恋は依存症

雑作家ミナト

一話


「恋は依存症だと思うんだ」


「・・・いきなり何を言ってんだお前は」


 夏の日差しが照りつけ肌を焼き殺そうとしていることに若干のイライラを感じながら歩いていると横にいる幼馴染が変なことを言い始めた。


「考えてもみてよ、まず恋はどうやって始まる?」


「そりゃ、相手を好きになったらだろ」


「その通り、でもなぜ人は他人を好きになると思う?」


 その問いに俺は口元に手をやって少しの間考えるが


「・・・わからん」


「だろうね、そんなの考えたことないもんね」


 幼馴染は微笑んでスカートのポケットからスマホを取り出す。


「私が思うに他人を好きになる理由として考えられることが二つ。

 一つ目は相手に自分にはないものがある場合。

 二つ目は自分、もしくは自分に近い考え方を持っている場合の二つなんだよね」


「なるほどな、確かに言われてみればそうだけどなんでそこから依存症だってなるんだよ」


 俺のその言葉に幼馴染は待ってましたとばかりに目を若干輝かせて


「おぉ良い質問だね、ご褒美に君の好きなミルク飴をあげよう」


「やった!ありがと!!」


 いつの間にか手に持っていた飴をもらうと封を切って口の中に放り込む。

 優しいミルクの匂いと味が口の中に広がる。

 やっぱ、うめぇなこれ。

 後でコンビニかスーパー行って買ってこよう、箱で。


「まさかだと思うけどミルク飴を箱買いするなんて考えてないよね」


 な、なぜわかった!

 お前さんはどこのエスパーだよ。


「・・・考えてねぇよ」


「最初の間が全てを物語ってるよ、良い加減にしないと糖尿病になるよ」


 ジト目で睨まれながらお小言が始まる。

 まずい、長くなる。


「それより、どうなるんだよ。恋の話は」


 話を逸らすために幼馴染の方から振られた話を持ち出す。


「・・・話を逸らそうとしてるね、まぁ良いでしょう。話を戻すね」


 渋々っと言った感じで話し始める幼馴染を横目に俺はホッと息を吐く。

 嫌だってこいつの説教というかお小言はとてつもなく長い。

 だってこの前の説教、正座させられて二時間色々言われたんだぞ。

 めんどくさいったらありゃしない。


「さっき言った他人を好きになる条件の一つに『相手に自分にはないものがある場合』っていうのがあったでしょ、その条件が肝なんだよ」


「え?なんで」


「例えばの話だけど、磁石ってSとNがあるでしょ。SとS、NとNは反発するけどSとNはくっつく。

 これを言えばもうわかるでしょ」


「???」


 幼馴染の例えに首を傾げる。

 その例えだとよくわからんよ。

 そんな俺を見て幼馴染はやれやれと言った感じで若干笑いながら首を横に振るう。


「つまりは同じ極同士では反発するけど違う極同士だとくっつくってことだよ」


「・・・あぁ〜そういうことね」


 しばらく考えた後、理解できた。

 つまり、幼馴染言っているのは同じものを持っている同士は惹かれ合わないがお互いが違うものを持っている場合は惹かれ合うということだろう。

 そしてその惹かれ合うということの言い方を変えれば互いに依存しあっていると言える。


「理解できたみたいだね、話を続けるね。

 もう一つの条件、『自分、もしくは自分に近い考え方を持っている場合』これに関してはさっきの条件と若干矛盾してるんだよね」


「例外もあるだろ、例え自分と同じものを持っていたとしても惹かれ合うこともある」


「そうだね」


 そういって幼馴染は足を止める。


「どうした、いきなり止まって」


「いきなりだけど問題、なんで私が恋は依存症だって言ったと思う?」


「そんなのわかるわけねぇだろ、お前がいきなり言い出したんだから」


 俺がそう答えると幼馴染はふぅーっと一息吐いて


「君、私と何年の付き合い?」


「そりゃ、幼稚園の年少から高校二年までだから14年の付き合いだな」


「そう、14年。私たちはいつでも一緒だった、ご飯の時も寝る時も」


 そういいながら幼馴染は俺の方に近づいてくる。

 その行動に俺は首を傾げる、なんかいつもと何か雰囲気が違う気がする。


「私はもう君なしでは生きられない」


 そう言った時には俺との距離は目と鼻の先だった。


「私は君に


 そう言った時の幼馴染の表情は14年間一緒にいた俺でさえも見たことのないものだった。






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