第7話 秘密通路の仕組み
驚いた。一瞬でゴブリンのダンジョン前にワープした。なんと便利な魔法なんだ。
「すまないが一旦ダンジョンに入ってもらう。ダンジョン内の移動は出来るが、出たり入ったりはできないんだ」
そういうものなのか。
僕達は、僕を含め四人でマイケルさん達の救助に来た。ワープの人数が四人までだからだ。
ダンジョンの中に入ると、あっという間に地下三階にワープ。
経験値が無駄にならない分、帰還よりこの魔法の方がいいような……。
「で、ミュディンくん。どこら辺かな?」
だから僕はもう大人なんだってば。
僕は、あっちと指さす。
「あそこです。ただ、スイッチを触ったとしても僕には、触ったつもりはなかったのでそれがどこにあるかはわかりません」
「ありがとう」
ゴブリンが本当に近づいてこない。
弱い敵を近づかせない魔法とかもあるらしく、そのお陰でゴブリンが僕らに近づかないから作業をしやすい。僕も探すのを手伝う。
確かこうやって立とうとして……。
穴が空いた時と同じ行動を取ってみる。
ガガガ……。
「え……」
驚いて振り向けば穴が広がっていき、僕は飛び退く。
「……すけて!」
「おーい! 誰か……開いた!?」
マイケルさんとミーチさんが、慌てて這い出てきた。
「た、助かった」
「あんなところで野垂れ死にしちゃうか……きゃー!!!!」
ミーチさんが、僕を見て思いっきり悲鳴を上げた。まあそうなるよね。
「ひぃ……」
マイケルさんに至っては、後ずさりまでしている。化けて出たとでも思った?
「二人とも彼に感謝するんだな。彼がいなければ、野垂れ死んでいただろう」
「置いて行ってごめんなさい……ありがとう」
「す、すまなかった。あ、ありがとう」
二人は、素直に僕に謝った。というか、震えている? 僕は幽霊とかじゃないからね!
その後二人はこってりと叱られた。
マイケルさんは、僕を殺そうとした罪があり、冒険者協会の規則により強制労働する事となる。
もし僕が死んでいれば、それだけじゃすまなかったみたいだけど。僕の覚醒したスキルに感謝する事だね。
秘密通路は、改めて調べられた。どうやらゴーレムを倒さないと、通路とダンジョンの間の扉は通路側からは開かない様になっていたようだ。つまり、奥の扉を開けたら最後、ゴーレムを倒さない限り生きて帰れない事になる。ワープの様な魔法などがない限りは。
ゴーレムは、高ランクの冒険者達によって倒され、秘密の通路はただのダンジョンの一部となった。
それから僕は、金貨一枚を頂きました。
活躍したからとかではなく、宝箱を売ったからなんだけど。普通は中身だけ持ち帰るらしい。なにせ、ほとんどの宝箱は大きいから。
この宝箱には、珍しい魔法陣が描かれている事が多く、高値で売れる物だった。
「もし見つけたらまた持ち帰ってきてね」
と、言われたけどもう勘弁してほしい。
そんなこんなで、手に入ったお金で装備を整えた。
今回の事でわかったけど、フードだけではケモ耳は隠せない! そこで耳当て付き帽子を購入。耳あてと言っても人間の耳の場所(当たり前)。顎の下で縛る紐付きなので、引っ張られても大丈夫。しかもこれ、魔法陣装備といって魔法陣が描かれた装備。モンスターに先制攻撃受けづらくなる効果がついている。その為、めちゃ高かった。
店の人に、それを買うより性能がいい剣を買った方がいいよとアドバイスを受けたけど、僕にはこっちの方が大事。帽子を買ったので、ボロボロの外套は処分した。元々耳を隠したくてボロボロだけど愛用していたから。
後は、一般的な冒険者用の装備一式を購入。足首まである黒い靴に、丸首でパステルブルーのシンプルなデザインの服。ズボンは、紺色のダンジョンなどで座っても痛くなりづらいと今流行りの、お尻に厚手の柔らか素材のデザインをチョイス。それらの上に空色のロングベストを羽織った。
そして、軽くて切れ味がいい新品の剣も購入。残り銀貨一〇枚となった。後は様子を見て色々買う資金に残しておく事にしたんだ。
次の日レベル二だけど、一人でゴブリンのダンジョンに再挑戦する事にした。一階なら一人で大丈夫みたいだし。剣も新調したから攻撃力も上がっているだろう。
持っていく荷物もないから気分も体も楽だ。
ダンジョンに着いて早速レベル上げ開始。なんという事だろう。ゴブリンが一振りで倒せちゃう!
楽しくなって、僕は次々と倒していく。
ピン。
――『ライト』を覚えました。
「うわ。何?」
音と共に目の前に文字が浮かび上がり僕は驚きの声を上げる。
もしかして、レベルアップした?
冒険者カードを見れば、レベル三になって魔法に「ライトLV1」と追加されている。
「これってどんな効果が? たぶん明るく照らす魔法だと思うけど……」
ピン。
――ダンジョン内に限り使う事が出来る。触れたモノを光らせる事が出来る。手の平を光らせたい対象に接触させ『輝け』と唱えると十分間光らせる事が可能。
音と共に説明が目の前に浮かび上がった。
覚えた魔法やスキルは、鑑定してもらわなくても確認できるみたいだ。覚える度に見てもらうのって大変だもんね。よかった。そうだ。一応一旦ダンジョンの外に出ておこう。
この魔法が使えなくなる事はないが、死んだらレベルが下がっちゃうからね。まあ死なないとは思うけど。
僕は、外へ出た。
うーんと伸びをする。凄くいい気分だ。
嬉しくなってもう一度、冒険者カードを確認すると――「ライト」の魔法が消えている!
「えぇ!!!」
慌ててダンジョンへ入りカードを確認。そうすると、「ライト」の魔法は記載されていた。
「よかったぁ」
僕は、胸を撫で下ろしたのだった。
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