第5話 戻ってみれば
約二時間掛け、なんとか冒険者協会にたどり着いた。ふう。疲れた。やっとこれで休める。
「あの、二人は到着していますか?」
カウンターの受付嬢に聞くと、驚いた顔つきになった。聞き方が悪かったのか、冒険者協会の人が数人驚いたように僕に駆け寄ってきた。
「あなた一人? その荷物は?」
「あ、はい。一人です。これは、マイケルさんの荷物で……」
「あなた一人助かったって事? 一体ダンジョンで何が。あ、一人逃げて来たのかと責めているつもりはないの。一番レベルが低いあなたしか戻ってこないなんて」
「そうだ。怪我した者もいたが、死んだ者は今まで一人も。彼らが逃がしてくれたのかい? 大丈夫。怒らないから話して」
僕が唖然としていると、次々に言って来る。やっと休めると思ったのに、立ったまま質問攻めだ。
どうやら僕が、二人を置いて命からがら逃げて来たと思ったようだった。違っていないような違うような。二人はまだ戻って来ていないのか。脱出できなかったの? それとも僕ってそれほどの時間、気を失っていなかった?
「大丈夫。あなたに責任はないわ。あそこはソロで行く人もいたのだから」
僕が黙って居ると、怯えていると思ったらしくそう言われた。
「ち、違います! ゴブリンにはやられていません」
「ゴブリンには? では一体……ゴブリンのダンジョンに行ったのではなかったの?」
「あの! 最初から話ますから一旦落ち着いてください」
冒険者協会の係の人達がすまないと、やっと僕を椅子に座らせてくれた。ふう。やっと座れた。
「すまなかった。リーダーがいなく、
ダンジョンに入る時は申請が必要らしく、行く前にパーティー申請をしてから行った。リーダーも決めなくちゃいけなくて、マイケルさんがリーダーを務める事に。
それにしてもやっぱりというか、子供だと思われていたんだ。童顔の上に少し髪を伸ばしているせいか、子供に見られる事が多い。大抵一五歳だと言うと皆驚く。
「行ったのは申請した通り、ゴブリンのダンジョンです」
そう言って僕は、行く前からの出来事から話した。持って帰って来たソロ用テントを持たされた事からだ。その後、地下三階で秘密通路を見つけ、その先にあった宝箱を手にしたとたんゴーレムが現れ、襲われた事。僕を置いて、マイケルさんが逃げた事。殺されたと思ったら外に居た事。宝箱を持っていた事から夢ではないと思い戻って来たという事を。
「なんだと? リーダーでありながら君を閉じ込め、自分自身は逃げ出しただと?」
「本当によく無事で……」
受付嬢が涙ぐんでいる。
「それにしてもそんな奇跡あるのか?」
「もしかしたら、覚えたスキルのせいかなって思って……」
僕は、冒険者カードを見せた。覗き込んだ者達が眼を丸くする。
「あなた、ここに来た時レベル二だったわよね? レベル上がってないのにスキルを覚えたの? というか、戦闘はしていないの?」
受付嬢が驚くのも無理もない。レベルが上がる事によって、スキルや魔法を覚えると言われていて、一番多いのは、レベル二になった時に覚える。凄いスキルや魔法は、三、四レベルとかで覚える事もあるらしい。なので、レベルが変わらずスキルだけ覚えているのを見るのは初めてだろう。
「いえ本当は四レベルになっていたはずなんですけど、気が付いたらスキルを覚えていて、レベルが二に戻っていたんです。僕もどうしてかはわからないけど、覚えたスキルのせいかなっと」
「かもしれないな。どれ鑑定してやろう」
うん? 魔法使いの恰好をした茶色い髪に白髪が混じったおじいさんが僕らの話に入ってきた。
「あ、ユーリ様。お願いできますか?」
「あぁ。任せておけ」
「あの! 鑑定ってどんな……」
茶色い瞳が優しく細められ、頭を撫でられ僕はビクッとして、フードを抑えた。いきなり何をするんだ。ケモ耳があるってバレたかもしれない。いや鑑定なんてされたらバレるかもしれない?
「ステータス鑑定と言って、冒険者カードに記載されている内容より少し詳しく調べるだけだ。スキルの内容とかもわかるぞ。どうだ? やってみないか?」
「帰還というスキルは、聞いた事がないからね。どんなのか知った方がいいと思うよ」
「本来は、魔法やスキルを覚えたらお金を払って鑑定してもらうものだからタダでしてもらえるなんてラッキーだ。ぐらいの認識で大丈夫」
みんな、僕を安心させようと言ってくれた。
身体的特徴とかはわからないみたい? どちらにしても調べるものなら調べてもらった方がいいかな。
「えっと、宜しくお願いします」
「うむ。ちょっと触れるよ」
ユーリさんは、そう言うと僕の手に触れた。
「鑑定」
「………」
みんなが見守る中、ユーリさんはムムムと右眉を上げる。一体、何がわかったんだろう。
「こ、これは……」
「僕、へ、変ですか?」
やっぱりバレたの?
「いや。まずは、帰還の説明をしよう」
まずは? 他に何か話す事があるって事? それは、僕と二人でお願いします!
僕以外の皆は、興味津々でワクワクしてユーリさんの言葉を待っていた。
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