第11話 白き医療船
メルクにシルキスタとの接続解除と格納庫への移動を
格納庫に行くと、黒い眼球のようなメルクが既に置かれていた。
ルジュにメルクの牽引接続を頼む、これで移動準備が完了した。
「アリシアの方は大丈夫かな?」
「ええ、いつでも行けるわよ」
「じゃあ、メルク、位置の指示を頼むね」
≪承知した、まずは第8惑星軌道に向かう。
ルジュとサイファにも座標を送ったのでここに向かってくれ。
現地到着までは90時間程度だアースライはコントロールを
ルジュにまかせて適時睡眠をとるようにな ≫
「ああ、そうだな。じゃあ、ルジュしばらくコントロールを頼むよ」
「了解しました。マスター」
そうして、僕たちは出発した。
≪ルジュ、マスターは眠ったか? ≫
「はい、深度睡眠に入りました。これから20時間睡眠状態を維持します」
「アースライ、大分無理をしているたみたいね」
≪ああ、もともと宇宙への興味が強かったようだからね。
それが思わぬ形で叶うのだから無理もするだろう≫
「でも、メルク。あなたはあまり表に出ないわね? 」
≪アリシアだから話すが、私の存在は公になった場合大きな問題に成りかねない。
だから多少高性能なジェネレーターの振りをしているのさ ≫
「いや、多少じゃないからね。でも姉様にばれたら分解されるかもしれないわね」
≪分解されるのは困るな≫
「マスター、おはようございます」
ルジュの声で目が覚めた。
「おはよう、ルジュ。僕は何時間寝てたのかな?」
「20時間お休みでした」
「そんなに寝てたんだ。メルク、アリシア、ルジュ、サイファゴメンね」
「マスター体内の疲労物質がかなり減少しています。
マスターの体感はいかがですか?」
「ああ、頭がすっきりしているよ。
睡眠は大事だな、今なら講習も進む気がするよ」
「そう、おっしゃると思って講習内容を私の記憶域に転写しておきました。
いつでも閲覧可能です」
「それは、ありがたい。早速始めるとするよ・・・どうしたのアリシア?」
「いえ、私の騎士の勤勉さを褒めたら良いのか、あきれたら良いのか考えていたの」
こうして講習と休息を入れながら、僕たちは目的地にたどり着いた。
≪このあたりに浮遊しているはずだ、それほど大きくは無いな。
すまないが探してくれ≫
「わかった」「わかったわ」
しばらく周囲を探索していたが、アリシアから通信が入った
「たぶん、これかな?」
アリシアの元に向かうと妙な物が浮いていた。
「一抱えくらいの緑色の歪んだ卵?」
≪なんと、エッグか≫
「エッグ? メルク、これ何をする物なの?」
≪君たちの言葉に無理矢理直すと【惑星住環境適応化装置】になるのかな?≫
「クリサリスに似た装置?」
≪いや、君達を適応させるのでは無く。非居住惑星を居住可能にする装置だ≫
「テラフォーミング装置なの? この小さいのが」
非居住惑星のテラフォーミングなんて国家事業だよね
「メルク、こんなの修復出来るの?」
≪修復可能だが、1,000時間程度は必要だろうな。
アースライ、修復を始めるか?≫
「メルク、すまないが第11惑星軌道の物を見つけてからで良いかな?
向こうで優先する物を見つけるかもしれないし」
≪了解だ≫
そうして、僕たちは今度は第11惑星軌道に向かった。
「すまないメルク。僕の耳が聞き取りを拒否したらしい。
もう一度正確な発音で言ってみてくれないだろうか?」
≪マスター、何回聞いても内容は変化しないぞ。
目の前にある岩塊は偽装されたソルコアイト文明の大型艦で間違いない≫
「わかった、メルク。今度は目が見るのを拒否するかもしれないけど、
偽装を解いてもらえるかな?」
≪了解した。しかし、これを予測してエッグの修復を後回しにするとは。
さすがはマスターだな≫
「そんな訳ないでしょ。メルクも分かって言ってるよね。
もしクリサリスが見つかったら修復を優先しようと思っただけだよ」
『もちろん分かって言っている。解除するぞ』
目の前に巨大な白い宇宙船が現れた・・・・大きすぎないかコレ?
「大型って、こんなに大きかったっけ?」
カーモンド・ファミリーの大型艦、こんなに大きく無かったはず。
≪ああ、2000m級だからな。全長なら、あの大型艦の単純に倍だ。
ソルコアイト文明の大型医療拠点艦とはめずらしい物が見つかったな≫
「この大きさなら、そうだろうけど珍しいのかな?」
≪ソルコアイト文明圏ではクリサリスで治療と生命維持が可能だからな。
当時の開発目的はクリサリスを使わない他の文明圏の救助や救援だったはずだ≫
「まあ、見つかった物が戦争目的で無かったのは良かったかもしれないな。
でもメルク、そもそもこの船修復出来るの」
≪さすがに修復可能かの判断には調査が必要だな。早速調査の為、子機を送る≫
「わかった、お願いね」
メルクの瞳が開いて、中から数千の子機が現れて大型艦に群がっていった。
しばらくして
≪マスター、どうやら使われなくなって封印状態になっていたようだ。
メインジェネレーターも無傷だが、そもそもエネルギー充填がされていない。
当面の運用なら私で代用可能だが、シルキスタと同時運用は不可能になるな≫
「どっちにしても、アリシアに恒星炉と【星喰い】の話をしなければいけない時が
来たのかもしれないな。メルク、一時接続してこの艦を復旧させてくれ。
それから使えそうな恒星を探してもらえないか?」
≪了解だ≫
「艦内に空気が充填できたら、中でアリシアと話すから呼んでほしい」
≪了解≫
「アリシア、この艦の事で話があるんだけど中で話せないか?」
「いいわよ、中に行くね」
白い艦の一室に入って、僕はルジュを解除した。
用意したテーブルセットの椅子に座って、アリシアにも勧める。
「そっちにどうぞ」
「ええ」
アリシアもサイファを解除して座ったのを確認してから。
「アリシア、あの脱出ポッドで僕に会った時の事を覚えているかな?」
「秘密厳守の件ね、もちろん覚えているわ」
「この白い大型艦はメインジェネレーターが空の状態なんだ、
今はメルクを接続して動かしているけど
そうなると、今度はシルキスタが使えなくなる」
「それは、そうよね」
「それで、この艦のエネルギー充填に向かうんだが、
この方法は絶対に秘密にしたい」
「そういう事、わかった約束する」
「すまないが、秘密を守れそうな相手でも口外できない内容なんだ。
エルネシアさん達にも秘密にしてもらう」
「そこまでの内容なんだ」
≪マスター、艦の起動が完了した。制御室で登録を頼む≫
「わかった」
「では、マスター。この艦の制御室にご案内しますので使用者登録をお願いします」
ルジェにに案内されたのは。シートも何も無い真っ白な部屋だった。
「ルジュ、僕はどうしたら、いいのかな?」
床に白色の光の珠が浮かび上がる。
「この感応核に触れてください、登録が開始されます」
膝を付いて光の珠に触れると、身体ごと床に沈み込んだ。
まるで水に落ちたみたいだけど、息は苦しくなく暖かい何かに包まれている。
『個人名の登録を求める』
「アースライ・グランクラフトだ」
『登録した。この艦の命名を希望する』
「
『艦名ブランシュ、登録完了しました。これよりチュートリアルを開始します』
おそらく1時間程でチュートリアルが終了した。
「マスター、お疲れさまでした」と後ろからブランシェに声を掛けられた。
何も考えずに振り向いた僕は悪く無いと思う。
振りむいた僕の視界には、20歳位のショートカット美人が立っていた。
白い髪が印象的だった。
「ブランシェ? 」
「はい、マスター。私の艦内子機になります。なんでもお申し付けください」
スレンダーな体形が素晴らしい稜線を作り出している・・・Bかな?
「ブランシェ、すまないが衣服の着用をお願いできないだろうか?」
「了解しましたが、マスター、外観形状にご不満がございましたら
変更いたしますが、いかがなさいますか?」
お願い、胸を持ち上げながら言うのをやめて
「ああ、変更の必要は無いよ、ありがとう」
ブランシェは白いナース服に変わっていた。
「ブランシェ、その服は?」
「この艦が医療艦として稼働していた時代の制服です。
これでよろしいでしょうか?」
「ああ、良く似合っているよ」
「メルク、良さそうな恒星系はあったかな?」
≪150光年程離れた所に無人で登録されている恒星系があるようだ≫
「では、ブランシュ。その恒星系に向けて連続転移を開始してくれ」
「了解しました。現地到着は5時間後の予定です」
「了解、ありがとうブランシュ」
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