行ってくれ。


 そして、我が騎士の次の発見を楽しみに期待してくれたまえ』




【ガルチノス星系 主星 ガルチノア】


ギダノ重工 会長室


「なんなんだ、あの要塞は・・・」


『機動衛星と言うらしいな』


『全長10kmの武装要塞が転移可能か』


『あの衛星の戦力分析はどうなっている?』


『まったくの不明だ。遺跡中型艦で通常の中型艦10倍程度の戦力と

 

 予想されるために武装要塞の10倍程度の戦力を想定する必要が有る


 と言うのが分析結果だ』


『武装要塞の10倍だと、そんな戦力は1つの星系に集中できないだろう』


『ああ、ナンセンスな数字だな』


「おい、ガルチノア周辺に配備された大型艦が少なくなってないか?」


『すまないが社内で方針の変更が決まった』


『悪く思わないでくれ、ステラファスに表向きの敵対は愚策だ』


『あんなモノを正面から攻撃しようなんて、正気では無理だろう』



『無事な会議の終了を祈っているよ』


『ああ、くれぐれも我々の名は出さないように頼むぞ』


「ガルチノスを見捨てるのか?」


『人聞きの悪い事は言わないでくれ。


 君も連邦代表としての職務を全うしてくれたまえ』


『そうだ、君もガルチノアを消し飛ばされたく無ければ無駄な事は辞めたまえ』


「ここまで準備をして利益分配まで決めていたんだぞ。


 その為の先行投資も既に始まっているんだ。


 連邦代表として、ガルチノアだけでも、この作戦を進めるぞ」


『それはやめたほうが良いだろう。


 もし進めるなら、我々は迷わず連邦代表の解任を決議するぞ』


「そこまでするのか?」


『当然だ圧倒的な力に対して力で対抗するなどバカのする事だ。


 バカでは投資家も社員もついては来ないのだよ』


『予想されるリスクと損害額を考えると、


 あの騎士を絡め手で籠絡する方がマシだろうからな』


『我々も回収不可能な損害を受けるつもりは無いからね。


 決して回収を諦めたわけでは無いよ』


「ギダノ重工の大型艦も直ちに撤退させろ」


『理解してくれて何よりだよ連邦代表』






ガルチノス星系に到着した当初の情報では・・・


主星ガルチノア付近は大型戦闘艦の品評会でも開くのかといった状態だったのが、


実際にガルチノアに近づいた時点では監視衛星1つ残っていない状態になっていた。


ブランシェをガルチノアの軌道ステーションに停泊させて、


ステラファスの御座船から小型宇宙船を出してもらった。





国王陛下と一緒に連邦会議場近くの宇宙港に到着。



「アースライ君、わかっているとは思うが、連邦代表が力押しをやめた以上、


 次に打つ手は絡め手だ。


 君に対して、情に訴えるか? 色仕掛けか? 高価な物か? 


 色々な方法で君を篭絡ろうらくにくるだろうから


 くれぐれも気を付けてくれたまえ」


「わかりました、気をつけます」




ご丁寧に、降船タラップの下からレッドカーペットが続いている。


その赤いカーペットの中央に何か赤茶色の物が見える。



思わず国王とエルネシアさんの顔を見るが、


二人とも唖然あぜんとした顔で動けないでいる。


どうやら普通は起きない事が起こっているようだ。


この宇宙港の警備員だろう2人がやってきて


レッドカーペットの中央にある物に近づく。


どうやら赤茶色の髪の女性が何故かカーペットにうずくまっていたようだ。


警備員に両腕を掴まれて、どこかに連行されていく・・・


「お願いです、白銀の騎士様。どうか我々の星を救ってください。お願いです」


女性の声が聞こえた。




「今のは何だったんでしょうか? 国王陛下。あれが何かの策略なんでしょうか?」


陛下に聞いてみた。


「いや、彼女の事情は私も聞いて知っているから違う・・・」


「星を救って・・・とは?」


「あの娘は・・・連邦所属の星系の代表代理でね、


あの星系は、最近になって恒星が老齢期に移行して高温期に入ったんだ。


ところが居住惑星から人間の避難がどうやっても間に合わないんだ。


あそこは3000光年向こうにある星系で、近くに居住可能惑星も無い。


そこに住む数十億の人間を脱出させて、


その移住先を見つけてに退避を完了させる・・・


そんな事は、おそらく連邦加盟国が総力を結集しても不可能だからね。


連邦議会もごく一部の人間を逃がす以外、打つ手が無いのが実情なんだ」


「そうですか、脱出させる方法も移住させる場所の確保も難しいんですね」




エルネシアさんが腕を組んで考え込んでいる。


「アースライ君、もし、あの機動衛星を持って行っても、


 おそらく1000万人の収容が限度でしょうね。


 少しでも多くの人間を救うなら持って行く事も出来るけど、


 おそらく現地は脱出希望者でパニックになるわ」


「数十億の人間の中で生き残れるのが1000万だとわかったら、


その時点で暴動が起きますね」


「助けに行った星の住人から攻撃を受ける可能性もあるわ。


 あれは軍事国家ガルチノスの仕込みでは無いから我々はまずは会議に向かいましょう」


国王陛下とエルネシアさん、僕とアリシアが会議場に入る予定になっている。


会場で指定された自分の席に座って待っているのだが、


会議の開始時間になっても一向に始まる気配が無い。


他国の代表も来ている場で説明も無いとなると、


周囲からは抗議の声が上がってきた。




そもそも代表議長の席に誰も来ていないのはどういう事だろうか?


やむなく、議長席の隣に座っている白髪のおじいさんが話し始めた。


「すまないが静粛にしてくれ。


どうやら代表議長を務めるはずのチルキダ・ギダノ氏が急病で出てこれないようだ。


開会の挨拶も出来ない状況らしい。


残念だがこれ以上各国の代表を待たせるわけにもいかないので、


私が議長代行として会議の開催を宣言する」


何組かの予定されていた案件について説明があったが、


その後、やっとステラファスの件に移った。


「今回は、ステラファスが発見した遺跡文明の医療拠点艦についての


 説明を求める目的だったと理解しているが、それで間違い無いだろうか?」


 と議長代理が声をかけて来た。


こちらはエルネシアさんが対応する


「ステラファス王家、第1王女のエルネシア・ステラファスです。


 今回は我が国の騎士アースライ・グランクラフトが発見修復した


 超大型医療拠点艦について説明する予定でしたが。


 騎士アースライが発見した機動衛星の修復も一段落しましたので、


 あらぬ疑いを掛けられないように説明の為、実物を持ってきました。


 いくつか判明した事実もありますので、ここで説明を行いたいと思います」


「確かに連邦中が大騒ぎだったな、説明をお願いする」


「はい、まず医療拠点艦ですが艦の人工知能による操作で


 約1000人の個別搬送と生命維持が可能です。


 それと、この艦には10号転移装置が搭載されている事がわかりました」


「・・・9号以上の転移装置は作成不可能とされていたが、


 遺跡文明は実現させていたということか」


「はい、次に機動衛星ですが全長10kmの球形の衛星で


 こちらにも10号の転移装置が搭載されておりました。


 そして防御性能ですが、現状連邦で使用され公表されている


 大型艦の固定装備では破壊不可能と判断されました」


「なるほど、連邦の船では破壊不可能ということか」


「そうなります」


「すまないが、ここまで聞けば、これを聞かない訳にも行かないだろう。


 機動衛星の武装についてはどうなのかな?」


「機動衛星内の情報を解析しましたが地殻型の惑星程度なら


 1撃で破壊出来る性能がありました。


 ただ試射につきましてはステラファスの国王と騎士アースライ双方から


 有人星系での使用は行わないと宣言がされています」


「それは賢明な判断だな」


 こうして、ブランシュと機動衛星を奪われる恐れは皆無となった。

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