第14話 王家の対応

さて僕は、また王家の会議室に呼び出されている。


アリシアの騎士なので、アリシアの後ろに立っていたのに・・・


王様から


『君の(起こした)話なのに、何故ソコ(後ろ)にいるのかね?』


と目立つ所に席を用意されてしまった。



王様が話し始める


「まずは、今回、騎士アースライが起こした騒ぎによる


他国の反応を聞いてもらいたい。


当初、超大型戦闘艦で帰還したという情報があった時点で


近隣国から軍備増強が過ぎると多数の抗議が入った。


その後、医療艦だという続報で、派遣依頼が殺到した」



第2王子


「国内外の医療及び学術関係者から研究調査の申し込みが殺到しています」


皇太子


「マスコミは、もう熱いどころか沸騰状態だ、この王城の中に、


いつレポーターが噴き出してもおかしくない」



エルネシアさんが、疲れた顔で


「正直、これだけでも大変な事態なんだけど。


問題は、これが単なる入口に過ぎないらしいの」



会議室が大きくざわついた。


「エルネシア、その報告は私に来ていないのだが? 」


「父上、私も内容は聞いて無いのよ。


ただアースライ君は、この超大型艦の話が一番無難な内容なので


持って帰って来たの。


他の危ない物は後回しにしてるのよ」


「本当かね? アースライ君」


「はい、この医療艦が一番持ってきやすかったのは確かです。


他は修復も終わってませんし、すぐに使い道の見つからない


もありましたので・・・」


「大きな物って、あの超大型艦よりも大きいのかな? 」


「はい」



会議室に一斉に深いため息が流れた。


家族だな、タイミングまで一緒だ。


いや、アリシアは内容を知ってるだろう?




「みんな、いいか? 国王の名のもとにココで話した内容は秘密にする事、いいね?


さあ、アースライ君、君は一体何を見つけたのかな?」


「はい、僕が見つけたのは全長10km程の拠点防御用の機動衛星です」


国王はほっとした様子で


「確かに拠点防御の衛星なら大きいな、


でもそれなら衛星が移動出来る訳でも無いし大した問題にはならないだろう? 」


アリシアが殊更ことさら冷静な声で


「父上、悪いけどコレは遺跡文明の産物よ。


もう転移装置の修復は終わっていて、移動可能なのも確認済。


武装に関しては公表どころか我が国の調査もやめた方がいいかもしれない」


王様の顔が引きつる


「転移出来るのか?」


「10号転移装置という、ふざけた物が搭載されてるの。


 もう転移させて近くで修復中」


「10号転移装置か、発表出来ないな、これは」


「父上、実はもう一つ遺跡文明品の方が危険度は高いの」


「いや、アリシア。あれは兵器でも無いし安全だろう? 」


「アースライ、機動衛星を持ってたら他国は襲って来なくなるけど。


アレを持ってると知られたら、国同士で奪い合いで、最悪、戦争が起きるわよ」


「なんだ、その物騒な代物は?」


「遺跡文明品のテラフォーミング装置よ」


その時、会議場から一切の音が消えた。



国王が絞り出すような声で


「そんな物が実在するのか?」


「現に実在して修復の順番待ちをしてるわ」


国王は考え込んでしまった。




しばらく沈黙が続いたが、国王は唐突に口を開いた。


「アースライ君、アリシアの事をよろしく頼む」


「「え?」」


「まあ、第1、第2王女よりも先に第3王女から結婚させるのは、


順番がどうかと思うがこの際問題にしないようにしよう」


エルネシアさんがニッコリ笑って


「そうよ、アリシア。あなたもうアースライ君に全部見せてるんだから、


この機会にもらってもらいなさい」


「全部は見せて無いわよ」


「サイファのを全部見られてるんだから一緒じゃ無いの」


「私とサイファは違うわよ」


「背中のホクロの位置まで一緒だったわよ」


「私のは見られてないわよ」


僕も急な話に驚いて


「すみません、どうして急にそんな話になるんでしょうか? 」


国王は、ひとりウンウンと頷きながら・・・


「おそらくアースライ君に対する各国の取り込みが始まるからね、


 先に対策しておかないと」


「父上、それにしても急ですよ」


「いや、アリシア。君も王家に生まれた以上、


我が国の国益を考えてもらわなければならない」


「国益って言われても」


「少なくとも王女の内、誰かとの婚約を発表しておかないと


国としては他国からの縁談を断る事も出来ないんだ。


強国が戦力をちらつかせて、ねじ込んできたら


国民の安全の為に会わないわけにはいかなくなるしね。


婚約を発表したら、おそらく数万のお見合い依頼が数百に減ると思うよ。


それともアリシア、アースライ君とはイヤかな? 」


アリシアが顔を真っ赤にして黙り込んだ。


「それなら・・・しかたないな、エルネシアとの婚約を発表するか」


「わ・・・わた・・・」


「どうしたね、アリシア?」


アースライの婚約者になるわよ」


「よ~し、星系中に発表と2人の婚約会見を用意するぞ~」


国王の、その声とほぼ同時に第1王子の通信機に通知が入った。


「父上、緊急連絡です。3ヶ月後、連邦代表会議の緊急開催が決定されました。



場所は現在の連邦代表議長がいる、


ガルチノス星系 主星 ガルチノア連邦議長の名前で、その時に我が国の代表と


騎士アースライ・グランクラフトの同行を求められています」


「早速動いたか、それにしてもガルチノスか、おそらく軍事国家が組んで


 超大型艦の接収とアースライ君の取り込みに動いたな」


「ガルチノスって、軍事国家なんですか?」


なんで軍事国家が連邦の代表なんてできるんだろう?


「軍事国家といっても軍事独裁者が代表をしているわけでは無いよ。


 軍事企業が星系の主幹産業だから軍と企業連合が中心になって


 行政を統括しているんだ」


「それなら、いきなり拘束されたり強制連行とかは無さそうですね」


「その分、色々な企業の思惑が絡むからね。


一般人に見える企業スパイや経済マフィアみたいな連中が


出てくる可能性もあるから気をつけて」


それはそれでイヤな奴らだな


「ガルチノス星系までは遠いんですか?」


「ここから300光年といったところかな」


「国王陛下、今、シルキスタはメインジェネレーターを取り外していますから


普通の中型艦並みの性能です。


ブランシェを運用するには、僕自身まだ資格が取れて無いのですが?


どちらで向かいましょうか?」


「エルネシアが同行すれば、資格関連はクリアできるだろう。


軍事国家が連合でくるなら戦闘艦のシルキスタよりも


医療艦のブランシェの方が相手の思惑をかわせるかもしれないな」




『星間ネットワークニュースです。連邦代表会議の緊急開催が決定されました。


開催は3ヶ月後、ガルチノス星系 主星 ガルチノアで行われます。


今回の緊急開催は我が星系の白銀の騎士アースライ氏の功績に対する


各国の牽制と見られています』



『星間ネットワークニュースです。おめでたい話が入ってまいりました。


先ほどステラファス王家第4王女であるアリシア・ステラファス殿下と


騎士アースライ・グランクラフト氏の御婚約が発表されたました。


まもなく王宮の特設会場でお二人の婚約発表と公式記者会見がはじまる模様です』




【王宮特設会場 公式記者会見】


「アリシア王女、騎士アースライ、この度はご婚約おめでとうございます」


「「ありがとうございます」」


「この度の急な婚約発表は何か理由があったのでしょうか? 」


「いえ、特に理由はありません、以前から、その予定でしたが、


彼女は公務に忙しく、僕は騎士としての基本的な知識や技術を身に着ける時間が


必要だったので、結果的にこの時期になりました」


「そうでしたか、お二人の馴れ初めは宇宙でしたね? 」


「はい、彼女が乗っていた脱出ポッドを僕が救出したのが出会いですね」


「初めて王女を見た時はどんな感想を持たれましたか? 」


「彼女の金色の髪が非常に印象的でした(それ以外顔も見てませんでした)」


「王女殿下の方は騎士アースライにどんな印象を持たれましたか?」 


「初めて会った時、彼は重装甲タイプのライフスーツを着ていたので


顔は見えなかったんです」


「それは怖かったのでは無いですか?」


「ええ、海賊かと思って生きた心地はしませんでした(半分死んでたけどね)」


「では、騎士アースライの顔を見たのは、その後だったんですね」


「はい、彼の船に乗って治療を受けている内に意識を失いました。


その後意識を取り戻して船の中で食事をした時が顔を見た最初ですね」


「どういう印象でしたか?」


「私と変わらない年齢に見えた事に驚きました。


今でもそうですが、彼といると驚く事ばかりが起こります」





「これから騎士様は連邦代表会議に召喚されていますが、


 騎士様はどういう対応を取られますか?」


「はい、おそらく最初の情報が超大型戦闘艦という誤報でしたので、


その訂正に行ってきます。


実際には医療拠点艦という遺跡文明の病院船ですから


災害派遣や地域貢献にも使える便利な物という印象です。


こういった内容を説明すればわかって頂けると思っていますので、


事実の説明に力を入れたいと思います」


「なるほど、言葉で説明すればわかってもらえるという事ですね? 」


「はい、丁度いい機会ですので近隣星系への婚約披露も兼ねて


色々な星系に挨拶に伺って星系間の友好にも努めたいと考えています」


「それは、素晴らしい考えですね」




「次に、アリシア殿下。


今回王家では第1、第2王女より先に婚約を発表された事で一部の国民から、


それを気にする声が出ているようですが、それについてはどう思われますか?」


「私自身、婚約発表は少し早いかなと思いましたが、


 彼が行動する時に一緒に居る為には


 婚約発表をするしか無いという結論に至りました。


 これからは彼と一緒に広い宇宙を見て行きたいと考えています」


「なるほど、これからはお二人が行動を共にされる事が増えるわけですね」


「はい、いつも一緒に居たいと思っています」




「騎士様に質問ですが、騎士様の出身惑星やご経歴について推測がされています。


一説には過去に別れたステラファス王家の血筋等という話まで出てきていますが


それについてはどうでしょうか?」


「すみません、そんな話が出ているんですか? 


 故郷や実家に迷惑が掛からないように非公開にさせていただいていますが、


実家は代々農業従事者です。


兄がおりますので惑星の外で働く事を許してもらいましたが、


ごく普通の一市民ですよ」


「そうなのですか? 他にも古代遺跡文明の末裔や平行宇宙から来た等、


20種程の噂が流布されていますが?」


「いやいや、そもそも僕の名前は 地上で生きろアースライ大地に作られた者グランクラフト ですよ、


思い切り農業従事者の名前じゃないですか」


「騎士様、どうやら連邦公用語に地域差スラングが出来てしまっているようですね。


騎士様のお名前はステラファスだと 大地を統べるアースライ偉大なる創造者グランクラフト になります。


ここまで派手なお名前はちょっと思いつきませんよ」

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