第15話 連邦代表会議へ

「エルネシアさん、ガルチノス星系まで通常の転移装置だと300時間、


これがブランシェだと10時間で到着するんだけど、


今回は当然ながら会議に遅れるわけには行かないし


ガルチノス星系には会議の何日前に到着したら良いんでしょうか? 」


「アースライ君が出席する事前協議が有る訳じゃないから


星系への到着は本会議の2日前で十分なんだけど。


おそらく、この星系から出るのを監視されてるはずだから、


会議の350時間前には出発しておいた方が良いかもしれないわね」


「なるほど、それなら出発した後でメルクの様子を見に行ってもいいですね」


「メルクはまだ修復作業中よね? 」


「はい、会議開始の頃には7割位は修復が終わっていると思います」


「それなら父上にも見せて置いた方が良いかもしれないわね」


「でしたら、国王陛下を乗せるのにブランシェにしっかりした船室を


 造った方が良いんじゃ無いですか?」


「そうね、そういう設備も準備しましょうか」






「父上、ちょっといい?」


「どうしたエルネシア」


「いえ、ブランシェだとガルチノス星系まで10時間で到着するから、


 出発を偽装して機動衛星の修復状況を確認に行こうと思うのだけど


 父上はどうする? 」


「なんと、10時間か・・・なら、国王御座船に乗っているように偽装して


 ブランシェに乗っていくかな?」


「それならブランシェの船室を整えようと思ってね」


「それで行こう。準備を進めてくれ」


「ええ、わかったわ」


「そういえば機動衛星の修復状況はどうなんだ? 」


「計画通りなら会議開始の頃に7割完了といった所らしいわ」


「そうか、まあ楽しみにしておくよ」


そうしてブランシェの船室改装が進んでいった。








『ステラ星間ネットワークニュースです。


 本日、国王御座船と騎士艦ブランシェが連邦代表会議出席の為出航いたしました。


 騎士艦シルキスタはメンテナンス中の為、


 今回は超大型医療艦のお披露目もかねてと思われます』







そうしてブランシェは惑星ステラを出航して


お隣の赤色巨星がある恒星系に到着した。




「なあアリシア。ここは隣の(パラキス)星系では無いか? 」


「はい、父上。赤色巨星だけで人が近寄らないここを選びました」


通常航行でメルクのいる機動衛星に向かう。




機動衛星が見えてきたが、出発時に開いていた大穴は


塞がれてもう見えなくなっていた。


「メルク、様子を見に来たよ。外装の穴はふさがったようだな」


≪マスターおかえり。修復は予定通り進んでいる≫


国王は機動衛星を見て何か考え込んでいるようだ。


「アリシア、この衛星は、ココに移動して来たのだな? 」


「ええ、そうよ父上」


「エルネシア、予想ではガルチノス星系はおそらく宇宙船の見本市だろうな?」


「今の連邦議長はギダノ重工の代表でしょ、間違いなくそうなると思うけど」


「いっそ、この機動衛星でガルチノス星系に入ろうか? 」


「さすがに不味くない? 」


「アリシアの言う通り不用意に他国を刺激するのは、まずいでしょう」


「でも、これを隠しておいたら、バレた時に大問題になるぞ


ならばいっそ『ウチの騎士が今度は見つけました』って発表した方が


まだ安心するだろう。


それにな、このタイミングで出しておかないと


アースライ君が見つけてきた時に困ると思ったんだ」


「いくらアースライ君でも、そんなに頻繁にこんな代物を見つけてこないでしょ?」


≪エルネシア王女、実はこの星系でソルコアイト文明品の反応を見つけました。


マスターが来たら報告するつもりだったのですが≫


「「「メルク!!」」」


「しかし、メルクは修復作業中で動けないだろう? 


 文明品の位置情報だけでわかるかな?」


≪少しの間でしたら修復作業は子機だけで大丈夫です≫


「それじゃあ、機動衛星とメルクの接続を解除してもらいおうか?」


≪はい、接続解除を行います≫





僕はルージュを装着してメルクを牽引する


「待って、私とサイファも一緒に行くわ」


アリシアも付いて来た。






メルクの指示で宙域を探索していると・・・


≪反応は小さいですが、このあたりだ≫


「これは?」


「ああ、少し壊れているが間違いなくクリサリスだよな」


≪そうだ。この近くに、もう一ヶ所反応がある、そちらも頼む≫


「分かった」





しばらく捜索した僕たちが見つけたのは砕けた巨大な輪の様な物体だった。


砕けているが輪の直径は500mはあるだろうか。


「メルク、コレなのか? さすがに牽引出来ないだろう。ブランシュを呼ぼうか?」


≪重要なのは輪の途中にある5つのコアだ。


 マスター、コアを切り離すのでコレを牽引していってくれ≫


「分かった、切り離しを頼む」


切り離されたコアを牽引する。


僕はメルクも牽引しているので、僕が2個アリシアが3個のコアを牽引して運んだ






ブランシュに戻った僕達だったが、


まずはエルネシアさんから報告する様に指示があった。


「まず1つ目はクリサリスでした」


「やっと見つかったの」エルネシアさんはうれしそうだ。


「もう一つは巨大なリング状の物体が砕けていました。


メルクの指示で5つのコアだけを回収しました。


これが何なのかはまだ聞いていません。何なのか聞いても良いかなメルク? 」


≪マスター、今回見つかったのは空間転移ポートの片方だ≫


「片方って事は、もう1つ無いと役に立たないの?」


≪もう1つが無事であればこの空間転移ポートを修復する事で


空間転移が可能になる≫


「転移装置とは別の転移方法なんだ。どんな利点があるんだ? 」


≪転移先は固定されるが10万光年程度の転移が可能になる≫


うわ~ みんなが黙り込んだ。


よし、こういう時は開き直って


「10万光年・・・まあ、もう片方が無事なのか、どこにあるか分からないから、


今考えても仕方ない事は忘れよう」


「いや、待って」


「修復して検証すべきよ」


「もし使えれば連邦の歴史に残るか? 連邦の経済がひっくり返るか? 」


そうは言うけどね・・・


「機動衛星の修復途中ですしエッグやクリサリスの修復も手を付けていませんから。


それが終わってからで良いんじゃ無いですか? 


機動衛星の次はクリサリスを修復というか


メルク? クリサリスなら、すぐに修復出来るんじゃないの?」


≪クリサリスの修復なら現在進行中の修復と同時進行でも1時間程度で可能だ≫


「やっぱりそうだよね。クリサリスの修復もお願いね」


≪承知した。クリサリスの修復に取り掛かかる≫


ほどなくクリサリスの修復は終わった。




「エルネシアさん、お待たせしました。」


ルジェの操作でクリサリスの表面に緑の光の珠が浮かび上がる。


『この感応核に触れてください、装着が開始されます』


「だ、そうですエルネシアさん」


「やっと私の番が来たわね。わかったわ、ありがとうアースライ君」


エルネシアさんが膝を着いて感応核に触れると


クリサリスがエルネシアさんの全身を覆った。


額と手の甲と足の甲に緑の光珠が埋め込まれている。


「エルネシアさんの方はこれで大丈夫だな、それじゃあメルク、


 機動衛星への接続を始めてもらえるかな」


『了解だ、マスター』


クリサリスを装着した状態のエルネシアさんと通信を繋いだままにしたメルクに


機動衛星の現状について確認しながら王様と


ガルチノス星系に向かう方法についての話し合いを重ねた。


機動衛星は外装と転移装置は修復出来ているが、


武装とジェネレーターの修復はほとんど出来ていない状態だった。


結論として、結局、どっちで行くかでは無く。両方共持って行くことになった。


ただ300光年の距離はブランシュで10時間程度だが、


機動衛星だと15時間必要になる。


その為、機動衛星の転移を先に始める必要がある。


それにブランシュならガルチノス星系の主星付近まで行けるが、


果たして機動衛星はどこまで持って行って良いのだろうか?


「そういえば、機動衛星を動かすのに登録や資格は必要なんですか?」と聞くと。


エルネシアさんがクリサリスに覆われたままで表情が分からないはずなのに、


なんともいえないあきれた声で


「どこの国も持ってないから資格自体が存在しないわよ」と教えてくれた。


結論として、機動衛星は居住惑星では無い第6惑星の衛星軌道まで


持って行き


居住惑星である第5惑星と主星である第4惑星には近づけない事が前提となった。


万が一機動衛星が攻撃された場合はとっとと転移するようにメルクに指示をする。


ちなみにではあるが、エルネシアさんのクリサリスは


やはり緑の髪と目をしたエルネシアさんの姿だった。


名前はエメリアと名付けられた。


さて、行動を開始しましょうか。

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