第18話 イシュメラーナ

【ブランシュ制御室】


唐突に国王陛下に聞かれた


「アースライ君、君はエッグを使うつもりかな? 」


これに関しては正直に答えた。


「わかりません。


 エッグを修復して惑星に使用して居住惑星になるまで


 どれだけかかるかなんて想像もつきません。


 そもそもテラフォーミングなんて年単位の事業でしょうから


 避難に間に合うか不明です。


 当てにならない物を計算に入れると碌な事がありませんから」


「そうか・・・」


「それよりも、王様。往復2週間の予定なんですが、

 

 1000万人の受け入れ準備1ヶ月で出来ますか?」


「ステラファスの方は、なんとかしてみるが、


 おそらく1000万人の搭乗には、もっと時間がかかると思うよ」


「そうですね、こればっかりは予定通り行きそうにないですね」




【イシュメラーナ星系】


『イシュメラーナ星系の皆さん、イシュメラーナ星系代表代理として


 連邦会議に行っておりましたミーシア・サンサードです。


 星系退去の船と避難先が確保出来ました。


 今回の機動衛星に1000万人が搭乗可能です。


 1000万人の搭乗を確認次第出発しますので


 地上からの脱出を進めてください。


 受け入れ先も確保出来ました。


 全員避難出来ますので安心して搭乗を進めてください』


『こちらはイシュメラーナ星系代表のイクラエ・サンサードだ救援を感謝する。


 状況を確認したいので、そちらにいるミーシア・サンサードを


 一度こちらに送ってもらう事は可能だろうか?』


『こちら、この機動衛星の責任者、ステラファス星系の騎士


 アースライ・グランクラフトだ、悪いが、その要求には答えられない』


『なぜだろうか?』


『彼女は、このステラファス星系の機密兵器である機動衛星内にいる。


 そちらに送るとなると、その機密保持に支障が出る。


 それでも送れと言うなら、かなり非人道的な処置を行う必要がある。


 それと今回の報酬を約束したのは彼女だ、本人が居なくなって


 それを踏み倒されては困るのでな』


『いったい何を報酬として約束したのかね? 』


『それを答える必要性を感じないのだが』


『要求には答えて貰えないのか? 』


『当然だ、それより1000万人の搭乗完了予定は何時だ? 


 2週間以内に搭乗しないと受け入れ先を待たせる事になるぞ』


『待ってくれ、2週間では無理だ』


『時間が無いのはの都合だろう?』


『女性と子供と病人を優先させたいんだ』


『選んでる余裕があるならさっさと送れ。それと病院の座標をすぐに送れ、


動かせない様な病人は優先して生命維持装置付きのポッド


【コクーン】に入れてそのまま運ぶ、今回は1000人限定だ』


『維持装置付きのポッドがあるのか?』


『機動衛星と医療艦の2隻で来た医療艦の方は


 【コクーン】に入れたままの輸送になるぞ。


まさかと思うが、乗り込むだけじゃ無く降りるのに


2週間もかからないだろうな? 』




こうして人の積み込みを開始したものの・・・


『まさか乗り込むのに20日も掛かるとはな』


『なんとか1000万人を積み込めた』


『イクラエ代表、安心している所悪いが、向こうで人を降ろすのに2週間とみて


次は4週間後に来るからな、1000万人を準備しておけよ』


『4週間後? 別の船じゃ無いのか?』


『1000万人積める船は他に無い、病人1000人も忘れるなよ、


 じゃあまたな』


≪マスターいいか? ≫


「どうしたメルク」


≪機動衛星の修復は完了した。ただ私が代行している恒星炉も


 エネルギー不足で稼働不能、疑似人格も休眠モードのままだ≫


「そうか、すまないが恒星炉の代行を続けたまま、


 引き続きエッグの修復に取り掛かってくれ」


≪承知した。エッグの修復完了は1000時間後の予定だ≫




【ステラファス星系】


『イシュメラーナ星系の皆さんミーシャ・サンサードです。


 只今ステラファス星系に到着いたしました。


 今後は指示に従って頂き下船していただきます。


 下船が完了次第イシュメラーナ星系に向かいますが


 生命維持装置は停止して移動しますので船内に残らないようにお願いします』


「それでも下船に10日かかるのか」




【イシュメラーナ星系】


『イシュメラーナ星系の皆さんミーシャ・サンサードです。


 次の1000万人の避難と1000人の病人の避難を開始してください』


『本当に4週間で帰って来るとは驚いたよ』


『機密扱いなのは判って貰えたようだな。さっさと乗ってくれ』


「準備して、丁度2週間か・・・」




【カルツナック星系(ダリアス代表の星系)】


『イシュメラーナ星系の皆さんミーシャ・サンサードです。


 只今、カルツナック星系に到着いたしました。


 今後は指示に従って頂き下船していただきます。


 下船が完了次第イシュメラーナ星系に向かいますが


 生命維持装置は停止して移動しますので、船内に残らないようにお願いします』


『ダリアス代表、受け入れありがとうございます』


『いや、騎士殿に貸しを作れるなら安い物だろう』


『そう考えて頂くとありがたいです』


『それに非常事態に手助けすると、国民のイメージが良いのでね』


『さすがですね』


『では航海の無事を祈っているよ』


『ありがとうございます、ダリアス代表』




【ブランシュ制御室】


≪マスター、エッグの修復が完了した≫


「メルク、ありがとう。エッグについての情報で分かっている事があれば、


 ルジェに送ってくれないか?」


それを聞いて、重苦しい雰囲気になっている


「さて、聞いての通り、エッグの修復が完了した。問題は、これの使いどころだな」


エルネシアさんに念押しされた


「アースライ君、本当に使うの? ヘタをすれば3000光年の果てに


 エッグを捨てる事になるわよ」


「まあ、保険と実験ですね。実際に使って見ないと


 作動時間も分からないようですし」


ミーシアさんが、耐えられなくなって聞いて来る


「あの、そのエッグって何をする物なんですか? 」


なるべく軽く聞こえる様に


「ああ、イシュメラーナ星系からの退去が間に合わなかった時の保険だよ」


「保険ですか?」


「ミーシアさん。イシュメラーナ星系の近くでいくつかG型位の恒星を持つ


恒星系は無いかな?」


「G型の矮小恒星なら、近くに、いくつかあったと思います」


「あとで良いから、その座標ばしょを教えて?」


「・・・はい」


ミーシアさんにいくつか座標ばしょを教えて貰う。





機動衛星メルクとブランシュで、2ヶ所の恒星系を調査する・・・


「イシュメラーナ星系から6光年のトラーリム星系の第3惑星か


 8光年のファクマス星系の第4惑星が恒星との距離としては良い位置にあるな。


 公転軌道はどうだろう? 」


「ファクマスの公転軌道の方が安定してるね、


 ただ、自転速度がちょっと速いんじゃない?」


≪自転速度はエッグが調整してくれるから問題無い≫

 

「よし、エッグの使用はファクマス星系の第4惑星に決める。


 メルク、エッグってどう使うんだ?」


≪クリサリス装着状態なら惑星上で起動可能だ。


 北の極磁点付近で使用するのが1番効率がいいようだ≫


「ファクマス星系の第4惑星に寄ってエッグを使用、


 その後、イシュメラーナ星系に向かう」



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