第9話 ダンジョンへ行こう
「はあ? なんじゃこりゃ。全然役に立たないな!」
周りに散らばったモノを見て静かなる獅子のギルドマスター、ポドワンさんが文句を口にした。ちゃんと説明をして渡したと言うのに!
「僕、ちゃんと言いましたけど? ダンジョンから出ると携帯袋は消滅するので中身は出てしまいますって」
「そりゃ聞いたよ。けどさぁ、流石にこれは……回収するのが大変だろうが!」
確かにそうかもしれない。かなり広範囲に飛び散っている。帰還でダンジョンから出たからだと思うけど、大体そうなったのは、ポドワンさんのせいじゃないか。
なんとなく、マイケルさんを思い出すなぁ。この人とは僕は合わないかも。
彼とは、冒険者協会の紹介で会ってそのままダンジョンへ行く事になったんだ――。
◇
「俺が、静かなる獅子のギルドマスター、ポドワンだ。宜しく」
「あ、はい。ミュディンと言います。宜しくお願いします」
冒険者協会の一角で待ち合わせをした僕達は、挨拶を交わした。
ポドワンさんは、クルクルパーマの赤毛、大剣を下げているがっしりとした人。
「冒険者協会から聞いたけど、称号持ちなんだって!」
凄く期待した目で言われた。
「あ、はい。でもダンジョン限定なんです。ダンジョン以外では、スキルも魔法も消滅していて……」
「消滅!? どういう事?」
「ダンジョン以外ではステータスに表示されないんです」
「まじか。ちょっとカード見せてもらっていいか?」
「はい」
見てもらった方が早いよね。
「お前、随分と損なステータスしているんだな」
「え?」
それって運の事を言っているのだろうか。確かにそれはランクアップに入らないけど、一応他の人には運のステータスが高いだけあると言われたけど、やっぱり損なの?
「この運というステータスはさぁ、戦闘には関係ないんだ。まあいいアイテムが手に入ったり? あ、そっか。それで称号をこのランクで手に入れたのか。だったら……」
称号を手にした時はまだFランクだったけどね。
「よし! ダンジョンへ行こう!」
「は? どのダンジョンですか?」
歩いていける距離のダンジョンは、ゴブリンダンジョンだけ。後は、馬車で移動しなくてはいけない。たしか、Fランク用以外のダンジョンの近くには、通称ダンジョン村があると聞いた。そこまでは、街から馬車が出ているらしいけど。
「馬車代は出してやるからさ。まずは行ってみようぜ」
「それって、ギルドに入れてくれるという事ですか? それとも試験の様なものですか?」
「そうだなぁ。俺、やっとDランクになったんだよな。できればDランクのギルドにしたいわけ」
「はぁ」
「その条件は、十名以下なら全員がDランク、十一名以上なら最低十名がDランクで尚且つメンバーの八割がDランクである事なんだ。だからさDランクになれそうかどうかを見極めたい」
「そうですか……」
それって、Dランクになるのって称号を持っていても大変って事だろうか。
「大丈夫だって。俺がついている」
ポンと肩を叩かれた。なんとなく不安だ。
「あの、二人で行くんですか? 他のギルドメンバーは?」
「今日は、他の仕事をしている」
「そうですか……」
どうしようかなぁ。入れるギルドはこの街だとここだけのようだけど。
「うんじゃ、馬車乗り場に行くぞ。今から行けばちょうど乗れる馬車があるから」
「え? 本当に行くんですか?」
「あ、俺らオークダンジョンに行って来るから」
本気らしく。行くダンジョンを登録している。
「え! オークダンジョンへ二人で行くのですか?」
「おう。俺、Dランクだしいいだろう」
「そうですが……」
「早く手にスタンプ押して。ほらお前も押してもらえ」
「ス、スタンプ?」
「馬車代をここで払っていくんだよ。往復だからこの街でしか降りられないけど。スタンプさえあれば、なんとか帰って来られる」
なんとかって、それどういう状況だよ。
「わかりました。二人とも無理しないでくださいね」
「大丈夫だって。さあ行くぞう!」
僕らは、◎のスタンプを手に押してもらった。
馬車乗り場は、冒険者協会を出て直ぐにあって、ポドワンさんが言う様にすぐに馬車が到着した。
「二時間ぐらいで着くから」
「あの、今更だけどダンジョンのランクって」
「Dランク」
にまぁっとして、ポドワンさんが言う。やっぱりそうだった。もしかしてこの人、帰還のスキルで奥から戻って来られると思っている?
「あの、僕のスキルだけどどんなのか聞いています?」
「あぁ。俺も一緒に戻れるんだよな? 便利だよなぁ」
やっぱりだ。
「それ、代償が必要ですけ」
「は? 代償? そんなの聞いてねぇ!」
「ダンジョンで得た経験値を消費して戻るんです。だから経験値を稼ぐなら向きません」
「うーん……」
腕を組んで悩んでいるけど、馬車は出発してしまった。まあスキルを使わずにダンジョンから出ればいいだけだ。
「そのスキル、それじゃ普段は役に立たないスキルなんだな。まあ今回は、素材集めって事で」
「……はい」
役に立たなくてすみませんね! でも死ぬ確率はぐーんと低くなる。僕に至っては、ダンジョン内では死なない。だけどこのスキルを使う事がない方がいい。普通は死なない様に戦う。そうなると、確かに無意味なスキルだ。
なんかちょっと凹むなぁ。
オオカミ少年は無双する――但しダンジョンに限る すみ 小桜 @sumitan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。オオカミ少年は無双する――但しダンジョンに限るの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます