第26話 皇国の奇病

さすがに、家に他国の姫様を招くわけにはいかないので、

村長の家で話を聞かせてもらう。


どうやら、皇国の都市部で現在奇病が発生しているらしい。

患者は大人だけで原因不明、

症状は関節が炎症を起こして起きられなくなるらしい。


その病は首都だけでなく、他の2つの都市でも発生している。


おりしも、昨年、隣国おうこくで神の怒りが原因で病が発生した、

これも、そういった事が原因では無いかと憶測が流れているらしい。


 姫様は15歳くらいかな、きれいな銀髪に青い民族衣装が似合っている

とりあえず、これだけはハッキリ言っておこう。


「あの・・・姫様、申し訳ないですが、

これ、かなりの確率で神様は関係無いですね」

「え?」


「まず、神の怒りについては王都の風属性の方で確認が可能ですので、

王国から、その方を都市部に派遣して確認してみてください。

それで、神の怒りかどうかはっきりしますから

これで変な憶測は払拭できます」

「はい」


「後は医師や専門家の調査するべきことなので、

 そちらにやってもらいましょう。

 無責任な言動や憶測は現場を混乱させるだけですから

 私の手助け出来る事は無いと思いますよ」


あれ?姫様に袖を掴まれた。

姫様が涙を溜めた目でこっちを見ている。

お付きの女官が人を殺せそうな目でこっちを見ている。


「いえ、ですから皇国で発生しているこの病気は大人限定で発症しています。

 神の怒りの影響は小さな子供から順に発症していきますのでまず違います。

しかも3つの都市で発生している、こんなに広範囲で起きたら都市だけでなく

周辺地域も影響を受けていなければおかしいです。

それが起きていないと言う事は都市という人口密集地に理由があるはずです。

3つの都市と他の地域との差はなんなのか?

感染経路は、発症した人間の共通点は何か?

少なくとも、他国の人間が触れて良い情報では無いでしょう? 」


「ポジャカ様、全ての責任は私が取りますので。

どうか我が国に来て頂けますでしょうか?

あなた様が来て頂けるだけで、国民が安心するのです」


「それは、どういう事でしょうか?

いろいろあって『青の賢者』等と大層な名前で呼んで頂いてますが

私自身はただの9歳になる村の少年ですよ」


「あなたのその髪は皇国で特別な意味を持つのですよ」


「・・・姫様、その話を教えて頂いてもよろしいですか?」


そして、姫様が語り出したのが・・・・・


 皇国の初代皇帝の国創くにつくりの物語、

 後に初代皇帝となった青年の傍には、

 ずっと一緒にいた青い髪の賢者がいた

 2人は幾多の困難を共に乗り越えた

 共に創りあげた皇国

 しかし、皇帝に刺客が放たれ、

 賢者が皇帝を庇って凶刃に倒れる。

 皇帝は誓う、皇国の未来で再び出会う事を・・・


 皇国第11第皇帝の悲恋の物語

 幼き姫は学ぶのを嫌がり街にでる

 そこで出会った青い髪の青年に

 書物の楽しさを教えられ

 学びの重要さを実感する

 2人の間に愛が芽生えるが

 青年は病に倒れる

 皇帝は誓う、皇国の未来で共に生きる事を・・・


ちょっと待ってください・・・・

「姫様、青い髪の人、どっちも話の途中で死んでいますよ。

 私、皇国に行ったら死ぬんじゃないですか? 」


「いえ、病気はともかく国情は安定していますから大丈夫ですよ。

 こういう訳で、ポジャカ様に来て頂けると王家も国民の安心するんです

 国に青い髪の人がいる時は良い事が起きるので」


「そういう事でしたら、私は両親の許可を貰いますので

 国王様の許可があれば大丈夫ですよ」


「ありがとうございます。

 すぐに、国王陛下に許可を頂きますわ

 もしよろしければポジャカさまが魔法を使っている様子を

 見させて頂いてよろしいですか」


「今夜8時に倉庫で、後は明日の朝、湖で使う予定ですが、

どちらを見ます?」


「明日の朝にお願いします」


「それでは、明日の朝、声をかけさせて頂きますね」



【イリシメル姫】


翌朝、ポジャカ様に誘って頂いて湖畔に赴いた。

湖面が朝日でキラキラして気持ちのいい風が吹いている

ポジャカ様の前に桶が持ってこられる。


ポジャカ様が詠唱を始めると、あの青い髪が輝いた。

今のは何? 何が起こったの?


次の桶が持ってこられて、ポジャカ様が詠唱を始める。

あのきれいな青い髪が光を発して輝いている

朝日に輝く湖面と、輝く髪、ポジャカ様の真剣な横顔

あまりの美しさにみとれてしまう。


はっ 絵師はどこ? なんでここに居ないの?

国王陛下にお願いすることが一つ増えましたわ



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