第27話 皇国へ

「ちょっと、皇国に遊びに行ってきます」

 両親の許可をもらった。


「ちょっと、皇国に勉強に行ってきます」

 王様の許可ももらった。


「では、皇国に向けて出発!」

 え? ダメなの?


 今、王都で服を仕立ててもらってます。

 皇帝陛下に謁見するのに必要らしい?

 3日でなんとかしてくれるそうだ。


 またもやホーバックさんの所にお邪魔しています。


 「ポジャカ、王都で行きたいところは無いのか?」

 「そういえば、ホーバックさんが王都の図書館と言ってましたが

  私が閲覧しても大丈夫な図書館ってどこかにありますか?」

 「王都の図書館の一般棟は有料だが大丈夫だぞ、

  あとポジャカなら医学院も許可がありるんじゃないか」

 「でしたら、ぜひ王都の図書館に行ってみたいです」


 実に有意義な3日間でした。

 服も出来上がりました。

 これでやっと皇国に向けて出発できます。


 今、私は皇国の馬車に乗っています。

さすがに、9歳の子供1人を送るのは国としても不味いらしく

ギルニアさんと、セラメルさんがお目付け役として付いて来てくれました。


馬車の中に姫様とお付きの女性、セラメルさんと私が乗っています。

 このまま、東の山脈向こう側にあるサーキザル皇国に向かってます。

 黒い山々を抜けていくこの街道が白く見える事から

この街道は「白糸の道」と呼ばれているらしい。

 今日中に国境となる峠を越えて、皇国側の街コリトに到着する予定だ。


「そういえば私、国境を超えるのは初めてなんですが、

国境って双方の国の施設があるんですか?」


「いいえ、一つの建物に両国から警備の兵と職員を置いて

入出国の手続きをおかなっています」と姫様が教えてくれました。


「なるほど、友好国ならではですね。

そういえば両国の通貨の単位や価値は違うのですか?」


「金貨銀貨銅貨の価値については両国の協定で、

同じ大きさと金属配合を決めているよ、

ただ、違う国もあるから気をつけてな。」

と今度はセラメルさんが教えてくれました。


「ああ、そろそろ国境だな」


向こうに城壁に囲まれた小さな町の様な物が見える、

うちの村よりずっと大きいな

城壁の門から、馬車のまま中に入る。

そのまま中を進みフリーパスで抜けて行った。

まあ、当然だよな。


「ああ、ポジャカ。今、国境を越えたね」


そうして、馬車は皇国側の街コリトに到着した。

旅は順調に進んでいった・・・・


でも皇都エンプラサスを目前にして、私が見た物は正気を疑うような代物だった。


「あれ・・・ パレード用の屋根の無い馬車ですね?」

「はい、ポジャカ様。あちらに乗り換えて頂きます」


おそらく1分くらいは動けなくなっていたと思う。

セラメルさんの方を見ると・・・


「両国の友好の為だ、あきらめろ」と諭され。


姫様の方を見ると

「私も一緒ですから大丈夫です」と微笑まれた。


諦めて、きらびやかな馬車に移動する。


「ポジャカ様、国民ににこやかに手を振ってあげてくださいね」

と姫様に頼まれた。


城門を入った時の大歓声は、おそらく私が死ぬまで忘れられないだろう。


馬車はそのまま皇都中央の衛兵が守る皇城の正門から中に入って行く。

馬車が止まってのは、見上げるような複数の尖塔を持つ城のすぐそばだった。


「ポジャカ様、こちらです」姫様が手を引いて案内してくれる。

「はい、ありがとうございます」 


そうして、私は中央の尖塔の中にある謁見の間に案内された。

うん、なるほど。中央の尖塔の真下が玉座になっているのか。


大きな空間と光を使って見る人を圧倒させる演出装置だな・・冬場は寒そうだけど。


壇上にある玉座には姫様の父である、サクミリモス皇帝が座っている。

皇帝は姫様と同じ銀の髪の上に豪奢な王冠を乗せていた。

立派な顎髭をもち褐色の肌をした体格の良い壮年の男性だ。


そして、周囲の席には、貴族なのか役人なのかとにかく大勢の人がいて口々に

「本当に青い髪だ」とか「あれが青の賢者か? 子供じゃないか」

とか話をしている。


聞かされた礼儀の通りに、前に進んでいって跪こうとすると。

「青の賢者よ、跪く必要はないぞ」と上から声が聞こえた。


見上げると、皇帝がにこやかに笑っている。


「はじめまして皇帝陛下、私はバンダル王国ニミグラ村のポジャカと申します」

「ああ、私がこの国の皇帝、サクミリモスだよく来てくれた」

「はい、母国の外には初めて出ました。お呼びいただきありがとうございます」

「そうか、国の外には初めて出るのか、

賢者殿は随分小さく見えるが、いくつになられたのかな?」

「はい、今年で9歳になりました」

 周囲からどよめきが起きる。


「ところで、賢者どの最近この皇都を含む都市で

原因の分からぬ病が流行っている事を聞いておられるかな?」


皇帝陛下、ここでそんな事を聞くのですか?


「はい、姫様よりお聞きしました。3つの都市で大人の人が感染して、

関節の炎症で起きられなくなるのだそうですね」


「ああ、姫からの便りでは、賢者殿は、

これは神の怒りでは無いと断じたそうだが理由は何かな?」


「はい、王都の場合は水と空気の中に無数の目に見えない粒が漂っていました。

その粒の濃度は元凶であった神の近くほど濃くなっていて、

身体の小さな子供から順に発症していきました」


「なるほど、状況がここまで違うか。では賢者殿は何が原因だと思うかな?」


「皇帝陛下、私が患者も見ずに想像を口にするのは、あまりにも不誠実です。

聞き流していただけるならいいですが。

うかつな発言は治療に携わっている方々の邪魔になります」


「確かに不誠実だな。しかし、まあ、せっかくの機会だ賢者殿の想像を教えてくれぬか?」


「わかりました、あくまで想像です。それだけは、お間違えないようにお願いいたします」


「ああ、もちろんだ」


「大人の方のみが発症している状況から、

大人だけが摂取している物、もしくは大量に

口に入れている物等が原因かもしれません。

最近発症したことから考えると、近年都市部で大量に出回ったお酒、

他国で豊作や過剰生産で送られてきた、

この国では食べ慣れていない食物の大量摂取による

身体の拒否反応の可能性を考えます。

これに該当する物があればですが」


「最近、都市部で出回った酒か他国の食べ物か?」


「もちろん、未知の感染症の可能性も捨てるわけにはいきません。

しかし、周辺地域に広がらず都市部に限定、しかも患者が大人なら、

その可能性が最も高いかと考えます」


あれ? 周囲がしーんとなった。

いや、この国の医療関連だってこのくらい考えているよね。


「申し訳ありません、戯言を申しました、お忘れください」

「ああ、楽しかった礼を言うぞ、青の賢者よ」

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