第20話 見つけた真実

 バンダル王国王城 会議室


「ポジャカ、何があった。人間が毒を流しているとは、どうゆう事か?」


「はい、廃棄されたブリア鉱石の鉱脈から廃水が下の沼に流れ込んでいます。

 姿は確認出来ませんでしたが、そこに今回の元凶がいるようです。

 王様、すぐに坑道を木の板では無く、埋めて毒を止める様、手配をお願いします」


「わかった、すぐに手配しよう」


「毒の流入はすぐに止まるとして。

 問題は廃水で汚れた水をキレイにする方法です。

 どなたかその様な研究をされている方をご存じ無いでしょうか?」


「わからんが、他の学者や王都図書館を当たってみるよ」

 とサラバス学院長が言ってくれた。


「王様、坑道を埋める時、右に降りて行ったところの沼には近づか無いようにと

 そちらに土砂を流さないようにお願いします」

「指示しよう」


「サラバス学院長、すみません。

王都から北北西にある森と池について何か伝承が残っていないかも

 調べて貰えますか?」

「わかった、そっちも調べてみるよ」


「王様、あの坑道の閉鎖されたのは、かなり昔の事ですね」

「調べてみるが、おそらくそうだろうな」

「もしかすると、私が感じていたのは怒りでは無く、

 苦しみの悲鳴だったのでは無いかと思いまして」

「人間に対する怒りでは無くか?」


「はい、これが王都に向けたものなら、時間がかかり過ぎています。

怒りを向けて放ったのでは無く、やっと悲鳴が届いたのかも知れません」


「ポジャカよ、どっちにしろ、人間の不始末だ。

 何か対策を考えなければいけないな」

 「はい王様」



 翌日、大勢の作業者が集められ坑道を埋める作業が開始された。


 今現在も目の前で対策会議が続いている。

 しかし、水の浄化方法については難航した。

 人力で水を掻き出し、泥を桶で外に出して雨が降るのを待つ案も出たが。

 元凶が鉱物なら大丈夫だが、水棲生物ならトドメを差しかねない。


 汚れた水から、汚れた部分を取り去るか。

 ん? 汚れた水から、水を取り除いたら、汚れた部分だけ残るのか?

 まあ、私が1日に壺8個分の水をキレイにした所で焼け石に水だよな。


 壺8個で大体32Lか。1tの水を浄化するのに1月かかるぞ

 ・・・・・・本当に1月か?


 「サラバス学院長すみません」

 「どうした、ポジャカ?」

 「いえ、人が魔力を使いきった場合、回復に必要な時間って

  研究されているんですか?」

 「ああ、およそ20時間で回復するという論文があったね」


  24時間じゃないんだ。つまり20時間毎に詠唱すれば、

  1か月に32L×36回 1,152Lか、まだ増やせないか?


  ほんとうに20時間で回復? 

  私は朝使ってもお昼ごろには魔力が回復しているように感じるんだけど?


  人の魔力の回復力を計る実証実験か、どうやってやる?


  まず、沼の傍で壺の水をどれだけ浄化できるか、魔力切れまでやってみる。

  おそらく8個だから。


 20時間で8個・・・・・壺1個分魔力回復に2時間30分か?

  

 5時間だと2個分回復しているはず? でも朝、壺を8個分の水抜きをして、

 5時間後のお昼の時点で、もっと回復している気がする。


 でもこれ、沼でテント張ってやらないと無理じゃないか?

 8歳の子供が1人で沼地テント生活、保護者の許可は誰に取ればいい?


 待てよ、ニックとマーシィは1日に何L水を浄化できるんだ? 

 その検証だけなら桶の水を汲んできて安全な所で出来るよな。


 水属性を100人集めて1人2Lでも200L いけるか?


「王都で水属性の人は100人くらい居ますか?」聞いてみる。

「おそらく、居るでしょう」と宰相が教えてくれた。


「検証の必要が有りますが。

 私は1日に桶8個(32L)の樹液から水を取り出していました。

 1回に桶8個分、沼の水量からすれば、浄化に5年から10年は必要でしょう」


「ニックとマーシィの粒子調査件数から推定して1日桶に半分は浄化できます。

 もし、水属性で水の抜き方を覚えた方が100人いれば1日50個分

 10日で桶500個分の水の浄化が可能です」


「この方法なら、『青の雫』が切れるまでに最低桶1500杯の水が

 浄化出来る計算になります。

 そして、この浄化量は、水属性の人間が多ければ多いほど増やせます。

 特に子供は沼に近づけませんので、

 安全な所で桶の水に対して浄化が出来る様にお願いします。

 他の属性の方には、水の汲み出し作業と他の池から水を持って来る作業を。

 沼の水は素手で触ると危ないので、

 直に水に触れない様に革袋を両手にはめて作業する必要があります」


 一通り、説明してから。


 「あと、お願いがあるのですか」

 「何かな?」

 「沼の傍に、天幕といくつかの桶を用意して下さい。

  私は、そこで浄化について実際に作業して検証しようと思います」

 「さすがにそれはダメだろう」王様が止めにはいる

 「ですが、私はまだ実際に沼の水を浄化していません。

  1日にいくつの桶の水が浄化出来るのか?

  魔力の回復量が何時間でどの程度回復するのか。

  それを検証する事で効率的な浄化が可能になります」


 王様が痛々しい目でこちらを見ながら


 「ポジャカ、本気か? 沼の傍は粒子が最も濃い所だ、

  天幕の中で病気が発症する可能性もあるのだぞ」


 「はい、汚染物質を減らす事で元凶が粒子の放出を止める可能性もありますから。

  上手くいけば桶250杯程度は浄化出来ると思います」


  国王はしばらく考え込んでいたが。


 「わかった、国王の名のもとに許可を与えよう」

 「ありがとうございます」




 【アグライト・バンダル国王】


 大勢の命が掛かっているとはいえ、

 一人の子供にとんでもない事をさせてしまうな。

 沼の傍に天幕を張って、魔力が続く限り、8歳の子供に浄化をさせ続けるか。


 分かっているのかポジャカ、

 元凶が持つのが怒りか苦しみかは判明しておらんのだぞ。

 眠っている時に沼で襲われたら、とても逃げられぬだろう。

 沼の傍は、最も粒子の濃い所だ、

 唯でさえ小さなお前は発病する可能性が高いのだぞ。

 それでも浄化を続けるのか?










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