プロ霊媒師
結騎 了
#365日ショートショート 192
「警部、今回の殺人事件はどうしましょう」
「どうしたもこうしたもあるか。例の霊媒師を呼べ。早期解決が肝心だ」
刑事事件、とりわけ殺人事件について、常識は一変していた。彗星のごとく業界に舞い降りたプロ霊媒師。週刊誌のネタにもならない胡散臭い存在だったが、ある事件をきっかけにその能力が警察組織に認知され始める。その降霊術はカップラーメンを作るより速く完了し、被害者の霊とすぐさまコンタクトを取ることができる。犯人は誰だ。凶器はどこだ。動機はなんだ。被害者の解答をもとに捜査を進めると、あっという間に証拠が出そろう。今や現場の刑事たちは、とにかくプロ霊媒師を現場に呼び出し、犯人の当たりを付けてから捜査を行っていた。プロ霊媒師も警察組織からの需要を確かなものにするべく、法人化に乗り出していた。
「そんな!」
電話をしていた部下の刑事が叫んだ。
「おいおい、どうしたんだ」
「それが、警部、その……。あのプロ霊媒師が交通事故で亡くなったそうです」
「なんだと!」
警部は膝から崩れ落ちた。なんということだ。まともな捜査など、もう一年半はやっていない。刑事の勘なんてものはとっくに錆びてしまっている。
「くそう。どうすれば」
「警部、実は……。プロ霊媒師のマネージャーさんから、新しい霊媒師を紹介されました。その方ならすぐ来られるとのことです」
「おお!それは僥倖だ。頼む。今すぐに呼んでくれ」
現場に来たのは、これまた胡散臭そうな男だった。
「どうも、プロプロ霊媒師です」
「プロプロ霊媒師……?」。警部の眉間にしわが寄る。
「はい。私は、亡くなったプロ霊媒師を降霊することができます。彼を呼ぶことができるのは私だけです。そして、私が呼べるのも彼だけです」
「馬鹿を言うな。降霊してほしいのは被害者だぞ」
プロプロ霊媒師を名乗る男は溜息をついた。「少しは頭を働かせたらどうです。降りてきたプロ霊媒師に降霊してもらえばいいじゃないですか。霊の状態でも、それくらいはできるでしょう」
「ええっ。じゃあ、もしかして。仮にあなたの身になにかあったら……」
「はい、私の部下、プロプロプロ霊媒師にご用命ください。彼が私を呼ぶことでしょう。霊への賃金は生者の半額で構いません」
プロ霊媒師 結騎 了 @slinky_dog_s11
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