第17話 風の検証
翌日、医学院中庭にて
私はセラメルさんと風魔法の検証を始めた。
「すみません、私は風魔法の知識が無いのですが。
風を目標に当てた時に対象の固さや柔らかさ、
壊れたか、弾かれたかというのは魔法を使った人は
分かるのでしょうか?」
「確かに当たった手ごたえのような物は感じるな」
「では、目を閉じた状態で風魔法を使って、
横向きに風を吹かせた時に校舎の壁に当たるのは感じますか?」
「やってみよう」
『神の
セラメルさんが詠唱、集中している。
「ああ、壁に当たって風が押し返されるのが感じられる」
『神の
私は詠唱して10cm程の水の立方体を3つ池から持ち上げて空中に浮かせた。
「セラメルさん、そのまま風を左右に動かしてみてください。
空中に何かあるのを感じますか?」
「ああ、何かあるな、何だろうこれは?」
「そのまま、風で形を確認してみてください」
「四角い箱の様な物だな、数は3つか」
「はい、目を開けて頂いて結構です」
セラメルさんが目を開けて空中に浮いている水の立方体を見上げる。
「そうか、目で見なくても風魔法で確認することができるのか。素晴らしいな」
「はい、本来水よりも風魔法に向いた使い方だと思います。
セラメルさん魔力は大丈夫ですか?」
「ああ、疲れたがまだ大丈夫だ」
「では、今度は1つだけ、複雑な形の物を浮かせますので
風魔法で探ってみてください」
「分かった、やってみる」
セラメルさんが目を閉じた
『神の
私は水を操って形を作る、何を作ろうかな?
ホーバックさんが持ってきた舟の形にしよう。
水に集中して形を作る、結構難しいな。
空中に全長1m位の水で出来た小舟が浮き上がった。
「どうぞ、浮かべました」
「大きいな、細長いのか? 大きなへこみ、これは舟かな」
「はい、目を開いてください」
目を開いて空中の舟を見る
「これは見事な舟だな、よく水で作ったものだ」
「大きく作り過ぎてしまいました。おかげで少々疲れました。
今日はこれ位にして明日続きをしましょう」
「ああ、素晴らしい講習だったよ」
さて、明日の講習の準備をするか。
ホーバックさんに明日の為に、赤と青の布と小さな壺、
それに紙で袋を作ったものを1つ用意しておいてもらう。
そして、翌日。
「さて、何をすればいい?」セラメルさんはやる気満々だ。
「では、昨日の様に目を閉じて魔法で周囲を探ってください」
「わかった」
セラメルさんが詠唱して集中している。
私は右手に赤い布を持って上に差し上げた。
「セラメルさん、私は今右手に何か持っています、魔法で感じ取れますか?」
「やってみよう」
セラメルさんが集中している。「布か?」
「はい、それではセラメルさん。この布の色や柄が分かるか試してみてください」
「色と柄か、やってみる」
セラメルさんは集中していたが「色と柄は無理のようだ」
布を降ろして、壺を取り出して手に持つ。
「わかりました。次は私は手に壺を持っています。わかりますか」
「ああ、小さな壺だな」
「この中は空です、この中に風を入れてみてください」
「よし、入れてみた」
私は壺を持って、池の近くまで行く。
そして壺を伏せて壺の口を水面に付けた。
「今、壺を伏せて池の水面に着けました。
これで壺の中にはセラメルさんの風が入ってる状態ですが、中の風は感じますか?」
セラメルさんが集中している、壺の中からゴボッと音がして空気が抜けた。
「セラメルさん、聞こえました? 壺の中から風が抜けました。
これで、そこに風があると分かればセラメルさんが動かせる可能性があります。
セラメルさん、目を開けて頂いて結構です」
セラメルさんは目を開けてフーッと息を吐いた。
「セラメルさんは、壺の中の空気を感じてそれを移動させる事が出来ました」
「そうだな」
「では、次はこの袋から空気を移動させてみてください」
私は紙袋に空気を入れて膨らませて、口を手でギュッと絞り風船の様にした。
「その袋からか?」セラメルさんが驚いている。
「はい、この袋の中に空気が詰まっています。
壺の中と一緒です、袋に集中して中の空気を移動させます。」
「・・・・難しいが、やってみよう」
セラメルさんが集中している。
私の手の中の袋がクシャッと縮んだ。
「成功です」
セラメルさん額に汗を浮かべながら私の手の中の潰れた袋を見ている。
「少し休憩を取りましょう」
「ああ、ありがとう」
セラメルさんは座り込んで休んでいる。
少し休んでから。
「そのままで聞いて下さい。
セラメルさんはこの2日間の講習で空気に対して
鋭敏な感覚を手に入れています」
セラメルさんは頷いた。
もう一度壺を取り出して。
「風を作り出して、この壺に入れてもらえますか」
『神の
風が吹いてそれに合わせて蓋をした。
「セラメルさん、この壺の中に集中してみてください。
この中に粒子の入っていない空気があります」
セラメルさんが額から汗が流れる。
「はい、やめてください」
息を吐いている。
私は壺の蓋を開けて壺を振って中の空気を入れ替える。
「次は、この壺の中に集中してください。前の時との違いを探してください」
セラメルさんは集中していたが、ある時「あっ」と声を上げた
そのまま集中を続けると
「分かりました。これですね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます