第23話 村への帰還

  やっと村に帰り着いた。


  村の入り口では、お父さんやお母さんや村の人たちが出迎えてくれている。


 「ただいま、お父さんお母さん、今帰りました」


  お母さんは涙を浮かべ、黙って私を抱きしめた。

  ん? ジルが真っ赤な顔でこっちを見ている。


  結局40日程もの間、村を離れる事になってしまった。


  「ジリウスさん、ほこらのお供え、ありがとうございました。」

  「おう、無事に帰ってなによりだ。ジルの奴がうるさくてこまったよ」

  ジル、見えてるから。ジリウスさん蹴るのやめようよ。


  「村長、お願いしていた、樹液の壺はどうですか?」

  「ああ、壺10個は溜まったよ、それ以上は破棄させてもらった」

  「ありがとうございます。あと森の樹に取り付ける桶を増やしたいのですが、

   あと22個増やせますか?」

  「桶を30個にするのか? 予備は10個だから、すぐに手配しよう」

  「お願いします」


  「ジル、ごめんね。ジャンガは大人しくしてたかな?」

  「・・・・・・うん、大丈夫」

  「ジル、顔が赤いけど、大丈夫?」

  「・・・うん、大丈夫」


  「ポジャカ、今日の分の樹液はどうするね?」

  「はい、水抜きをやってしまいます。それじゃ、ジル行くね」


  桶8個の樹液から水を抜いてから、

  村長に私の居ない間に作って貰っていた濃縮樹液の所へと連れて行ってもらう。


   小屋の中には10個の壺が並んでいた。

  「村長、一番初めに入れた壺はどれですか?」と聞くと一番奥の壺を指さした。

  「あれじゃな」

 私が、壺の蓋を開けると中の樹液から気泡が湧き出していた。


 大体10Lくらいかな、3日分96Lだから約10分の1に煮詰めたのか。

 20分の1に濃縮したものが、糖度60%を超えているのだとしたら、

 これは糖度30%といったところか?

 確か発酵で糖が分解されてアルコールになるんだよな。

 出来るとしたら、前世のラム酒に近い物かな?


 しかし、どうしよう。

 そういえば、村では大人でも、あまり酒を飲んでいる所を見たことが無かった。


 そもそもアルコール度って、どうやって測るんだ?

 味覚頼りで糖の減り方を調べるしか無いか。


「村長、おそらくお酒に変わっていると思いますが、

 村でお酒ってあまり見ませんね?」

「確かに、祭りの日に小樽のエールを皆で分けて少し飲むくらいじゃな」


 とりあえず、今日は森の樹に、あるだけの桶を設置してもらって


 明日は味の基準にする5分の1に濃縮した、糖度15%(予想)

 の樹液を作ってみよう。

 これと同じ甘さなら15%の糖がアルコールに変わったはず。


 厳密には、15%の糖が15%アルコールにはならないだろうな。

 できるお酒の強さはワイン並みか?


「あれ? 」


 ちょっと待って、まず・・・アルコール度15%のお酒が出来るよね。


 現代日本だと・・・この後、どうする?

 樽で熟成するか、蒸留してアルコール度を上げる?


 蒸留って・・・・・・


 水とアルコールの沸点の違いを利用して、濃いアルコールを作る方法だ。


 濃いアルコールなんて、水を抜けば簡単だよね。


 もしかして、私は


人間蒸留器ポジャカ? 」


 出来たお酒を3倍に濃縮すれば45%、ウィスキー並みの濃度になる。


 この国の酒文化に詳しくないけれど

 多分、ここで作ったら希少高級高額商品になってしまうんじゃないか?


それと、この情報が漏れたら。


国同士で水属性の取り合いになる可能性まで出てきた。


これは、王様と宰相閣下にも相談しないとまずい内容だ。


しかし、エールがしか飲んだ事の無い人にこれは毒だ

ホーバックさんが来たらに相談しよう。


でもお酒の第1号が出来たら、

これをお供えしても良いかもしれない。


あれ? お酒と蛇って相性良いんだっけ? 悪いんだっけ?


お供えしてもいいよね? 酔っぱらって湖で暴れたりしないよね?


 こうして樹液の活用法が広がっていった。

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