第8話 ステラファス王家

 現在、僕は王宮の奥深くにある会議場でアリシアが座る席の後ろに

 ルジュと一緒に並んで立っている。


 それぞれの椅子にはアリシアの家族らしき人々が座っている。


 国王と王妃は判る、白い髪と髭の国王とアリシアによく似た金髪の王妃だな。


 第1王子は30前後かな、淡い金髪の髭のおじさんか


 第2王子は20台後半の紺の髪をした細身のイケメンだ


 第1王女20くらい? 長い金髪の穏やかな女性


 第2王女18くらいか、紺の長い髪をした肉感的な美人


 そして第3王女がアリシアか


 第4王女が12歳くらいの黒い長い髪の線の細い少女だ


 まあ、国民ならみんな知ってるんだろうな。



国王が口火を切って話始めた。


「アリシア、ステラファス王家の人間が勝手に騎士を任命するとは

 どういう事かな?」


アリシアがニッコリ笑って


「あら、騎士の任命は王家の者が持つ生涯1度だけの権利だけど、

 いつ王宮規約が変わったの?」


「確かに王家に属する王子と王女は1人だけ騎士の任命権を持つが、

 騎士のお披露目の後、すべての経費は王家の負担だぞ。

 議会の承認を得ない訳にはいかないだろう」


「それって、王家の権利を議会が侵害してない?」


「それでもだ、何の実績も無い少年をいきなり騎士に任命するなんて、

 やりすぎだろう」


「実績と能力からアースライを騎士に任命したんだけど。

 大体、兄様や姉様が議会に押し付けられた文化人の騎士に

 碌な人間がいなかったじゃ無いの。

 すぐに汚職で捕まって、王家の名を落とす人ばかりじゃない」


「実績って、その少年になにがあるんだね?」


「今の所、カーモンド・ファミリーの壊滅と

 王家の一員である私の命を救ったことかな?」


「そんな報告は受けて無いが?」


「それはそうよ、連邦軍よりも早く移動できる能力も含めて

 騎士に相応しいと判断したのよ」


「なんだと?」


「彼の船の事を連邦軍にはステラファスの未登録実験機と説明したから、

 いずれ問い合わせが来ると思うけどね」


「アースライ君だったかな、君は本当にカーモンド・ファミリーを

 壊滅させたのかな?」


いや、そんな事を聞かれても


「どうでしょう、今回は大型艦1隻と中型艦7隻を行動不能にして

 連邦軍に引き渡しました。

 後は小型艦を3隻破壊しました。

 もし、これ以上の艦船を持っていたら壊滅にはなりませんね」


会議場がざわついた。


「どう? こんな人間を他の所に行かせたら大変な事になるわよ」


アリシア、どや顔で何を言ってるのかな?


国王が俯いたまま、頭を抱えている


「どうやら、アリシアの言う通りのようだな。彼の騎士披露を準備しよう」


「彼の持っている遺跡戦闘艦の我が国での登録も早急に進めないといけないわよ。

 あんな常識外れの船の情報が少しでも洩れたら軍事国家が絶対難癖つけてくるわ」


「ああ、早急に手配させよう。ステラファス王家第3王女の騎士誕生を

 国家として発表せよ」


国王と第1王子(この場合は皇太子かな?)と第1王女が各所に指示を出している。


第4王女がアリシアに近づいて来て

「そういえば、姉さま。どうしてライフスーツのままなの?」


アリシアが苦笑いしながら

「メイ、言ったでしょ命を救われたって。カーモンド・ファミリーに

 脱出ポッドを攻撃されてね、腰から下は今も酷い状態で修復中なのよ」


紺の髪の第2王女がそれを聞いて慌てだした。

「アリシア、なんで先に言わないの? すぐに医療チームを呼ぶわ」


「カレナ姉さん、大丈夫よ。これもおそらく遺跡文明の産物で痛みも無いし

 行動に不自由が無いから私も意識しないと忘れてるのよ。

 数時間なら上半身を解除出来るけど、

 完治するまでは全身を覆っている必要があるの」


「全身を覆うって?」


「ルジュ、頼めるかな?」


「了解」


ルジュの指示でアリシアのクリサリスが全身装着状態になる。


「これが、おそらく遺跡文明のライフスーツなんだと思う。

 治療はもちろん呼吸や代謝もすべてコントロールしてくれて、

 なおかつ星系内なら小型宇宙船並みに移動も可能な代物よ」


あれ?第1王女が、動きを止めて、こちらをガン見している。


「アリシア、そのスーツで宇宙に出れるの?」


「ええ、エレネシア姉さん。この惑星ステラの重力圏を出る程度は

 まったく問題無いみたいよ」


近づいて来てアリシアの両腕を掴んで


「それ、もう無いの?」


「ア、アースライ」アリシアが焦った様子でこっちを見た。


「あの~、シルキスタにもう1つあります」勢いに負けて話してしまった。


「シルキスタ?」


「彼の遺跡文明艦よ」


「遺跡文明艦ですって? すぐに行きましょう」


「待ってください、王族の方をお招きするような宇宙船では無いですよ、

 シルキスタにあるのはクリサリスとフードクリエイターだけですから

 僕が行って取って来ます」


ガシッ と後ろから両肩を掴まれた。


後ろを振り向くと紺色の長い髪をした肉感的な美人が

キツイまなざしで睨みつけている。


「どうか・・しましたか? 第2王女様?」


「カレナよ、今、フードクリエイターっていいました?」


「はい」


「フードクリエイターって、遺跡文明の物かしら?」


「はい、宇宙船と同じ文明のようです」


「使用可能なの?」


「アリシアと2人で試してみましたが、特に問題は無かったです」


「アリシア、なんで黙ってたの?」


「話をしたら、カレナ姉さん・・・ついて来るでしょう?」


「あたりまえじゃないの」


「すみませんが、シルキスタには艦載機がありませんので、人と物資を運ぶのに

 小型宇宙船を用意していただく必要があります」


「ええ、まずはクリサリスと船が見たいからすぐに軌道上に上がる用意するわ」


「エレネシア姉さん、私も一緒に乗っていくからよろしくね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る