第8話 検証の結果

 どうやらダンジョンマスターの称号の恩恵で覚える魔法やスキルは、本当に魔力を消費しないみたい。その代わり、ダンジョンから出るとそれ自体消え去る。

 これだと周りから見たら帰還のスキルしかない。いや、それでも凄い事なんだけどさ。うん。文句を言っちゃいけないよね。


 ピン。

 ――『携帯袋』を覚えました。


 レベルアップした! よし、これでレベル八だ。

 カードで確認すると、携帯袋はスキルに記載されていた。そして、Eランクに昇格!


 「携帯袋とは?」


 ピン。

 ――ダンジョン内に限り使う事が出来る。『携帯袋作成』と唱えるとマジックバッグを作成でき、いくらでも入れる事が可能。ダンジョンから出ると携帯袋は消滅する。中身は消えない。


 「うお。便利なのがきた! って、ダンジョンから出たら袋は消滅するのか。中身は消えないみたいだけど、これってぶちまけられるって事だろうか。よし試してみよう。携帯袋作成!」


 唱えるだけで袋が出来上がった。自分の顔ぐらいの大きさだ。さて、何を入れよう。よく考えたら僕は入れるだけの荷物がない。

 うーん。これでいいか。転がっている石ころを何個か入れた。

 袋の重さは変わらず、少し膨らんだだけだ。凄いなぁ。それを手に持ち、ダンジョンの外へ出た。


 「あ……」


 出た途端、フッと袋が消えて石が散蒔かれる。石ころがコロコロと転がった。


 「べ、便利そうだけど出た途端にこれだと、対策を考えないとダメかもしれない」


 今まで覚えた魔法やスキルは全部で三つ。全てダンジョン内用だった。

 レベル三で魔法『ライト』、レベル五でスキル『解体』、それと今覚えたレベル八のスキル『携帯袋』。なんとなくだけど、レベルがあるのが魔法でないのがスキルという分け方っぽい。


 レベル五で覚えた解体は、その名の通り解体するスキル。対象に触れて『これを解体する』と唱える。ゴブリンで試してみたけど、バラバラになった……。素材集めにいいかも。

 そういえば、ライトの魔法は携帯袋の様に、ダンジョンの外に出ると効果がなくなるっていう表示がなかった。もしかしたらダンジョン内で光らせれば外でも使える? まあ夜とかじゃないと使う場面なさそうだけど。

 ゴブリンのダンジョンではライトは使わないけど、覚えた中で一番使いそうな魔法かも。

 初心者用のこのダンジョンは、壁に光る石――光石こうせきが所々に埋め込まれていて、歩くのに支障がない。けど、ここ以外では自分で明かりを用意しなくてはいけないからね。


 今日は、三つも魔法やスキルを覚えて、レベル八になりEランクに昇格して、充実した日だった。昨日とは大違いだ。

 もう日が暮れる。って、お腹空いたなぁ。

 街に戻ったらご飯を食べようっと。明日は入れるギルド探しをしようっと。

 僕は、ルンルンで街へ戻った。


 次の日、早速冒険者協会のカウンターで尋ねる。


 「ランクEになったからギルドに入りたいのですが」

 「まあ、おめでとう。で、魔法は何を覚えたの? カードを見せてもらっていいかしら?」

 「え? あぁいいけど、載っていないですよ」

 「載っていない?」


 受付嬢が見せろというので見せた。


 ――――――――――――――――――

 ミュディン/剣士/LV8/Eランク

 HP:18

 攻撃力:4

 守備力:4【+3】

 魔力:6

 素早さ:9

 運:11

 スキル:帰還

 魔法:―

 腕力:3

 脚力:3

 スタミナ:10

 ――――――――――――――――――


 「あら、本当に記載されてないわね。魔法やスキルは覚えたのよね?」

 「うん。どうやらダンジョン用らしくて、ダンジョンにいる間しか使えないみたい。ダンジョンの外に出ると消えちゃうみたいなんだ」

 「魔法もスキルもダンジョンから出ると消えちゃうのかぁ。これだと称号持ちだと証明できないわね」


 称号を持っている人自体少ないので、カードに記載されるようになっていなかった。だが、称号は魔法やスキルを覚えるので、二つ以上あれば称号持ちだと証明する事が出来る。

 だけど僕の場合は、無理だよね。


 「でもスキルを持っているからそれだけでも優遇されると思うわ。今、スキルか魔法持ちを募集しているギルドは三か所ね。でも、EランクからでもOKというのは、一か所だけだわ。静かなる獅子ね。そこでいいかしら?」

 「はい! 宜しくお願いします」

 「では、連絡とってみますね」


 こうして明日、ギルドの人と会う事になった。それなら今日もレベル上げに行って来ようっと、ゴブリンダンジョンへと行ったのだけど、一レベル上げるのに滅茶苦茶時間がかかった。

 ランクって上がりづらくなるレベルごとに区切られているって聞いたけど、本当だったみたい。もうゴブリンでは、早々に上がらないな。

 違うダンジョンに一人で行って大丈夫だろうか?

 今日は、ここでのレベル上げは諦めて僕は街へ戻る事にした。


 冒険者協会に貼り付けてある周辺の地図を見てレベル上げ出来そうな場所を探す。

 ダンジョン以外でもモンスターがいる場所は沢山あって、そこでレベル上げが可能だ。ただ称号の『ダンジョンマスター』の条件が、ダンジョン内でのレベルアップだからダンジョン以外でレベルアップしても、魔法やスキルは覚えない。

 レベルは、どんどん上がりづらくなる。だからダンジョン以外で上げまくると、ダンジョン内でレベルを上げづらくなる。そうなると、魔法やスキルを覚えるチャンスを活かせない。

 僕は、今日は宿でまったりする事にした。明日が楽しみだ。

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