第31話 看病

皇城の客室


今、私は皇城の客室で一方的に看病されています。


「ポジャカ様、お口をお開けくださいな」


イリシメル姫が、かいがいしく世話をしてくれている。


「姫様、申し訳ありません。右手は無事でしたので

何とか自分で食べれると思います」

さすがに、少し恥ずかしいな。


「ポジャカ様、私どもの為にこんなケガをされたのに

看病をさせて頂けないのですか?」

いや、姫様そうは言うけどね。


「姫様、お恥ずかしい話ですが、このケガのほどんどは

自分の魔法の力加減を間違えたからだと思いますよ」


そう、私の体中にできたケガの原因は、

自分の背中に叩き込んだ水の魔法と

その時に山に激突した時に出来たものだった。


おい、私、深く反省しろ

なぜあの時、もう少し冷静な行動はとれなかった?

例えば、以前水で船の形を作って空中に浮かべた事があったよな?

あれを応用して、その中に自分を入れたら運べたんじゃないだろうか?


まあ・・・この身体で泳いだ事は無いけど、

呼吸さえ何とか出来れば安全に石の蓋付近まで行けた可能性がある。

とりあえず村に帰ったら実験しないと、いきなりの実演は無理だろうから。

何かシュノーケルの様な器具を作れば呼吸面もクリアできるか?



「ポジャカ様、何か考え事ですか?」

「いえ、次にこんな事になったら、どう対応したら良いか考えてまして」


あれ? 私は誰に答えているんだ?

声の方を見ると、姫が涙を溜めた目でこっちを見ている。


「ポジャカ様、あの時、あの場に居た全ての人間が、

あなたが命を落としたと思っていました。

お願いですから、今後あのような事はおやめください」

「大丈夫です、姫様、今度はうまくやりますから」

「ポジャカ様」


しかし、今回のケガのおかげで、皇国の光属性の魔法使いに

初めて治癒魔法をかけてもらう事ができた。

こればっかりは、こんな事でも無いと体験でき無いな。

魔法で治療してもらっても、身体が消耗しているらしく

2~3日休養が必要だそうだ。


「姫様、それでは3日後くらいで王国に出発できますか?」

「そうですわね、それまでにフメサリスも下描きを済ませるように

言っておきますわ」


下書き・・・なんだ、その言葉は?


「すみません、姫様。下描きってなんでしょうか?」

「あら? 言っていませんでしたか?

 フメサリスは先日の【黒き獣】の時のポジャカ様を

 絶対に絵に仕上げるのだと現在部屋に籠っておりますよ」

「なんですか、それ?」

「この分ですと、ポジャカ様の絵が何枚になるか予想もつきませんわね」

「もしかした、またモデルが必要ですか?」


「ポジャカ様、どうしてそんな、の事を

あらためて質問されるのですか?」





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