閑話 ドワード

【ドワード】


「しかし、ポジャカだったか、面白い小僧だったな」


王都へ向かう馬車の中で、ホーバックに話し掛ける。


「ああ、お前さんが来てくれて良かったよ。

まさか酒について相談されるとは思わなかったからな」


「そりゃそうだろう、あんな子供から酒造りについて相談されるとは思うまいさ」

「まったくだ」


「しかし、あそこまで作っても、まだまだ国への申請やら面倒な事も多いぞ」

「そういえば言ってなかったな、そちら先に済ませてあるぞ」


「なんだと、なんでそんな事になるんだ」

「そもそも、あの子が国を救った事の褒美みたいな物だからな」

「なんだ、それは?」

「おい・・・俺がお前さんに、さんざん説明したのは何だったんだ? 」


「いや、新しい酒を造ったしか聞こえてない」

「じゃあ、あの子のやった事も知らずに、あれだけ盛り上がってたのか」

「ああ、酒の話しかしてなかったからな」

「まったく、お前という奴は」


「しかし、そういえば・・・なんで酒造りなんだ?」

「材料が余ったって言ってただろうが」

「いや、あの子はどうしたって飲めないだろう。

 自分が関わらない物に対して、そんなに熱中は出来ないだろう? 」

「そういう、ことか」

「ああ、興味を持つ理由が分からん」


「おそらくだがな、自分が居なくても大丈夫な産業を村に作りたかったんだろう」

「それは、どういう事だ? 」

「あの村は貧しい村だ、なんとか新しい産業が出来たが、それはあの子が居ないと成立しない。だから、自分が居なくても成立する産業を作りたかったんじゃないかな」


「いったい、何をどうしたら、あんな子供がそんな考えに行きつくんだ? 」


「あの子は、そうなんだ。気が付いたら、周りの大人達がやらなきゃいけない事を

 代わりにやってくれている。それを周りの大人が後で気が付くんだ」


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