怪物の花嫁
第14話 偏食種・グルメ
麦畑の怪物が最初に確認されたのは、ドイツ西部のリッタースハウゼンという
町から続く廃線跡を
しかし仕事もそこそこに、彼らは友人と遊びはじめた。よくある光景なので、大人たちは気にも留めなかったと言う。
子どもの背ならすっぽり隠せそうなほど茂った黄金の
一人の少女が、麦畑の中に咲いた
少女は母親へ花冠を作ろうと、矢車菊を摘んだ。
慣れた手つきで次々と編み込み、それを持って母親の元へ駆け出そうとしたのだろう。後ろから頭を落された死体は、うつ伏せの状態で発見された。
ドイツには古くから『
重機が行き来する畑に子どもたちが入らないようにするための、よくある作り話だ。
――麦畑で遊ぶと、麦婆さんに食べられてしまうよ。
世界中で報告が上がる心霊現象や伝承、UMA的存在のほとんどは、デイドリーマーズに帰結する。
この怪異の正体こそ、麦畑の怪物だったのだ。
町外れにあるゴミ屋敷から、気狂いした実行犯の首つり死体が見つかった。
実体を持たない怪物は、自らの手で人間を殺すことができない。どうやらうつ病を患う女の夢見に現れ、麦畑で遊ぶ子どもの頭を
デイドリーマーズ対策の専門組織であるヴィジブル・コンダクターは、麦畑の怪物を子どもの魂を好む
魂には、味があるらしい。処女、胎児、苦悩で自死した物書き、恋愛に狂った男女など、特定の条件下の人間を意図的に殺害してその魂を食らう。
麦畑の怪物を討伐対象と認定した組織は、ドイツ支部からユリウス・オルブライトとカタリナを派遣した。
彼らの働きにより災厄の
リッタースハウゼンから南東へ500キロ離れた南ドイツの大都市、ミュンヘン。その地下深くには、ドイツ全土から集められた怪物たちの呻き声が響く。
偏食のせいで既存のデータを流用できず、しかも総じて個体能力が高い厄介な存在、
殺しきれなかった悪食たちを収容する地下施設では、データ収集のための研究が今も密かに行われている。
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