第29話 見つかった物
それは、まさに偶然の産物だった。
今回、バンダル王国から皇国の皇都を含む3つの都市を調査する為に
王都での調査に協力をした風属性の魔法使いが数名派遣されていた。
あくまでそれは、この病が神の怒りでは無い事を確認する為の調査だった。
ところが都市部での調査を
何気なく使った魔法であの粒子を見つけたのだ。
この事は、すぐに皇都に報告として届けられた。
その報告が届いた時、皇都では驚きの声が上がり。
その場所を聞いた時、皇都では絶望の声が上がった。
そう、その場所は皇国の歴史の中でも極め付きの曰くがある場所。
初代皇帝の頃に、幾多の国を脅かした【黒き獣】が封印された場所だった。
皇帝執務室
皇帝が呟く
「これは、歴史が証明されたと考えればいいのか?
それとも、現在の皇国に危機が迫っていると考えればいいのか?
どう考えればいい?」
内務大臣が返答する。
「皇帝陛下、歴史が証明されたのは確かですが、
皇国に危機が迫っているかの判断は、よく調べてからですな。
早いかどうかはともかく、見つけられたのは幸いでした」
「調べるといっても、どうやって調べるのか?
神の怒りを判断できるのは、王国の魔法いだけなのだぞ」
「その魔法を見つけた青の賢者様が我が国に来られていたのは、
幸運以外の何物でもないと考えますが? 」
「まずは、相談してみるしかないようだな」
「それが、現時点では最も良い方法でしょう」
【ポジャカ】
今、私は皇帝陛下の執務室に呼ばれている。
皇帝陛下の横には内務大臣が控えている。
そして、私の傍にはギルニアさんとセラメルさんと、
なぜか姫が来てくれている。
「皇帝陛下、私をお呼びと伺いましたが?」
「賢者殿、実はある物が見つかってな」
「見つかったですか?」
「内務大臣、この場合、これは見つかったで良いのか?
予想は出来ていたのだから、確認されたが正しいのかな?」
「そうですな、確認されたが正しいかと思われます」
「お父様、いったい何があったのですか?
そろそろポジャカ様と王国に向かおうと思ってましたのに」
姫様・・・
「王国から来てもらっていた風属性の魔法使いが、
予想外の場所であの粒子を見つけたのだ」
「皇帝陛下、予想外と言う事は、3つの都市以外の場所ですか?」
「ああ、ただ伝説では、そこに封じられている事は伝えられていたのでな、
そういう意味では、予想通りなのだが」
「お父様、いったいどこで見つかったのですか?」
「【黒塚】だよ、そこには初代皇帝が【黒き獣】を封じたと伝えられていたんだ」
内務大臣が後を続ける
「王国の魔法使いが、偶然神の怒りの粒子を見つけた場所は、初代皇帝陛下が
【黒き獣】を封じたとされる【黒塚】の
ですが、皇国には粒子を確認出来る人間は居ない、粒子が確認されただけで、それがどういう状況か判断も出来ない。それで賢者殿に確認方法を
教えて貰うのと、今回の件の協力をお願いしようと、お呼びさせて頂きました」
「魔法の習得については、こちらのセラメルさんが使えますので、
そちらの指導で風属性の方に覚えて頂く事は可能でしょう。
問題は、この粒子が実際にその黒塚から出ているのか?
そこから広がっている粒子が濃くなっていくのか?
王都の場合、元凶の居た沼の近くでの粒子濃度は一定範囲に100個前後でした。
濃度の基準も単純に王国の計測値を使っても良いのかは分かりませんが、
それでも早急に黒塚付近の調査は必要だと思います。
後は封じられたという【黒き獣】が現在どういう状態かですね。
今のままでは、生きているのか死んでいるのかさえわかりませんから
私は水属性ですので空気中の粒子を確認する事はできませんが、
私自身が見に行くことは可能なのでしょうか?」
「すまないが、王国から預かっている賢者殿を安全の確認出来ないその場所に行かせる事は出来ないな。すまないがセラメル殿、早急に風属性を集めるので魔法をご教授願いたい。魔法を覚えるのに、どの位の期間が必要だろうか?」
「ポジャカの作った教え方で、王国では10人が2日で覚えました。
おそらく2日で可能です」
「なんと、2日で可能なのか」
「はい、ただ今回はこの周辺に粒子はありませんので、粒子感知を経験するため
2日目は黒塚の近くで教える必要があります」
「わかった、では早速風属性の人間を集めよう」
そうして、皇都でも風属性か集められて、魔法の使い方と粒子の感知法が説明された。
そして2日目、実際の魔法講習の最中、王国では起きなかった問題が発生した。
「粒子の濃度が一定じゃ無い?」
黒塚から十分離れた位置で計測を行ったが、セラメルが計測しても粒子の数は50~80の範囲で変動していた。
「これは、ポジャカに報告して相談する必要があるな」
「ポジャカ、同じ位置でも計測値が50~80と変動しているようだ」
というセラメルさんの話をきいた。
「賢者殿、どういう事だと思う?」
「少なくとも、【黒き獣】は生きているという事でしょう。
王国との違いは黄色の神が貝であった事が原因かもしれませんね。
【黒き獣】が何の種類の獣かは分かりませんが、
力が脈動している可能性があります。
ただ、これだと濃度分布で元凶の位置を推定できません。
でも、短時間で、これだけ変化が大きいのなら、
おそらくそれほど遠い位置には居ませんね」
「そう、判断できるか?」
「おそらくですが。ただ、風属性による、これ以上の位置の特定は不可能です」
「手詰まりか」
「はい、今はまだ他の可能性を排除するのは早計です。
ですが黒塚が【黒き獣】が居る可能性が高い場所の1つなのは確かです」
「そうなると、黒塚の可能性が高いか」
「黒塚は、どんな形をしているのですか?」
「小さな築山に横穴が開けられていたらしい、その穴が石の板で塞がれている」
「皇帝陛下、やはり私が黒塚に行ってはいけませんか?
近くに行けばなにか感じ取れるかも知れないのですが? 」
「打つ手が他に無い以上、賢者殿にいってもらう他は無いのだが、
十分気を付けてくれよ」
「はい、気を付けて行ってきます。
無理を言ってすみません、ありがとうございます」
そうして私は黒き獣が封じられたという黒塚に向かう事になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます