第13話 波紋

そうして僕はメルクをパラキス星系に残して


ステラファス星系に戻る事になったのだが・・・・


「エルネシアさん・・・苦しいです」


 僕は今、ブランシェの制御室でエルネシアさんに首を絞められています。


「セシィ、こっちも苦しい」


僕の横ではアリシアに黙って置いて行かれたセシリアが抱き着いている。


セシリアの腕に力が込められたままの状態で詰問を受けている。


「アースライ君、なんでを拾って来ちゃうのかな?」


「すぐに持って帰れるのがコレだけだったんです。


せっかく行ったのに手ぶらで帰ったらカッコ悪いじゃないですか? 」


「カッコ悪いからって、こんなをいきなり持って来ちゃダメでしょう?」


「でも、コレ医療拠点艦らしいです。


 医療ですよなイメージで良いじゃ無いですか? 」


「遺跡文明の医療拠点艦なんて以外の何物でもないわよ。


 コレを発表したら連邦中から研究団体学者関連企業商人が団体で押し寄せてくるわ」


「でも、このブランシュもシルキスタと同じジェネレーターと


 転移システムですから、こんなの見せたら大変な事になりませんか?」


「同じなの?」


「ジェネレーターは代用品メルクを流用してるシルキスタと違って純正品ですし


転移システムに至っては上位互換品だと思います。


そもそも10号転移装置って初めて見たんですが、


これ扱う資格はどれになりますか?」


「10号どころか9号だって連邦には存在しないわよ、なんて物を拾ってきたの?」


「これが一番だったんです」


「そんなわけ、ありますか」


「本当なんです。ところで、この船で帰ってちゃいましたけど、


 発表はどうします? 」


白銀シルキスタの騎士が遺跡文明の超巨大艦を見つけた。どうやら医療艦らしい、


 専門家による調査を開始する・・・こんな所かな?」


「エルネシアさん、よろしくお願いします」


「ブランシュに質問するのに艦のスペックや機能については私が聞くにしても


 医療技術の専門家にも来てもらわないとダメね」


「ブランシュの中にフードクリエイターを確認しましたと


 カレナ王女にお伝えください」


「そっちは見つかったんだ。わかった、伝えておくけど、


 あの娘、今度は前のクリエイターとの違いを検証し始めるんじゃないのかな? 」


むこうではアリシアも責められている。


「それで、殿下は、私に黙って予定をキャンセルして


 2週間も居なくなったわけですか?」


「いや、さすがにセシィは連れて行けないわよ」


「どうしてですか? 小形宇宙船を準備してでも殿下についていきますよ」


「クリサリスなら無補給で1年以上動けるわ、


 小型宇宙船だとどれ位の物資が必要か分からないのよ、危険過ぎるわ」


「じゃあ、アースライさん。私にもクリサリス下さい」


こっちにも流れ弾がきた――――


「ごめん、今は無いしエルネシアさんの先約もあるんだ。


 入手がいつになるか予想もつかない」


「殿下、今度は必ずついていきますからね」


 そうしてステラファス星系に戻って来た僕達だったけど


 僕はまず


【中型航宙船舶責任者】


【中型航宙船舶操作】


【転移装置操作技術者(5~8号)】を取得した。



現在は【中型航宙船舶機関取扱技術者】を読み込んでいる。



そして大型医療拠点艦ブランシュを入手した事で僕の受講予定には・・・


【航宙航法士(星系外特定航路)】


【航宙航法士(星系外全般】以外に


【大型航宙船舶責任者】

【大型航宙船舶操作】

【大型航宙船舶機関取扱技術者】が追加された。



『星間ネットワークニュースです。


白銀の騎士アースライ氏が、今度は超大型宇宙戦闘艦を発見


その船で帰還しました。


星系監視システムは全長2000mの超巨大宇宙戦闘艦の


星系侵入の一報に一時騒然となりました』



『続報 超大型宇宙戦闘艦、実は遺跡文明の医療拠点艦だった。有効利用に期待』




【ガルチノス星系 主星 ガルチノア】


ギダノ重工 会長室


「ステラファスの話は聞いたな?」


『ああ、2000m級の遺跡艦を発見修復して稼働させたようだ。


それより前に500m級の中型戦闘艦を発見修復して運用している。


どうやら遺跡文明品を修復するノウハウを持っているようだな』


『こちらにも情報は入っている。


 どうやら中型艦1隻でカーモンド・ファミリーの


大型艦1隻と中型艦7隻を行動不能にしたようだ』


『その戦闘艦を入手出来ないか? 


中型艦でこれなら2000m級の超大型艦の戦闘能力はどうなる?』


『どうやら超大型艦は医療艦いわゆる病院船らしい。


その分、学会や医療関連企業が大騒ぎしているようだ』


『これはステラファスに釘を刺しておかないといけないな』


『時代遅れの王国なんて物に、今更影響力を持たれても困るな』


『騎士とやらはどうする?』


『若造一人ならだろう? 』


「このメンバーなら連邦代表会議の緊急開催が可能だ。


表向きはステラファスの急激な戦力増強を脅威とみなして


弁明の機会を与えるからという理由で出頭させる。


このガルチノアに戦力を集中させて超大型艦を連邦の共有としなければ


敵とみなすと脅しをかける」


『えらく直接的な方法だが、その分効果的か?』


『では各自が最大戦力を持って来る事で良いのか?』


『さすがにステラファス相手に最大戦力は可哀そうではないかね』


『いや、他国に見せつける目的もある。ステラファスには見世物になってもらおう』


『各企業大型艦の見本市だなこれは』


『大型艦だけでなく対艦衛星を並べても良いんじゃないか?』


「君らはガルチノアをハリネズミにするつもりかね?」


『連邦軍の主力艦隊でも突破は難しいのでは無いかな?』


『ますますステラファスが可哀そうになってきたよ。


 君達、超大型艦を接収した後は優しくしてあげなくてはいけないよ』


『もちろん優しくするさ、これだけ連邦の発展に貢献してくれるのだからね』


『何を言っているんだ。我々の企業に貢献してくれるの間違いだろう』


『結果は同じなのだから良いじゃないか


『確かにそうだが、あまりにもあからさまなのは困るよ、


マスコミがうるさいからね』

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