第6話 帰還と称号

 ユーリさんが話す帰還のスキルがある意味凄すぎて、僕は唖然としてしまった。


 「帰還とは、本人が望めばダンジョンの外に帰還でき、身体は入ったと時の状態で戻る。その時、他の者が直接本人に触れていれば、一緒に帰還可能。また本人が死亡にあたる攻撃などを受けた時は、自動的に帰還する。この場合は、本人だけになる。ダンジョンで得た経験値を使い帰還するので、入った時の経験値に戻る為レベルも戻る。他の者も同様。ただし、覚えた魔法やスキルはそのままでその後も使用可能。アイテムなども触れているモノならば、一緒に持ち出す事ができる。使用回数に制限はない。となっている」


 この内容凄すぎる。レベルが戻っちゃうなんて! でも勝手に帰還のスキルが発動した事により僕は、生きているわけだし。しかしいつ覚えたんだろう。冒険者カードを確認してから戦闘はしていないんだけど?


 「凄いスキルが覚醒したのですね」

 「あの! でも僕がカードをダンジョンで最後に確認した時にはそのスキルは記載されていなかったんですけど。その後、戦闘はしていないからレベルは上がっていない。いつ僕は覚えたんですか?」


 うん? と皆が僕を見た。そして、嘘だろうと言う顔つきになる。


 「あれじゃないか! その宝箱の力とか。魔法やスキルを授けてくれる事もあるだろう?」

 「……それはないかと。ダンジョンの外で気が付いてから開けて確認したら水晶みたいのが入っていて、手にしたら光って消えちゃったから……あ」


 しまったぁ。これ内緒にしておこうと思った事だった。いやでも、べ、別に悪い事をしたわけじゃないからいいか。触った事によって消えるアイテムもあるんだなぁ。もったいない事をした……。


 「その宝箱の恩恵ではないだろう」


 ユーリさんがそう言うと、今度は皆ユーリさんに振り向く。


 「レアなスキルや魔法は、稀にレベルアップだけではなく他の条件も必要な事があるのだ。君の場合、死に直面する事だったのだろう。それにより覚醒した。そして、宝箱の恩恵は別にあるようだ」


 そういう覚醒の仕方もあるの? 聞いた事ないんだけど。うん? 宝箱の恩恵は別にあるようだって? 消えちゃったのはやっぱり何かが発動したから? 一体どんな?


 「そんなスキルも存在するだ。それじゃ一生スキルや魔法を持っていたとしても気づかない事もあるって事ですか?」

 「あぁ。ただ、この帰還のスキルの様に代償を伴う事が多い。だから凄いモノでも使えないとなるらしい」

 「確かに。万事休すと言う場面でなければ、経験値を捨ててダンジョンから帰還しようとは思わないかもしれない」


 まあそういう事態になったから発動して、覚醒したんだけどね。


 「それで、宝箱の恩恵とは?」


 僕が聞くと、ユーリさんがニヤッとする。なんだ。一体どんな事が僕に起こっている?


 「カードには記載されないから鑑定しないとわからなかっただろう。君には、『ダンジョンマスター』という称号が付与されていた。称号というのは、ある条件下で能力を発揮するモノだ」

 「え……称号?」

 「あ、あなた、凄く運がいいのね」


 受付嬢がそうしみじみ言うと、周りもそうだと頷く。

 僕的には、死ぬ目に遭っているのでそうは思わないけど……。


 「えーと、その効果とかわかるんですか?」

 「あぁ。称号はその者が有利になる様に与えられると言われている。君の帰還が無駄にならずに済むぞ。『ダンジョンマスター』の効果は、ダンジョン内でのレベルアップ時にダンジョン攻略に有効なスキルや魔法を取得できる。だ」


 ユーリさんが、人差し指を立て言った。


 「え? それって無限にですか?」

 「そこまではわからないが、帰還を発動させてもスキルや魔法は消えないのだから有能な称号だろう。それに、称号の効果で得た魔法やスキルは魔力を消費しないとされている。そこら辺は、自分で確認してみるといいだろう」

 「え……」


 なんか凄いのを手に入れたんですけど!


 「まあ、凄いわ。だったらジョブは変えた方がいいわよね? 魔法使いとかにする?」

 「え? ジョブ? 剣士を魔法使いにですか?」

 「あらだって、レベルアップ時に増えるのでしょう? だったら魔法使いでしょう? というか、魔法やスキルを複数持つ者なんて、それこそ称号を手に入れた者とかよ。普通は一つよ」


 たしかに。でもまだ何も覚えていないのにいきなり魔法使いって。攻撃系を覚えるかわからないのに!


 「せめて、魔法を覚えてからでお願いします」

 「そうね。回復系かもしれないし」


 なぜか受付嬢が嬉しそうに言った。


 「ただいま戻りました」

 「どうだった? 二人は?」

 「ダンジョンにはいませんでした」

 「街の外も探索かけましたが、おりません」


 もしかして、マイケルさん達の捜索をしていたの?


 「秘密通路は、検索を弾くと言われているものね」

 「うーむ。申し訳ないが、一緒にダンジョンに来てもらってもいいかい?」


 僕は、わかったと頷いた。わざわざ助けに行くのは、謝罪してもらう為だ。放置して死なれても夢見が悪いしね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る