第18話 セラメルの魔法教室

  王都 ホーバック邸


   応接室


「昨日までで、セラメルさんが空気中の粒子を感知できるようになりました」


「風魔法を使った、空気中の粒子検出の魔法が・・・2日で出来たのかい?」

サラバス学院長が心底呆れた声が聞こえる。


「それで、今後の予定ですが、水の粒子分布から推定すると

 粒子の濃度は王都の北に行くほど濃くなっています。

 確実を期した調査を行う為には、風属性の方を集めてもらって、

 セラメルさんに粒子の感知法を教えて頂きます」


ギルニアさんが手を上げる

「わかった。俺が声を掛ける、まずは騎士団から集めよう」



「方法が2つ考えられます。

 大勢で風魔法を使い、王都の北側の地域を升目を塗りつぶす様に

 粒子を計測することで元凶の位置を特定する方法。

 ただ、この方法の場合、元凶までの距離が遠ければ遠い程

 塗りつぶす数は莫大になり、日数が必要になります」


「もう一つ方法は?」


 「調べた水の分布からの、あくまで推測になりますが

  元凶は王都から北北西の方角に居る可能性が高いです。

  この方向にある、怪しい場所を探索する方法がありますが

  もし方向が間違っていれば取り換えしが付きません。」


「見落とす可能性もありそうだね」


「やはり、今回は、明日明後日でセラメルさんに出来るだけ多くの風属性の方に

魔法をモボ得てもらってから、北北西方向の調査を行っていただきます。

調査は基本見つけたら帰還してください。

元凶までの距離が分からない上にどんな形なのかもわかりません。

動物や鳥、岩や樹の可能性すらあります。

絶対に粒子が感知できる風属性の方と行動してください。

何か質問はありますか?」


「ポジャカの教え方をするのに、水玉を3つ浮かべるのと、

舟を浮かべるのは別の物で良いかな?」

「はい、浮かべるのは風魔法の方がやり易いと思います」


「元凶が見つかったら帰還で良いんだな」


「はい、現在対応策はありません。

元凶が何か? 何を怒っているのか? 

それが判明しないと対応自体が出来ないと考えます。

ですから、間違っても攻撃だけはしないでください」


「攻撃は絶対ダメか?」


「攻撃は効かない可能性もありますが、反撃で粒子の濃度を上げられたら、

王都にいる患者の子供達の命に関わります。たぶん大人にも影響が出ます。

自分の命は守ってください。見つけたら逃げてください」


「わかった、厳命しておく」



  騎士団練兵場


 ギルニアとセラメルの前には10人の風属性の魔法使いが並んでいた。


「これより2日間で風属性の魔法を使用する訓練をしてもらう。

 皆はこのセラメルの指示に従って、この技術を習得して欲しい」


 習得は順調に進んで行き、2日で全員が粒子を認識する事が出来た。



「皆、よく頑張ってくれた。

これから君達はこの粒子を出している元凶を調査してもらう。

王都周辺の各地点での粒子の濃度を測定して報告、元凶の位置を特定する。

もし元凶と遭遇した場合は絶対に攻撃せずに、逃げる事を厳命する。

元凶は動物なのか岩なのか樹なのか分からない、十分注意せよ」


当然のように騎士から質問が出る。

「元凶を攻撃してはダメな理由は何でしょうか? 

これは王国に対する敵対行為では無いのですか?」


「お前が元凶を攻撃したら、

その反撃で王都の子供達が最悪死ぬ、

大人も唯では済まない。

逃げきれない時は仕方が無いが、生きて逃げろ」


「元凶っていったい何なんですか?」


「神様みたいなものらしい、しかも怒り狂ったな」

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