第19話 王都北方調査

応接室


「さて、王都から北北西方向にある、調査地予定地ですが。

王都から北北西の線を引き、その左右1kmの範囲で探してみました。

とりあえず5kmまでの距離で林、森、池、沼等22ヶ所あります。

近くから回って行きますのでよろしくお願いします」

 と挨拶する。


「探索メンバーですが、私と探査役のセラメルさんとギルニアさんが行きます」


「ニックとマーシィは連れて行かないの?」とマゼッタ教官


「元凶の近くは粒子の濃度が濃い可能性があります。

その場合ニックさんとマーシィさんは病気が

発症するかもしれませんので連れて行けません」


「それはポジャカ君も同じでは無いのかね?」


「おそらく、粒子は以前から放出されていて、

 体内で一定量を超えた為に発病したと考えられます。

 体重の軽い子供から発症したのがその理由です。

 ニックさんもマーシィも王都での生活で既に蓄積し始めているはずです。

 私は王都の外から来ましたので、蓄積量はまだ僅かでしょう」


「わかった、ニックとマーシィは参加させない」


「調査予定地でセラメルさんが空気を私が水を調べます。

元凶の形状も距離もわかりませんので慎重に行きます。 

では、近くの場所から調査を始めます」



 ギルニアさんの馬に乗せてもらって、同じく馬に乗ったセラメルさんと移動する。

 池や沼、林を12ヶ所捜索したが、

粒子の濃度は上昇したものの元凶らしきものは見つからなかった。

 戻って、地図に記入して明日の予定を確認する。


「明日の予定地は池や森、廃村跡と坑道ですか? 何の鉱石が取れてたんですか?」

「小さなブリア鉱石の鉱脈だったらしい、採れなくなって坑道も閉鎖されて、

鉱山師の村も無くなったと記録にある」


ブリア鉱石の廃鉱山? 鉱山といえば前世で何か教科書で読んだな。

・・・・・・イヤな予感がする。



 翌日、朝から調査を再開する。


 そして森の中に入ってすぐ。

「かなり濃度が高いですね」とセラメルさんから報告があった。

 廃村跡は何も残っていなかった、坑道へ向かう。


 小高い丘の中腹辺りに穴が開いていて、穴の入口に木の板が打ち付けてある。

 穴からは茶色い水がチョロチョロと流れ出ているのが見てとれた。


「ここも、濃度は高いが森の他の場所とは変わりませんね」

 とセラメルさんが教えてくれた。


 私は緊張を悟られないように、ゆっくりした声で

「すみません、2人共、馬を降りてもらって一緒にきてもらっていいですか?」


 2人は怪訝な顔をしながら近くの木に手綱を固定した。

 ギルニアさんに馬から降ろしてもらって、坑道の入り口まで行く。


 坑道から出た水は丘の向かって右の方へ流れている。


 私はゆっくりと、水が流れる方へ丘を降りていった。


 二人も後をついて来てくれている。


 水の中の粒子には辛いほどの怒りが込められていた。


 下った先に、変色した沼が見えた・・・・茶色と緑に変色した水が溜まっていた。


 私足を止めて、2人を制止した。


 小さな声で「すみません、このまま音を立てずに帰ります」と2人に声を掛けた。


 只ならぬ様子の私に気が付いたのか、2人は黙って付いて来てくれた。


 馬の所に戻った時、

 ギルニアさんが「何があったんだ」と私に問いかけた。


「すぐに国王様と話をさせてください。

人間が彼らの住む場所に毒を流し続けています」


二人に馬を急がせてもらって王都に帰って来た、直接王城まで送ってもらう。



 【セラメル】


坑道を見た時にポジャカの様子が変わった。

必死に隠しているが表情は隠せていない、あれは絶望の表情だ。

分からない、坑道周辺が特に粒子が濃いわけでは無いのだが。


ポジャカに静かについてくるように言われる。

静かに斜面を降りていく。

降りた先に、汚い沼が見えた。

そこでポジャカが止まった。


ポジャカの目には涙を浮かべている。

懸命に堪えているが今にも零れそうだ。

思わず抱きしめたい衝動にかられる。

唇をかみしめて我慢する。


そして、坑道に戻った時、ポジャカの目に覚悟が見えた。







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